やっぱり青春エキストラ?
教室に戻ってしばらくすると、新しい担任からの連絡が始まった。星凪は慎重に教師を観察する。
(女性で、年齢は二十代半ば、教師としての経験はまだ浅いようだ。)
星凪の心に不快な記憶が蘇る。
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中学校の時の教師も若く、経験の少ない女性だった。彼女は、星凪がクラスでいじめを受けているのを見て見ぬふりをしていた。どう対処すればよいのか分からなかったのかもしれないが、放置されたことが星凪を一層苦しめた。耐えきれず自ら命を絶とうと考えたこともあった。
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「では、次に皆さんには軽く自己紹介をしていただきます。」
担任が生徒に向かって告げる。どうやら話は終わっていたようだ。
出席番号が若い順に自己紹介が始まるという暗黙のルールに従い、一番から順に進んでいく。クラスメイトが淡々と自己紹介を終えていく中、星凪は呆然としていた。
「時園くん?」
担任に名前を呼ばれる。どうやら自分の番が来たようだ。
「時園星凪です。よろしくお願いします。」
必要なことだけを簡潔に伝え、席に戻る。その後も自己紹介は順調に進んでいく。自己紹介が終わるとすぐに委員会の選出が始まった。
「学級委員から決めましょうか。やりたい人はいませんか?」
先生が生徒に質問を投げかけると、一人の女子生徒が手を挙げた。
「私がやります。」
確か南瀬さんだったと思う。美貌と知性を兼ね備えた女子生徒として知られている。先生はすぐに次の質問をする。
「男子でやりたい人はいますか?」
誰も手を挙げない。萎縮しているのだろうか。その中で一言が発せられ、星凪は思わず顔をしかめた。
「時園くんがいいと思います。」
女子生徒の声が響く。星凪はその声の主を見つめる。見覚えのある顔だった。
(霧崎空愛。どうしてあいつが、)
中学時代に星乃の周囲にいた一人だ。嫌がらせがひどかった。
「時園くん、どう思いますか?」
先生が尋ねる。目立たないようにするためには、選択肢は一つしかない。
「わかりました。やります。」
(最悪だ。どうして学級委員なんかにならなければならないんだ。)言葉にならない愚痴を心の中でつぶやきながら、南瀬さんと共に黒板の前に立つ。星乃はにやにやと笑っていた。
(嫌がらせ、か。)
その後、何事もなく委員会の決定は終わった。
休み時間、星凪が疲れた顔で机に突っ伏していると、突然声をかけられた。顔を上げると目の前には星乃がいた。
「久しぶり。」
ためらいもなく発せられたその言葉に、星凪は少し苛立ちを覚える。そして湧き上がる感情を抑えつつ応じる。
「そうだね。」
その瞬間、スポットライトが星凪と星乃に当たった。
「時園くんと星乃さんは知り合いなの?」
星凪が答える前に、星乃が口を開く。
「そうだね。中学校の時に付き合っていたから。」
その衝撃的な事実に、教室はざわめき始める。
「星乃さんは、こういうタイプの人とも付き合うんだね。」
「意外だね。」
「時園くん、やるじゃん。」
クラスメイトたちが言及する。
「.....」
星凪は何とか耐えようとする。
「こんな奴でも付き合えるなんて、笑。」
調子に乗った男子生徒が思わず呟く。
「お前に何がわかるんだよ。」
星凪は我慢できず、大声で叫んでしまった。その瞬間、教室は静まり返る。
(やってしまった。)
そう思った時には、すでに遅かった。