第2話 余計
木製のドアを開け酒場に入りカウンター席に座る。
「マスター、少し訪ねたい事があってさ〜」と、言いながら地図を広げる。
「この隣の街アヴァロンってさ、ここから歩きだとどのくらい掛かるかな?」
マスター「そうですねぇ、歩きだとー丸1日位掛かりますかね」
「あ〜そんくらいか、ありがとうね。じゃあ注文しようかな、う〜んチキンに――」と、言いかけた時、木製のドアが勢い良く蹴り開けられた。
蹴り開けられたドアから男が入ってくる。見ると少しばかり筋肉質な体を持つ中年の男だ。「おい!酒を持ってこい!」と怒鳴り散らす。
周りの常連らしき客達は目を逸らし怯えて様子で、マスターも驚いた様子で目を丸くしている。
男はメアの座って居る席から1個離れたカウンター席にドスンと腰を降ろす。その様子をメアは横目で見ながら声をかけた。
「よぉ、どうしたんだい? そんなイラついてさ、サイフでもスられたかい?」と小馬鹿にした口調で囁く。
「何だ? ナメてんのか? だが、今は放って置いてくれ」メアは意外な返答に少し驚いたが、言葉を続ける。「へぇー、何か嫌な事があったって訳か。良ければ相談に乗ってやろうか?」
「いや、余計なお世話だ! いいから、放って置いてくれ!」
メアはふぅん……と小さく呟くと、「マスター、お代だ」と言い、ちゃっかり飲んでたアイスティー代の銀貨を弾き、酒場を出た。
外に出るとすっかり暗くなっていた。
「はぁ……、何だよあの男? 意外と冷静じゃんか。あ〜やって唆せばすぐ殴って来ると思ったのに。あっ!チキンも食えなかったし……宿屋で何か食えるかな〜……」とぶつくさ嘆いていると――
「おい!待ってくれ!」と呼び止める声が後ろから聞こえた。振り返るとさっきの男が肩で息をしながら立っていた。
「やっぱり話を聞いて欲しい」と言い出した。それに対して「そうかい、良いだろう。聞いてあげようじゃないか」と少し上からの態度を取るメア。
「あぁ、助かるよ。ここだとマズイから人通りの少ない所に移動しよう」と言うので路地裏に移動する事になった。