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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
牧場主の彼女 編
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第5話

 「全く愚かと言うしかないな。カリーヌ」


 蝋燭の明りが一つと窓が一つだけある殺風景な部屋、そこに彼女は監禁されていた。

 目の前には牧場に来ていた黒い外套の男シャルル、一方で彼女は石畳の床にそのまま座らせ縛り上げられ、猿轡で口を塞がれた状態。

 当然返事をしてやれる訳がない。


 「…………ッ」


 震えながらも、睨みつけるカリーヌ。


 「強情張って土地を寄こさないからこうなる。こっちは別にただで貰おうなんざ思っちゃいなかったのにな。おまけにあの男のせいでこっちは怪我する羽目になった。面子を潰されたんだよ俺たちは。で、その落とし前はお前とあいつに払ってもらわなきゃこっちも納得いかないんでな」


 「……ッ!!ッ!!」


 彼は下卑た笑みを浮かべながら縛り上げられた状態で暴れるカリーヌに手を伸ばした。


 「シャルル!!狙われてる!!」


 「ああ?」


 伸ばしかけた手を戻し、男は部屋に入ってきた仲間に視線を向ける。


 「狙われてる?どういうことだ?」


 「この教会への道に罠が仕掛けられてたんだ。食料かき集めてきた奴が足をやられて怪我してる!」


 「ッチ。面倒な……こいつを移すぞ。地下に連れてけ」


 「あ、ああ分かった」


 そう言って運ぼうとした男。

 だが……


 「ギャアッ!!がッ!?ああッ!!」


 「おいどうした!?」


 突然窓から矢が飛び込んできて、窓の近くにいた男の手を貫く。

 今は夜、月明かりぐらいしか明りが無いにも関わらず弓を射ってきたことに、シャルルは驚いた。


 「痛ぇッ!!糞ったれが!!」


 「……おい、矢になんかついてるぞ」


 「ああ!?何だこりゃ!?」


 手に突き刺さった矢の羽付近、紙が結び付けられていた。

 シャルルは矢を抜きつつ、紙を取って読んでみる。


 『カリーヌに指一本触れるな。下手なことをすればいつぞやのように加減は出来ない』


 「あの男だな。助けに来たみたいだ」


 びりびりに紙を破き投げ捨てる。


 「近くにいるぞ。探し出して殺せ!」


 「ああ見てやがれ!!やってやる!!」


 




 「糞ッ!何処に居やがる!?」


 篝火を焚きながら根城にしている教会の周りを暴漢達はアダンを探し回っていた。

 だがアダンの姿はおろか動物の影さえ彼等は見つけることが出来なかった。


 「仕方ない行ってくる。相手はたかだか一人だ。あっという間に片付けてやるさ」


 「気を付けろよ」


 「ああ」


 痺れをきらし、仲間の一人が林に向かって長剣片手に警戒しながら歩いていく。

 月明かりが差し込む林の中は木の根や積もった葉っぱ、傾斜などがあり非常に歩きづらい。


 「ん?」


 そうして仲間から離れ暫く歩いているとあるものを見つけた。


 (……落とし穴か?)


 地面に何かを掘って戻したような跡がある。

 ちょうど片足が入りそうな大きさ。


 「見え見えの罠張りやがって」


 避けて歩こう、彼はそう思って穴を避けて歩いた。

 すると…


 「何だ!?」


 足が何か紐のような物に当たり、紐の先に束ねて吊るされていた木の札がぶつかり合って音を鳴らす、敵が来たことを知らせる仕掛けだ。


 「ギャッ!?」


 音が辺りに鳴り響いて二呼吸程、暗闇の中から飛んできた矢が彼の太ももに突き刺さり、短い悲鳴をあげた。


 「ああ糞!!誰か!足をやられた!助けてくれ!」


 彼は情けなく叫び、仲間を呼んだ。


 「助けてくれ!!誰か!」


 




 「どうする?」


 「わざと生かしてやがる。俺達を誘ってるんだ」


 教会にも仲間の助けを呼ぶ声は響いていた。

 だがその場にいる人間は全員助けに行くのを躊躇う。

 行けば撃たれる、それを分かっての判断だった。


 「これで守りながら行こう。何人かでまとまって行くんだ」 


 仲間の1人が数枚の杉の板を持ってきた。

 壁の補修用の資材だがそれを盾がわりに使おうという提案。


 「……分かった。行こう」


 全く気乗りしないがそれでも行く以外の選択肢しか彼等には無かった。

 ……林に入った瞬間、板からはみ出していた足を撃たれたが。

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