絵になる美少女
「陽翔、昨日はどうだった?」
朝、教室に入り、席に座ると湊が話しかけてくる。
「どうだったって何が? ああ、昨日放課後残らされたやつのことか。それなら……」
昨日あったことを話そうとすると、湊に話を遮られる。
「おいおい、そっちじゃねぇよ。ペアの女子どうだったって話に決まってるだろ」
どうだったって言われてもな。
見た目だけで言うなら、夏恋と白雪の2人は学年トップクラスと言っても過言ではない。
いや、性格だって普通に良いし、どこからどう見ても最高級の優良物件だ。
そう、見た目と性格だけで判断するなら。
だが、俺は彼女らがこのDNA同棲という場でのみ、最大限に発揮される特性が存在することを忘れてはいけない。
そう、夏恋には恋愛対象が女子のみであり、白雪は無意識下に影響が出るほど男子が苦手だという特性が。
俺は昨日あったことを包み隠さず湊に伝える。
「つ、つまり陽翔は、DNA同棲を3人で受けることになったと。その上、1人は男を恋愛対象に見れず、もう1人は男が苦手と。さ、さすが陽翔、フラグ回収うますぎ」
湊はこちらの状況を完全に面白がっていた。
その証拠に笑いをこらえるのに必死だ。
はぁ、この状況、当事者以外からは面白おかしく見えるんだろうな。
「でも、良かったじゃん。百合園と白雪の2人とペアとか。疑似ハーレムを楽しめるじゃないか。合法的にハーレム楽しめるとか、前世でどんだけ徳を積んだんだよって他の男子に言われそうだな」
湊が面白がりながら『おめでとう』と言ってくる。
まったく何もおめでたくねぇよ。 霜月先生と同じようなこと言いやがって。
てか、湊の奴、おめでたくないの分かっていってるな。
2人とは深い関係になれる可能性は皆無なのに、美少女2人とペアになったことで男子からしばらくの間、嫉妬の嵐が来る可能性は大。
これが前世で徳を積んで起きた状況なら、詐欺も良いところだ。
「というか、湊の方はどうだったんだよ」
「俺? 俺のペアは朝日奈だったよ」
「……ごめん、誰?」
この高校生になってまだ1週間なので、正直なところ名前を言われても、誰かわからない。
「朝日奈楓。というか1週間経ってるんだし、クラスメイトの名前くらい覚えておけよ。今ちょうど窓際の一番後ろの席に座っている子だよ」
クラスメイトの名前は1週間で覚えるのは当然なのだろうか。
少なくとも湊は覚えているぽいな。
俺、半分以上顔と名前が一致しないんだけど。
これが本物の陽キャとの差だというのか。
そんなことを考えながら、窓際の一番後ろの席を見る。
そこには、夏恋や白雪に勝るとも劣らない美少女がいた。
いや、美少女ってより美女ってニュアンスがしっくりくる気がする。
白雪や夏恋は同級生の中の華って感じだが朝日奈さんは大人っぽい魅惑的な人って感じだな。
あの人が湊のペアか。湊と並んでいれば絵になりそうだな。
その上、湊から聞く限りでは、性格も悪いわけではなく、夏恋たちのように問題があるわけでもないと。
何でこいつはこんなに恵まれているんだよ、羨ましい。
この美男美女ペアめ、爆発してしまえ‼️
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新1年生は朝のHRが終わると講堂に集合していた。
講堂での席順は、これまでのようにクラス順、出席番号順ではなく、各ペアが住む住戸の部屋番号順で並んでいた。
どこの席に座るか教室に紙で張り出されたわけだが、俺たちのペアだけ3席だったため、とある男子生徒が「何でこのペアだけ3席なんですか?」と聞き、その理由を霜月先生が答えたため、クラスメイト全員に俺たちが3人ペアであることがばれた。
まあ、いつかはばれるのだから、早かろうが遅かろうが構わないけど、クラスの男子からはからかわれたりして、散々な目に遭った。
「白雪さんと百合園さんと3人ペアとか、この果報者め」とか「このリア充野郎が爆発しろ!!」とか言った奴に言ってやりたい。
『お前らはあの2人が持つ爆弾を知らんからそんなこと言えんだよ、このバカチンが! 白雪は男性が苦手で、夏恋に至っては男子は恋愛対象外だぞ。これのどこが羨ましいか言ってみやがれ』って。
まあ、実際には言わんけど。
白雪が男子が苦手で、夏恋が恋愛対象が女子であることは、わざわざ言いふらすことでもないしな。
チャイムが鳴り、3限目の授業が始まる。
1、2限目は、講堂で部活動紹介だったわけだが、元々部活動に入るつもりがなかったためほとんど寝て終わった。
講堂の椅子って、普段の教室の椅子と違って、フカフカでついつい寝てしまうよな。
正面の舞台以外の電気を暗くするから、余計に眠たくなるし。
その上、周りが暗いから寝てても先生に怒られにくいときた。
だから、寝てしまうのも仕方なくね。
でもまぁ、3限目、4限目は寝ないけどな。
なんたって、DNA同棲の大切なことを説明とかがあるからな。
そんなことを考えていると、いつの間にか(確か)1年の担任教師(何組の担任かは忘れたが)が壇上に上がっていた。
「それじゃあ、今からDNA同棲についての説明を始める。といっても、大まかな説明は昨日、各担任から聞いたと思うから省くぞ。今日説明するのは、DNA同棲を始まった君たちがしなければならないこと、そしてこれからのDNA同棲に関わる行事や課題のスケジュールについてだ」
「まず、君たちがすぐにしなければならないことは家事の役割分担をどうするか話し合うことだ。今まで実家暮らしで家事をほとんどしたことがないって子も結構な人数いると思う。だからといって、ペアの子に家事を丸投げというのは絶対にダメだ。1日ごとに交代でやるでも良いし、『これは俺がやるから、こっちはやってくれる?』みたいにやる家事を固定にしても良い。女子には『洗濯物とか他人に見られたくない』と思う人も多いと思う。その場合、洗濯は各自でするといった形でも良い。どんな形でも良いから家事をする、いいな?」
昨日はあんなことがあったから家事についてすっかり忘れていた。
今日の朝は各自近くのコンビニで買ったものを食べたし。
やばい、俺今までに家事とか碌にしたことがない。
風呂洗いとか洗濯とかの掃除系やゴミ捨てとかなら何とかなるが、料理は無理だ。
料理とか、中学の調理自習以外でしたことがない。
その時も料理が得意な女子に殆どやってもらったしな。
俺がしたのとか、卵割ったのと食器を出して、洗ったくらいだ。
料理に関してはあの2人にお願いするしかないな。
「次に、食品や生活用品などの必需品などの買うお金についてだが、これらを買うのにかかったお金は、レシートをDNA同棲のことを全般的に取り扱っている第2学生課の窓口に持って行けば、お金が貰えるようになっている。といっても、直ぐに貰えるわけではなく、後日指定の銀行口座に振込みと言う形だからな。また、これらについては期限は特にないから、毎日提出しても良いし、1週間分や1ヶ月分まとめて提出しても良い。ただし、直ぐに振り込まれるわけじゃないってことは忘れるなよ。毎年いるんだが、お金がなくなってから提出して、『お金がないんですけど、今日の食費どうしたら良いですか?』とか言ってくる奴らが。まぁ、君たちの中にはそんな愚か者はいないということを信じているよ」
レシートを渡してお金を貰うシステムなのか。
捨てないように気をつけないといけないな。
「分かっているとは思うが、なんでもかんでも学校がお金を出すってわけじゃないからな。基本嗜好品はお金が貰えないと思って貰って結構だ。他にも、食品類でも高い商品を買ったりしたときはお金が支給されないこともある。例えばだが、高級店のお菓子とか、普通は買わないような高い黒毛和牛とかはだめだ。そんなのは自分らのお小遣いで買えってことだ。それ以外にも、外食ばっかしてたりしたらお金が貰えないからな。嗜好品でもお金が支給されるのもあるが、制限もある。月に何個までならOKで、何個目からはダメみたいなのが。この制限は、嗜好品以外にも付けられている場合がある。詳しくは昨日貰ったパンフレットに書いてあるからそれを読むように」
そらそうだろう、全部お金を出してくれるなら、みんな遠慮なく商品買いまくるもんな、制限はあって当然だ。
それにしても月何個制限ってまるで小学校の遠足でよくある『おやつは何個まで』みたいだな。
その後、今後のスケジュールなどを簡単に説明してこの授業は終わった。
3限目の時間内に終わり、4限目の授業はなく、教室に戻りSHRをして、解散した。
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