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色々な差

 DNA同棲が正式に始まって1週間が経った。

 

「はぁ~」

 

 この1週間で色々なことが発覚した。

 その発覚した事実を考えると思わずため息が出る。

 

「陽翔、どうした?」

 

 机の上に顔をのせていた俺に湊が声をかけてきた。

 

「いや、この1週間色々あったなって。まぁ、色々っていっても2つしかないけど」

 

「……何かあったっけ?」

 

 今週思い返して思案していた湊が思い当たることがなかったのか不思議そうに尋ねてくる。

 

「何かあったというより、知ったというか、……湊はさ、家事どれくらい出来る?」

 

 そう、この1週間で自分のダメさを嫌と言うほど知ったね。

 湊たちと一緒に昼を食べた1週間前から、2人に家事全般教えてもらったけど、余りの無能っぷりに、家事は持ち回り制にしようって言ってたのに、いつのまにか俺の仕事は力仕事と皿洗いだけになっていた。

 つまり、2人に料理や掃除、その他諸々を任せっきりなのだ。

 

「家事? 一通りは出来るけど」

 

「まじかよ。俺今までやったことなかったから2人に教えてもらったんだけど、まじで全然ダメだわ」 

 

 2人から家事を教わって知ったことがある。

 自分の無能さと母と言う存在のありがたさだ。

 家事を知れば知るほど自分が親にどれほど頼っていたのかを理解してしまう。

 これまでは、洗濯物は洗濯かごに入れるだけ、食器洗いも授業以外ではしたことがなく、掃除機なんて使ったことはなく、当然風呂掃除なんかしたことなんてない。

 母がやってくれていたことがどれだけありがたいことだったのか今ならよく分かる。

 あれだな、失って気づく大切さってやつだな。

 

「俺に出来る家事は、ゴミ捨てや皿洗い、後はちょっとした力仕事しかないな」

 

 最初は男子だし仕方ないかと思ったのか2人ともしょうがないなって感じで教えてくれたけど、俺の家事に対する不甲斐なさを見るにつれてだんだん疲れた様子になっていってた。

 洗濯機の使い方も分からんっていったとき、夏恋は名状しがたい何かを見る目で見てたね。

 白雪もそこまではひどくなかったが、呆れ返っていたのを思い出す。

 

「おいおい、洗濯物とかどーしてるんだよ。……まさか、女子に任せてるのか?」

 

「そのまさかだよ。今週頑張って覚えたから、洗濯機はぎりぎり使えなくもないけど、今週女子に任せっきりだったからその流れで女子に任せてる。最初は洗濯物見られるの恥ずかしかったけど、洗濯物干すんだから結局一緒って思うようにしたわ」

 

 知り合ったばかりかつ同級生の女子に、洗濯物を見られるというある種、究極的な羞恥プレイを乗り越えたことで、鋼のメンタルを獲得したよ、まじで。

 今なら、どんなことでも出来そう。

 

「お、おう。そうか、それは大変だな。……で、もう1個は?」

 

 湊はちょっと引きながらも、可哀想な奴を見る目で見ていた。

 

「もう1個? ああ、それは、何ていうか、俺の劣等感のせいというか、悲しき事実を突き詰めてしまったというか」

 

「?」

 

 俺の具体性のない、的を射えない発言に湊は首をかしげる。

 

「このクラス、顔の偏差値高くね? いや、このクラスに限らず、学校全体として偏差値高めじゃん」

 

 そう、俺は気づいてしまった。この学校は美男美女が多いってことに。

 クラスメンバーを見たときから、クラスの顔面偏差値高い奴多くね? とは思っていたが、このクラスに美男美女がたまたま集まっているだけだと思っていた。

 しかし、この1週間、廊下ですれ違う人や、マンションで出会う人を見て確信した。

 この学校、DNA相性じゃなくて顔面偏差値で合格者決めてんじゃねーかとまで思ってしまった。

 まぁ、もしそうならもっと美男美女が多くなっていて、俺は落ちてたと思うがな。

 それに高いって言っても、学校全体で見れば普通よりちょっと高い程度だ。

 

「そう? まぁ、確かに男子は結構整ってる気がするな」

 

 そんな中でも、湊や朝日奈の容姿は群を抜いている。

 白雪や夏恋もこの2人には、及ばないにしても学校内でトップ10に入れてもおかしくないレベルだ。

 

「男子はって、女子だって可愛い子多いだろ。むしろ、クラスだけで見れば女子の方がアベレージが高いし」

 

「そう?」

 

 何故この十全たる事実で疑問を持つ。

 クラスを見渡せば一目瞭然だろ!

 

「そうだろ。まぁ、そんな中でも朝日奈は別格だな。レベルの高い女子たちの中でも綺麗すぎて浮いてる感じがするな。夏恋と白雪も凄いけど朝日奈には及ばないな」

 

「そうか? 朝日奈は普通だと思うけど。そんな持て囃す程か?」

 

「普通じゃないだろ。あの人を普通と言ってのけるとか目大丈夫か。湊の中での普通の基準高すぎだろ」

 

「そう? それでこの学校の顔の偏差値が高くて何で悲しい事実なんだ? 一緒にいるクラスメートたちが可愛かったり、かっこよかったりするのは別に良いじゃないか。偏差値低いより高い方がいいだろ」

 

「まぁ、それはそうかも知れないけど、そうじゃなくて。ほらなんて言うかさ、湊には縁のない話かも知れないけど、周りが凄いと相対的にただでさえしょぼい自分が更にしょぼく見えるというか何というか。あと、自分がクラスの中で容姿順に並ぶと後ろの方だと思うと悲しすぎて……」

 

 可もなく不可もないくらいの容姿の俺がクラスの、──いやおそらく全校生徒内の底辺グループと言っても過言ではないくらいだ。

 学校単位で見れば、底辺グループに所属しているだけで底辺ではないはずだ、多分。

 そうだと信じたい。

 

「そんなことないと思うけどな」

 

 湊が気を遣ってか否定してくれるがそんなことあることは自分がよく分かってる。

 湊には、クラスで容姿順なら後ろの方とは言ったけど、ぶっちゃけ一番後ろな気がする。

 

「俺自身もそう思ってるけど、実際は違うだろうな。人って自分の顔の評価高くなりがちだし。湊だって鏡で見た自分と写真の自分比べた時、写真写り悪いなって思うだろ。それと一緒だよ」

 

「?」

 

「いや、なんで不思議そうな顔してんだよ。えっ!? 鏡で自分を見たとき『結構イケてる』とか『まあまあだな』と思ったのに、写真見ると『俺ってこんな感じだっけ』って思ったことないの?」

 

 この言い方だと、俺が鏡見て『結構イケてる』、『まあまあだな』って思ってるようにしか聞こえないな。

 自己肯定感が高い奴みたいで恥ずいな。

 まあ思ったことがないわけじゃないけど。

 

「……ないな」

 

「まじかよ、そんなことある? これがイケメンと陰キャとの差なのか」

 

「てか、写真の自分が悪く見えるってただ写真写(しゃしんうつ)りが悪いだけじゃないのか」

 

「その理論でいけばおそらく人類の半分は写真写り悪いな。前に気になってネットで軽く調べたことがあるんだけど、人は鏡を見るとき無意識でのうちに顎を引き、顔の筋肉を引き締めキメ顔になることが多いらしい」

 

「は? それただのナルシストじゃね?」

 

 そんなわけないだろっと言いたそうな顔をした湊。

 

「言いたいことは分かる、俺も駅のトイレなどで、鏡の前でキメ顔してるやつがいたら『うわぁ、ナルシストがいるんだけど』って思うけどさぁ、まぁそういうもんらしい。人間の脳は自分のみたい理想通りのものを見ようとするらしく、勝手に脳内補正がかかって、鏡の自分がかっこよく見えるんだって。それで、普段自分を見るのは鏡だけど鏡の自分って左右反転してるから、そのせいで写真に写る左右反転していない自分を見ると違和感を感じるらしい。他にもなんか書いてた気がするけど、色んな要因が相まって写真の自分が微妙に感じるらしい。で、他人から見た自分ってのは左右反転している鏡の自分よりしてない写真の自分の方が近いらしいから、自然と自己評価が高くなってると思うんだよな」

 

 このことを踏まえると、このクラスで容姿順に並んだとき、後ろの方という自己評価は高い可能性があるというか、おそらく高い。

 つまりだ、客観的に見れば、俺なんかはクラスで一番下いや、学校で一番下だって言われてもその通りだと思う。

 

「……これ以上は考えたくないな」

 

「ん? 何か言った」

 

 無意識のうちに声に出していたらしいが、幸い湊には聞こえなかったみたいだ。

 

「いや、何でも。俺の周りはレベル高いなって思っただけだ」

 

 言ってから思ったが、俺の周りはそんな学校の中でも凄いメンバーだ。

 そう、この1週間でよく話した奴は、湊と朝日奈、そしてDNA同棲のペア──夏恋と白雪で、前から順に学校一のイケメンと美少女、そして学校トップ10に入りそうな美少女JK2人。

 そこに混ざってる(おそらく)カースト底辺の俺。

 周りから見たら俺めっちゃ浮いてるんじゃね。 

 ……気にしないようにしよう。

 

「……それにしても何でこの学校はレベル高いんだろうな。イケメン共は出会いには飢えてないだろ」

 

 待てよ、飢えてないからこそ立地が良く、一番評価が高いこの学校にイケメン・美少女が集まってるんじゃね⁉︎

 俺みたいな非モテは女子と同棲がしたくて、少しでも倍率が低いとこ、受かりやすいとこに応募しようとするけど、イケメン共は異性に飢えてないから倍率が高くても立地・実績が良いここを宝くじ感覚で応募する。

 その結果、イケメン・美少女たちがこの学校に集まりやすくなっているのでは⁉︎

 あくまで説だ。正しいという証拠はない。

 ただ、何故かあってる気がする。

 もしこれが正しければ非モテとイケメンとの意識の差を見せられた気分だ。

 ……一体何を考えているんだろう俺は。

 こんな正直どうでも良いことこんなに真剣に考える必要あったか?

 なんか虚しくなってきた。

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