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運命的な縁とまだ知らぬ顔

「お願いします!」

 

 寮に帰ってきた俺は、土下座していた。

 何のためって? そんなのわかりきっているだろ。

 毎日ご飯を作って貰うためだ。

 料理が出来ない俺はこの2人に作って貰わないとこのままでは餓死してしまう。

 例えどんな代償があろうとも、この2人から料理を作って貰う権利を貰わなければ。

 それに俺のこの2人は出会ったばかりだし、これくらい仰々しい方が良いと思う。

 

「えーっと、つまり陽翔君は料理が出来ないから私たちに任せたいってこと?」

 

 そんな俺の考えや熱意とは反して、白雪は困惑しており、夏恋は土下座している俺のことを見て、ドン引きとまではいかないが少し引いている気がする。

 そりゃそうだ、よくよく考えてみればいきなり帰ってきたら一緒に暮らすことになった知り合ったばかりの異性が土下座してるんだ。

 そんな状況になったら、困惑するか引くかのどっちかだろう。

 しかし、俺は引くに引けない状況なので、土下座をしたまま、お願いし続ける。

 

「その通りです、他のことなら俺がやるんでお願いします!!」

 

「ま、まぁ、私は普通に料理できるし、構わないけど月奈(るな)ちゃんはどう?」

 

「私も構わないです」

 

 ほんと良かった。

 これで無理と言われてたらどうなっていたことか。

 

「じゃあ、俺は何をすれば良い? 掃除全般をすれば良いか?」

 

「そうね……、皿洗いとゴミ捨てをしてくれる?」

 

「それだけで良いのか?」

 

「さすがに他の全部任せるのは申し訳ないし、それに洗濯とかを任せるのはちょっとね」

 

 女子である夏恋は男子の俺とは違って他人に、特に異性である俺に洗濯物とかを任せるのは嫌なんだろう。

 

「じゃあ、他の家事はどうする?」

 

「他は交代制で良いんじゃない? 月奈(るな)ちゃんはどう思う?」

 

「私もそれでいいと思います。でも、買い物するときは私1人では持ちきれないので、みんな(・・・)一緒でお願いしたいです」

 

 あ、そっか。 俺たちは学生で、免許持ってる人とかいないから基本歩きか自転車で買い物だもんな。

 それなのに、女子1人で食料品3人分を運ぶなんてどう考えても無理だよな。

 

「OK、そうしよう。それに最初のうちはみんなの好き嫌いが分からないから一緒に行った方が都合がいいしな」

 

「じゃあ、他のこととかは後で決めよっか。もうすぐ昼だし買い物に行きましょ」

 

 夏恋にそう言われて、スマホで時間を確認すると11時37分だった。

 外食するにしろ、どこかで弁当類を買って家で食べるにしろ、早めに行動を開始しなければここら一帯は食料品に備蓄がない新入生でごった返すからな。

 まぁ、もう早いとは言えない時間かも知れないが。

 

「昼ご飯どうする?」

 

「ファミレスで食べて、人が少なくなったであろう時間なってから、買い物でどう?」

 

「それでいいんじゃないかな。白雪はどう?」

 

 正直、外食でも、中食でも、内食でも良いと思っていたので安易に同意する。

 

「私もそれでいいと思います」

 

 帰ってきてすぐに家事の分担について話し合った俺たちは、まだ制服姿のままだったので、すぐに外出用の服に着替えて寮を出た。

 

 

 #####

 

 

 寮の近くにあるファミレスに入った俺たちは、湊、朝日奈さんたちと同じ席に座っていた。

 ファミレスの近くで、たまたま湊たちと合ったのだが、如月さんは夏恋、白雪と知り合いだったらしく、俺と湊が仲が良いことも相まってそのまま一緒に昼を食べることになった。

 まだ12時になっていなかったこともあって、俺たちは待ち時間なしで席に着くことが出来た。

 予想通り、ファミレスの席は学生ばかり。

 席は、片方に湊、朝日奈さん。もう一方に、白雪、夏恋、そして俺の順に座っていた。

 

「東雲君も大変よね、月奈と夏恋の2人とペアなんて」

 

 朝日奈さんはおそらく2人のことをよく知っているのだろう。

 それこそ最近出会ったばかりの俺より。

 だからこそ、こんな言葉が出たんだろう。

 

「ちょっと、楓? それどういう意味?」

 

 夏恋は冬野さんに笑顔で無言の圧を送っていた。

 

「朝日奈さんは2人と仲が良いんだね」

 

 正直、『2人とペア大変だね』って言われても、YESとは答えにくいし、かといってNOと言いたくないのも事実だ。

 

「そうね。2人は私が持つ数少ない友人だからね。あと、夏恋たちを呼び捨てなんだから、私のことも呼び捨てでいいよ。東雲君とはこれからも何かと一緒にいる機会がありそうだし」 

 

 これからも一緒にいる機会がありそうか、確かに。

 俺と湊は親友で、朝日奈と夏恋、白雪も親友。

 こんな関係なら一緒に遊びに行く機会も結構ありそうだな。

 そんなことを考えているとふと疑問が湧き上がる。

 

「あれ、でも確か夏恋と白雪が知り合ったのってこの学校に来てからだよな。2人とも如月と仲が良いなら会う機会とかなかったのか?」

 

「月奈とは家が近所で小学校の頃はよく一緒にいたんだけど、月奈、中学は寮のある女子中にいったから中学の頃は会える機会が減ったの。逆に夏恋とは中学で出会ったから2人で会う機会ってなかったんだよね」

 

 へー、白雪って寮のある女子中出身なんだ、珍しいな寮がある中学って。

 でも、寮生活してたならめっちゃ頼りになりそうだな。

 家事とかは白雪に教えても貰おうかな。

 

「逆に東雲君と天宮君はいつからの付き合いなの?」

 

「俺たちは、幼稚園の頃からずっと一緒だよな、陽翔。中学の頃は部活も一緒だったし」

 

「そうなんだ、陽翔君と天宮君は何部に入ってたの?」

 

 つい先程まで、笑顔で朝日奈に無言の圧をおくっていた夏恋がいつも通りの雰囲気に戻っていた。

 

「サッカー部だよ。湊と小学校の頃からクラブチームで一緒にサッカーしてたんだ」ろうん。

 

「へぇ、じゃあ2人はサッカー部に入るの?」

 

「俺は考え中。いろんな部活あるから色へ々見てから決めようかと思って。でも、陽翔がサッカー部入るなら入るけどな。陽翔は?」

 

「俺は部活には入らないかな。元々この学校には入れたら部活入る気なかったしな」

 

「────────」

 

「────────」

 

 食事の間、何気ない会話をし合う。

 そんなよくある高校生の光景に俺たちはなっていた。

 

 

 #####

 

 

 ファミレスで食事を終え、その後そのメンバーで買い物を済ませた俺たちは寮まで帰ってきていた。

 色々必要なものを買った為、凄い量の荷物になっていたが買い物をした物を配送してくれるサービスがあったため、荷物は行きと何ら変わりなかった。

 そして、衝撃の真実が発覚した。

 なんと、湊たちとはお隣さんだった。

 

「まさか陽翔と隣同士だったとは」

 

「確かに凄い偶然だな」

 

「じゃあ陽翔また明日」

 

 そう言って陽翔は自分たちの住戸の中へ入っていく。

 夏恋と白雪も中に入っていったので、俺も帰ろうとしたが朝日奈に声をかけられた。

 

「東雲君」

 

「ん? 何?」

 

「2人のことで困ったことがあったら相談して。力になれると思うから」

 

「じゃあ困ったときは相談させて貰うわ。朝日奈も湊のことで聞きたいことがあったら言ってくれ。あいつとはずっと一緒にいるからな。誰よりもあいつのことには詳しいと思うぞ」

 

「じゃあ私も天宮君のことで困ったときは相談させて貰おうかな。……でもほんと東雲君大変そうだね、月奈はともかく夏恋とペアなんて。同棲云々を抜きにしても一緒に生活していくだけでも憂鬱になりそう」

 

「そうか? DNA同棲のパートナーとして見ないで、共同生活する仲間として見るなら夏恋は最高に近いと思うが」

 

 確かにDNA同棲相手として見ると百合JKでうまくいく可能性は零だが、ただの共同生活のメンバーはしてなら、性格も良く明るく、フレンドリーな彼女は最高は言っても過言ではないだろう。

 

「えっ!? 本気で言ってる?」

 

 俺が言ったことを困惑する朝日奈。

 俺そんなにおかしいこと言っただろうか。

 

「本気だけど、だって夏恋はDNA同棲の相手としては問題あるけど、友人としては普通に良い奴だろ。こう言っちゃ悪いけど、共同生活する相手としては夏恋より白雪の方が正直しんどいんだけど」

 

「なんで?」

 

「なんでってそりゃ異性が苦手な白雪と普通に接することができる夏恋とじゃ、圧倒的に白雪と一緒に暮らす方がきついだろ」

 

「苦手? 確かに月奈は昔から男子のことを恋愛対象に見れなかったけど、苦手ってほどじゃなかったと思うけど」

 

「いやかなり苦手だろ。自分で気づかないレベルで反射的な行動が出るくらいなんだから」

 

 俺がそう言うと朝日奈は、『もしかしてあの件でそうなったのかな』、『でも、それなら苦手ってのはおかしいような』っとぶつぶつと言いながら自分だけの世界に行ってしまった。

 インスタントラーメンが出来上がりそうな時間がたって、ようやく自分の世界から出てきた。

 

「月奈のことは一旦おいとこう。私も異性が苦手なんて知らなかったし。小学生の頃は人並み程度には男子とも話すことも接することも出来てたんだけどな。……でも、そのことを考慮しても夏恋の方が一緒に暮らして行くにはしんどいと思うけど」

 

「むしろ夏恋の何がそう思わせるんだ。仮にDNA同棲の相手としてみても、百合ってところを省けば完璧に近い最高の相手と言えるレベルだと思うが」

 

「えっ!? もしかして夏恋、2人の前では猫被ってる? どうしてそんなことしてるんだろ?」

 

 またも1人だけの世界に入って、考え込んでしまう朝日奈。

 

「なんか分からないことだらけだなぁ。……ごめん、東雲君。相談に乗るって言った手前、私の口から2人のことを言えることは少なそう。でもこれだけは言っておくよ。もし君がこれからも2人と一緒に暮らしたいと思うなら2人のことを知ろうとした方が良いよ。特に夏恋は月奈以上の爆弾を抱えているから」

 

 そう言うと朝日奈は俺に様々な疑問を残して自分の住む住戸のドアを開け、俺の前から姿を消した。

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