加護の力とその使命
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僕達はしばらく食事をとっていた。
『獣肉、分けて頂いて本当にありがとうございます。』
しっかり全て平らげた後に僕は改めて感謝をした。
『いいの。どうせどこかで殺されると思ってたから。それなら駆け出しのあなたのために経験値になってしまおうって思ったの。』
自分を殺すであろう相手を助けたってことか…。
しばらく沈黙の時間が続いた。
その空気を切り裂くように僕は質問した。
『そういえばあなたの名前を聞いてなかったですね。』
『名前…そうね。あなたには教えてもいいわ。』
天使にとっての名前はそんなに特別なものなんだろうか。
『私の名前はリクス。』
『リクス…素敵な名前だね。』
『ありがとう。』
リクスは名乗る時に少し覚悟を決めたような目をした。
僕はリクスに改めて確認をした。
『じゃあリクスさん僕に加護を授けて頂けませんか?』
『ええ、分かったわ。』
そういうとリクスは僕の目の前に立った。
そして僕の頭の上に手を乗せた。
僕も目を閉じリクスの加護に集中した。
『冒険者ユウ・スクエルに堕天使リクスの加護を。』
そうリクスが呟いた瞬間明らかに何か自分の中から湧き出すものを感じた。
『これが…加護…』
しばらくして加護の贈与が終わった。
リクスはどこか不安げだった。
『ありがとう。リクスさん。』
そう言ってもなお、不安な表情は拭いきれなかった。
『不安ですか?』
率直に聞くことにした。
『ええ。堕天使の加護だなんて前代未聞だもの。私のせいであなたを危険な目に合わせるかもしれない。』
予想通りの心配事だった。
だけど僕はもう心に決めていた。
『これからはあなたの使命を全うします。安心してください。』
『ええ。ありが…』
その時だった。
ユナルの森の奥深くとはいえ、あまりに凶暴なそして獰猛な鳴き声が僕達を襲った。
その時僕は完全に忘れていた。
『…ハイベアー…!』
僕はリクスの手をとって一目散に走り出した。
『どうしたの!?』
急に手を掴まれたリクスは事態が掴めておらず、混乱していた。
『ハイベアーです!早く逃げましょう!』
僕の一言でリクスはおおよそ緊急事態だと悟ったようだった。
だがもう遅かった。
グォォォォォオオオオオオオアアアアア!!!!
鼓膜を突き破る程の咆哮と共に僕達の行く手を阻んだのは例のハイベアーだったのだ。
体長はゆうに3メートルは超えるであろう巨体を軽々動かしながらこちらへ突進してきた。
『うわぁぁああ!!!』
咄嗟に避けた。
そうただ避けただけのつもりだった。
僕は目の前の光景が信じられなかった。
『……飛ん…でる…?』
目の前に広がった光景は木々が後ろから前へ高速で抜けていく景色だった。
ハイベアーの姿は一瞬にして目の前から消えた。
それと同時に声が聞こえた。
『危ない!!』
『へっ?』
その瞬間全身に衝撃が走った。
どうやら木に背中からぶつかったらしい。
相当な速度でぶつかったのだろう。
僕は目眩に襲われた。
不可思議な体験はまだ終わらなかった。
目眩が治ったのだ。
というよりも目眩程度で済んだの方が正しかった。
有り得なかった。
あの体感からして全速力の馬よりはスピードが出ていたはずだ。
その速度で気にたたきつけられたならば全身が骨折、あるいは死んでいてもおかしくない。
僕は確信した。
『これがリクスの加護の力…!』
正直想像を軽く超えていた。
だがデメリットも想像を超えていた。
『…!!足が動かない!』
どうやら先程の回避の影響で足の筋肉が切れたらしい。
どうやら身体能力は上がっても身体がそれについて行かなかったようだ。
僕は目の前にこちらに向かって走るリクスとその後ろから猛進してくるハイベアーを視界にとらえた。
このままではハイベアーに突撃される。
さすがの加護の力でもあれを喰らえば無事では済まされない気がした。
『どうする…どうする…!』
その時リクスが叫んだ。
『念じて!心の底から風を呼び起こして!』
『…風?』
全く意味が分からなかった。
でも今はどんな不可解なことも受け入れられた。
僕は想像した。
平野に吹き荒れる嵐のような。
突然現れるつむじ風のような。
そんな風を心の底から念じた。
いつしか風を肌で感じるようになった。
その風はだんだん強くなっていく。
次第に災害と呼べるほどまで。
リクスが叫んだ。
『放って!!!』
その瞬間僕の中からとてつもない強風がハイベアーに向かって放たれた。
台風とかそんなレベルじゃない。
ハイベアーを、周りの木々を、根元から吹き飛ばした。
僕はただただ唖然とした。
自分が自分じゃないような感覚に陥った。
いつの間にか僕の隣にいたリクスは言った。
『私は風の堕天使リクス。
あなたに風の加護を授けました。』
ようやく理解した。
僕は自分が思っていた以上に簡単に手を出してはいけなかったものに触れたのだと。
そしてリクスは続けた。
『私の使命をあなたに命じます。
冒険者ユウ・スクエル。君はこの世界の英雄となる。』
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