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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
牧場主の彼女 編
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第4話

 「やってくれたな……」


 カリーヌが向かった牧場まで早馬を飛ばすとそこは凄惨な状態になっていた。

 羊の多くは殺され蠅がそこかしこを飛び回り、柵の類は破壊されている。


 「アダン!!どうなってるの!?カリーヌは!?」


 「ディアーヌ!!来るなと言っただろうが!!」


 「ごめんなさい心配で……なに……これ」


 そんな中彼の言うことを無視してやってきたディアーヌ。

 変わり果てた牧場と、とあるものを見て彼女は顔を真っ青にして驚いた。


 「そんな、カリーヌ!カリーヌが殺される!!」


 「落ち着け!!」


 彼女が視線を送る先にあるのは、家の壁に血で……


 『カリーヌは頂いた。返してほしければ貴様だけで来い』


 このようなものが書かれていたのだ。


 「殺されたの……?」


 「羊の血だろう。そばに羊の死骸が転がってるからな。ディアーヌ、お前は今度こそ村で待ってろ」


 「どうするの?」


 馬に跨り、何処かに行こうとするアダンを不安そうな表情で見る彼女。

 彼女を出来る限り落ち着かせようと引きつった笑顔でこう言った。


 「助けに行く」


 




 「さてと……」


 牧場の付近にある林の近く、そこにアダンは居た。

 ディアーヌの話によるとそこにカリーヌを攫った暴漢共の拠点があるらしい。

 30人程の組織で、主に芥子や大麻、そのほかであれば略奪なども収入源だそうだ。


 (カリーヌが生きているなら、そこに連れていかれるはず)

 

 彼は馬を林の手前で止めると、背中に背負っていた袋を下ろし、中身を確認する。

 大振りの短剣、小さめの矢の束、古い弩に数枚の服、縄、紐の類……


 「……助けるだけならどうにかなりそうだな」


 空を見上げてみるが、まだまだ日は高い。


 「さて、行くか」


 林の中を歩きながら、周囲を確認する。

 

 (村人にまで知られているなら、奴らのいる森に関係ない人間が入る可能性は低いな)


 アダンはいろいろな場所に目を向ける。

 誰か人が通った痕跡は無いか、足跡は勿論、小枝がおられた跡などを見ていく。

 だが痕跡自体はあっさりと見つかった。


 「…………」


 足跡だとかそういったものを探そうとしていたのが馬鹿馬鹿しく思える。

 同じ道を歩きまわっているのだろう、土が踏み固められて道が出来ていた。


 「これを辿っていくか」






 「あれだな」


 暫く歩き続けていると、放棄された教会が見えてきた。

 そしてそこが彼らの拠点であることを裏付けるかのようにカリーヌを襲った時に居た暴漢が教会の周りを見張っている。

 なんとも罰当たりな話だ、本来神の居場所である教会が暴漢達に奪われている。


 「見張りが多いな」


 アダンは見張りに見つからないようにしつつ教会をぐるりと回り観察していく。

 そして一ヶ所に目星をつけ陣取ると背中の袋から短剣を取り出し、近くに生えている木から枝を刈り工作を始めた。  


読んで頂きありがとうございます。

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