温もり
居心地の悪い雰囲気を耐え忍び、星凪は家への道を着実に進んでいた。その時、星凪は声をかけられる。
「時園くん!」
星凪は振り返ると、声の主は礼亜であった。
「.....」
星凪は一瞬立ち止まったが、すぐに歩き出す。何も言わずに星凪の後ろを追いかける礼亜。
(女の子に追いかけられるのはこんな感じなのか。)
馬鹿らしくなった。星凪は歩みを止めることなく、後ろにいる礼亜に向かって言葉を発する。
「どうしたの?」
できるだけ優しい声で問いかける。
「.....」
礼亜は沈黙を守った。星凪は頭を掻きながら、礼亜に言う。
「できるだけ目立たないように、静かな場所で話そうか。」
礼亜は言葉を発することなく、ただ頷く。
公園に到着した星凪と礼亜は、ブランコに腰を下ろす。
「.....」
「.....」
しばらくの間、沈黙が続く。
「クラスでいろいろあったけど、大丈夫?」
礼亜が穏やかな口調で話しかける。
「別に心配されることじゃないのに。」
星凪は独り言のように呟く。その瞬間、視界がぼやける。
「時園くん、大丈夫?」
礼亜は心配そうに星凪を見つめる。
「人に心配されたことなんて一度もなかった、」
星凪は必死に言葉を紡ごうとするが、胸が苦しくて言葉が出てこない。そんな星凪を見て、礼亜は考える。
(時園くんはなぜこんなに苦しんでいるのだろう。)
「時園くん、ついてきて。」
礼亜は星凪を木陰へ誘う。星凪は拒むことができず、彼女の後を追った。二人が木陰に入ると、礼亜は星凪を優しく包み込み、口を開いた。
「時園くんが何に悩んでいるのか、なぜ泣いているのかは分からない。そんなに簡単に理解できることではないと思う。でも、今は誰も見ていないから、そんなに気を張る必要はないんだよ。」
心からの優しさを感じる声とほのかな温もりを感じ、自然と涙が流れた。涙が止まり、星凪が礼亜の抱擁から離れると、礼亜は代わりに星凪の手を優しく握った。
「くだらない話だけど、聞いてもらえますか。」
星凪はそう言い出した。礼亜は黙って頷き、それを肯定と受け取った星凪は、ゆっくりと話し始めた。