心の中
一緒に同じベッドで寝て迎えた朝は、とても目覚めのいい朝だった。
というか…オレはほとんど眠れなかったんだよね…。
色んな意味で。
でも、芽依はとてもスッキリ顔で
「おはよう!」
って言ってくれたんだ。
体調は、とてもいいようだ。
芽依が元気ならなによりだ。
「朝ごはんの前にお風呂入ってこない?」
なんていうくらい元気だ。
まぁ、せっかくだから入っておくけどね。
そしていい感じにお腹が空いてきて、朝食場へと仲良く向かった。
「朝ごはん何かなぁ?なんだろねぇ?」
と、とてもワクワクしている芽依。
「朝ご飯、ネットでみた感じだと豪華だよ」
の、オレの言葉に、
「えっ?予習してきたんだ⁉︎偉い‼︎」
って褒める芽依。
芽依…
こんなに元気な人が本当に余命宣告うけているとは、思えないな。
てかさ⁉︎
入院…
しなくて大丈夫なのかな?
普通さ、治療とかするんだよね?
芽依って…薬は飲んでるみたいだけど…入院治療とかって…してなくない⁉︎
手術とかしないのかな…
あえてしないのか⁉︎
それとも…手遅れだ…とか?
でも‼︎
もしかしたら、薬で良くなる病気なのかもしれないもんな。
うんうん、そうだよな。
きっと、芽依は自分に適した治療を選んでやっているに違いない。
あまり口だしするのもね。
って、言い聞かせて自分を落ち着かせていた。
…
あと一カ月…
正確には、何日とかはっきりわからないけど…
とにかく落ち着かない。
…
朝食は、夜ご飯同様やっぱり豪華だった。
たくさんの小鉢に美味しいお料理がならべられていて、またオレはどれからいただこうか?って迷っていた。
そんななか、芽依は
「うんまぁ〜♡」
と、次から次へとパクパクと小鉢に箸を伸ばした。
こんだけ食欲あれば、芽依は長生きできる‼︎
オレは勝手にそう念じて、切り干し大根の煮付けに箸を伸ばした。
どの料理も少しずつなのだけれど、ひとつひとつが美味しくて、また二人してあっという間に完食してしまった。
はぁ、最高でした‼︎
部屋へと戻る途中芽依が、
「食べ過ぎたから、またお風呂でもまいりますか!」
と、パンパンのお腹をさすりながらお風呂のほうをじっとみた。
芽依って、昔から長風呂だけど…
めっちゃお風呂大好きなんだなぁって改めて思った。
それとも…
…
実はこの温泉の名前には、ご長〜寿〜の湯とかかれたお風呂があるのだ。
もしかしたら芽依は、このお湯にたくさん浸かっておきたいと思っているのかもしれない。
…
実は芽依って…
芽依は、いつも明るくてそんなふうには見えないけど…
でも、実は内心焦っているのかもしれない。
「芽依…あんまり無理するなよ?」
オレの言葉に芽依は、
「無理なんかしてないよ?朝風呂とか贅沢すぎるし、最高じゃん?入りたい放題バンザイだねっ」
って、明るい笑顔をオレに向けてくれた。
ほんとは心で泣いているのかもしれないのに…
「芽依!」
オレは思わず芽依を抱きしめてしまった。
「え、ちょっと…さとる?」
「ごめん。芽依があんまり…あんまり可愛すぎて…」
なんてとっさに言い訳をしてしまった。
だって…
実は焦ってる?とか、ほんとは心で泣いてるんだろ?
なんて言えるわけがないんだ。
だから、オレはこうして芽依が心で泣いているかもしれないときは、抱きしめるいがい…方法が見つからないんだ…
続く。