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薬の番人、旅をする  作者: 田上 祐司
牧場主の彼女 編
3/78

第2話

 「この傷……何かで突かれたの?」


 アダンは道で出会った女性に連れられ、近くにあった彼女の家まで来ていた。

 彼女の家は牧場も兼ねていて外では羊が呑気に草を食べている。


 「槍で突かれたんだ。盗賊狩りに巻き込まれてな……おーいてて」


 針と糸を渡して背中の傷を縫ってもらいながら、アダンは少し話をしていた。

 こうして助けてくれた彼女の名前はカリーヌというらしい。

 たった一人で家の隣にある牧場を経営しているという。


 「あんたも盗賊?それとも男爵様の兵士?」


 カリーヌは傷を縫いながら背中に多数ある傷に目を奪われていた。

 どれも刺し傷や切り傷ばかり、急所にあたる部位にもそれはあり、彼女はアダンの事を怪しんでいるのである。


 「いや、俺はただの……うーん……旅人?みたいなもんだ」


 「やっぱり怪しいね」


 「そんな怪しいやつをよく助けてくれたな」


 「怪我してたから」


 優しく微笑む彼女を見て思わずアダンも頬が緩む。


 「ありがとう。お礼に何か手伝えることがあったら言ってくれ。力になる」


 「怪我が治ったらね」


 傷口をぺしぺし叩かれ痛みに悶絶する彼を見てけらけら笑うカリーヌ。


 「楽しそうにしてるじゃないかカリーヌ」


 そんな風に二人共笑っていると突然声をかけてきた人間がいた。

 真っ黒い外套に身を包んだ見た目だけは紳士に見える男である。


 「……カリーヌのお父さんかな?」


 「そんな訳ないでしょう?何しにきたのシャルル。人の家に勝手に上がり込んで」


 「前から言ってる件だが……うん?お前どこかで見たことがあるぞ?」


 シャルルと呼ばれた男はアダンを見ながらそう言った。


 「気のせいさ。俺はあんたなんか知らない」


 全く事情の呑み込めないアダンを差し置いて、男は話を続ける。


 「……まあいい話を戻そうか。カリーヌ、いつもの話だ。お前の牧場を渡せ。父親も母親も死んで一人じゃ辛いだろう?大人しく渡せ」


 「両親が大事にしていた牧場を簡単に渡すわけないでしょう!?あんたらはただ芥子を育てるための畑が欲しいだけじゃない!!」


 興奮したカリーヌが叫んだ。


 「誰も無償で寄こせとは言ってないんだがな。こうなったら無理矢理になる。お前だけにもう時間をかけられない、残念だが頭もお怒りだからな」


 シャルルがそう言うと、その言葉を待っていたとでも言わんばかりに仲間が大挙してきた。


 「事情は分からんがただの女性一人に随分と大仰だな」


 「関係ない奴は下がってろ。……いや待てお前もカリーヌの説得をしてくれないか?少しぐらいは分け前をやるぞ?」


 「残念だがおれはこの美しいお嬢さんにつく。それとお前達みたいなのは信用しないようにしているんだ」


 「……そうか」


 無表情で残念そうにそう呟くと、その言葉を皮切りに周りの仲間が襲い掛かってきた。


 「よっと」


 「ガァッ!?」


 出てきた暴漢達を躊躇なく椅子で殴りつける。

 数が明らかに違うが……


 「何だこいつ!?」


 「どけ!!邪魔すんな!!」


 「お前こそ!!」


 (阿保なのかなこいつら)


 カリーヌ達が居るのは家の中の一室。

 そんな場所に大勢でくればお互いの身体が邪魔になる。

 家には棚や机といったものもある。

 全く考えずに彼等はアダン目掛け殺到し…


 「げほッ」


 「せめてもう少し考えて来いよ」


 「うるせぇ糞がッ!!」


 アダンに悉く殴り倒され、利き腕を折られ、あるいは関節を外されて痛みに悶えていた。

 

 「悪いことは言わないから帰りな」


 「糞ッ!!覚えてろ!!」



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