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『吸血狐っ娘』の嫁と世界を巡る冒険譚  作者: 四葉のアミア
一章
20/42

20話

 




 その日の夜、僕とミルアは周囲が少しだけ岩に囲まれた場所で野宿する事にした。開けた場所だと周囲の確認が出来て安全だが盗賊などに襲われる可能性が非常に高くなる。


 パチパチと木が燃える音を聞きながら僕とミルアはイラード商店で購入した食料である干し肉とパンを食べていた。


「…この干し肉美味しい、普通はもっと塩辛くて硬くて保存性のみを重視したものなのに」


「僕も初めてかな?こんなに美味しいと感じた干し肉は」


 噛めば噛むほど美味しい。…もう今まで食べてた干し肉は食えないことはないけど…出来るならあまり食いたくない気持ちになってしまった。


「野宿も楽しい。周囲の警戒もしなくちゃならないからその分大変だけど」


「大自然の中だから余計かもね?それに星空も見えてるし。…これが雨の日とかだったら最悪だよ?」


「…想像したくない」


「雨宿り出来る場所を探さないといけないからね〜。仮に見つけたとしても狭い、暗い、最悪臭いなんて事もありえるから」


「その場合は快適魔法でなんとかする」


「お願いするよ。魔法…快適魔法くらいは使いたいところなんだけどね」


「頑張ったら適性ない人でも覚えられるよ?知らない?」


「いや、知ってるよ?知ってて試してダメだったんだよ」


 2年前…だったかな?いやー、あの頃の思い出は悲しいものばかりだ。魔力は感じられるのに、詠唱して魔法名を告げても何も起こらない…それを数週間続けて、最終的には魔法が使えないって事が分かった。悲しい過去だったよ。


「魔法使えない?」


「らしいよ?珍しいんだって、そういう人は」


 この世界には魔法が使えない人は珍しいが居る。普通に暮らしてる人たちは魔法は使えないが、訓練すれば隠された才能が発揮されて…って事も珍しくない。ちなみに主婦、もしくは主夫の人は必ずと言っていいほど快適魔法を覚えてる。便利だからね〜。


「魔法使えないけど魔力は扱えるよ?不思議なもんだよ…あっ、でも魔法が使えないと分かった日から剣の鍛錬に集中ができたから結果的には良かったのかな」


「なら良かったんじゃないの?レオって強いし」


「強いのかな…?」


「…私からしたら強い。比較対象が今のところサブギルマスとあの時の冒険者しか居ないけど」


「あの人たちか…」


 ……比較対象少ないな。


「それに、6の魔物を一人で倒せたって言ってた」


「うん」


「それだけで凄い」


「うーん、もっと強くならないとね」


「なんでか聞いていい?」


「いいよ、いつ言おうか迷ってたところだから…」


 僕は薪を新たに()べてミルアの方を向く。

 ミルアの顔の半分が焚き火の光によって影が差している。


「まずは僕の過去から簡単に話そっか」


「…うん」


 うーん、生まれた頃から話そっか。


「僕が生まれたのは名前も無いような小さな村でね、父さんと母さん、村のみんなと仲良く過ごしてたんだけど…」


「だけど…」


「無くなったよ。…焼かれて、何もかも……」


「っ…」


「それは、ある日の夕方だった…突然、大きな揺れがきたんだ。立っていられなくなるほどのね。家の中にあるものが倒れ、落ち、割れた。

 父さんが何が起こったのか外に見に行ったと思ったら直ぐに戻ってきて僕と母さんを連れて逃げるぞ!って言った。

 僕も母さんも何も分からぬまま外に出て、そして全てを理解した。

 村の建物の半数が倒壊して火が付いて眩しいほどに燃え盛っていた。何故なのかは当時は分からなかったけど今は分かる。

 夕方で、ほとんどな人が夜ご飯を作るのに火を使ってたからね…最悪のタイミングだったよ。

 次に記憶があるのは…周りが火に囲まれた時になる」


「次に?」


「そう、記憶が無いんだよ。その頃の記憶はあやふやで纏まりがないんだよ」


「…あやふや」


「多分、精神を守るための自己防衛みたいなものだよ。衝撃的な何かを見て、脳がその頃の記憶を思い出さないようにした、そう思うんだ」


 思い出したくても思い出せない。でも、思い出したくない気持ちもある……


「話を戻して…火が建物に引火して周りが火の海に囲まれた時だ。剣を持ったあいつがまず母さんを斬って、次に父さんの体を手刀で貫いた。

 今でも忘れられないよ。母さんが斬られた直後に僕に向かって弱々しい声で『ごめんね』と呟いて倒れてきたこと。父さんがあいつに体を貫かれながら僕に向かって『逃げろ』と叫んだ事も…今でも記憶に嫌というほどこびりついてる。夢にまで出てくる程だ。…そして、父さんに逃げろと言われ僕は逃げたよ、逃げて逃げて…逃げた。あいつは追ってこなかった」


「…その、あいつって?」


「分かんない。どんな服をしてたのかどんな顔をしてたのかも思い出せない。分かるのは人型で剣を持っていて、恐ろしく怖かった事だ」


「レオはそいつに復讐するために?」


「復讐…って言ったら復讐だね。仇討ちかな?父さんに母さん、村のみんなのね…だから、強く強く、強く強く強くなって…アイツを必ず」


 強く、強く…


「レオっ、憎悪に囚われてる、戻ってきてっ!」


「…っ、囚われたか。うぅーん、自覚はなかったけどダメだな」


 感情に縛られていては、戦う時に隙を生み出してしまう。特にあいつと戦う時に…


 心を落ち着けろ。


「大丈夫?」


「ふぅぅ………うん、大丈夫」


 …話してる時につい力を込めながら手を握ったのか、手のひらから血が出てる。


「…治す」


 ミルアが回復魔法で僕の手のひらの傷を治してくれる。


「ありがと」


「うん。…それで、レオ、そのあと…逃げた後ってどうしたの?」


「逃げた後はね……。――あれ、おかしいな。思い出せない」


 逃げたあと…僕は…


「いったい、僕は………どうしたんだ?」


「レオ、落ち着いて」


「逃げて、そして…僕は、確かうぐっ……っなんだ、頭痛が…がっ、あぁぁぁぁぁ!!?」


 頭の中がキーンと鳴っている。ズキッとした痛みではなく、グチャグチャにされているような強烈な痛み。


「レオっ!レオっ!!」


 ミルアが何か言っている。何も聞き取れない…


 これは…耐えられない…




 僕は痛みから逃げるように意識を手放した。

次は9月3日です

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