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114話 話し合いへと

 リュウとルイスベルは二人で屋敷周辺を一掃し、一時後退する中央軍にゴーレムの追い打ちをかけて屋敷正面を奪取した。 ヴェクスターもリュウの本気の防衛に手が出ず、やがて空が明るみ始める。


「ヴェクスターさんを呼んで来て下さい! 話があります! 」


 リュウはゴーレムの肩に乗って近くにいる中央軍の兵士に呼び掛けるが、無敵に近いゴーレムには誰一人近寄らない。 魔法で手足を崩しても、リュウがすぐに再生してしまうのだ。


「無駄だな。 そんなデタラメな強さを披露してしまっては、恐怖で誰の耳にも届いていない。 こちらから出向く方が手っ取り早いだろう 」


 クレイモアを地面に立て、息を整えるルイスベル。 彼はゴーレムの横に立ち、呆れ顔でリュウを見上げていた。


「そうですか。 では行ってきます…… ここの守りをお任せしますね 」


 ニコッと笑ったリュウは、陣形を整えている中央軍へとゴーレムを進ませる。


「は…… 放てー!! 」


 中央軍は近づいてくるゴーレムに魔法攻撃を仕掛けるが、リュウのリフレクションによって全て弾き返される。 臆した兵士等によってモーセの海割りのように道ができ、リュウはヴェクスターが陣取る本陣へと辿り着いた。


 が、そこにヴェクスターの姿は既になかったのだった。 ヴェクスターは劣勢と見るや否や、『この場を死守せよ』と兵士に告げて側近の護衛兵と共にカーラーンへと引き返したのだ。 その実は、ダークエルフの『ディクライン・ゲート』を取りに行くためだった。


「…… ヴェクスターさんはどちらに? 」


「こ…… 答えるものか! 」


 指揮者代理を任された魔導騎士のマルケニーは、膝をガクガクと震わせながらリュウに対峙する。


「では、これ以上の戦いは無益ですから軍を退いて下さいと伝えて下さい 」


「何を言う! 貴様らが王国転覆を謀ったのだろう! 我々は貴様ら逆賊を殲滅するまで退かぬ! 亡きフェアブールト王の弔いでもあるのだ! 」


「その前国王を殺害した真犯人がヴェクスターさんだったとしたら、あなたはどうしますか? 」


「そんなバカな話がある訳ないだろう! 貴様はヴェクスター様を愚弄するのか!? 」


 憤慨するマルケニーは、腰の剣を抜いてリュウに切っ先を向けた。


「本当の事です。 彼はフェアブールト国王にダークエルフの生き血を飲ませ、その血に侵された国王は異形になって自爆した。 当事者から聞いた話ですから間違いありません 」


「ダークエルフ…… 」


 その言葉にマルケニーは目を見開く。 マルケニーもヴェクスターのダークエルフ研究に関与しており、実験台となった老人が同様の発作を起こしたことを知っていたのだった。


「今だ! 起動しろ! 」


 マルケニーの後ろから魔導士の一人が叫ぶ。 するとリュウとマルケニーを取り囲んでいた魔導士隊が一斉に魔法を発動し、二人を中心に金色の魔方陣が描かれる。


「なっ!? お前らやめろぉ!! 」


 マルケニーが叫ぶも、一瞬にして魔方陣内は光の矢が降り注いだのだ。 魔導士20人掛かりで発動する『シャイニングレイン』だ。


「ぎゃあぁ…… 」


 魔方陣は円柱状に天に伸び、マルケニーは脱出することも叶わず頭から光の矢に貫かれて粉々になっていく。 ゴーレムも砕かれてバラバラになっていく中、リュウだけはリフレクションに守られて平立っていたのだった。


「いい加減にしてください! 」


 リュウはドラゴニクスを構えて深く沈み込む。 鞘から抜き放つと同時に体に回転を加え、全周囲を凪ぎ払うようにドラゴニクスを一閃したのだ。


「「「わああっ!! 」」」


「「「があぁ!! 」」」


 光の柱を輪切りにし、その軌跡は竜巻を巻き起こす。 周囲の兵士らを巻き上げ、更には砕けたゴーレムの残骸をさらって、リュウの『白龍の審判』は100人あまりを一撃で吹き飛ばすのだった。




 その頃エンデヴァルドは王の間を占拠し、ファーウェルとマリアを側に玉座にあぐらをかいていた。 美女と少女を従えるような形で玉座に肘をつき、玉座を奪還しようとなだれ込んでくる兵士達を、まるで指先で弾くように王の間から弾き出す。


「遊んでるんですか? 」


「バカ言うな。 ヴェクスターが戻ってくるのを待ってるんだよ 」


 エンデヴァルドはリヒートを惨殺する際、わざと他の兵士に見せつけていたのだ。 その兵士からヴェクスターの耳に入れば、すぐに本人が帰還すると睨んだからだった。


「もう少し派手に暴れれば良かったのではありませんか? 」


 ファーウェルが玉座の肘掛に腰を下ろし、暗器を手入れを始める。


「破壊自体に意味はねぇし、セレスがここに座るようになった時に、直すのもめんどくせぇだろ 」


「敵陣のど真ん中で何の心配をしてるんですか。 バカですか? 覚醒しても相変わらずバカですね 」


 そう罵るマリアもまた反対側の肘掛に腰掛け、とんがり帽子の埃を払い始めた。 呑気なのは三人とも変わらない。


「そういやよ、ヴェクスターはなんでダークエルフの研究を始めたんだ? 」


「母親を生き返らせる為だったかと 」


「ああ…… 前になんかそんなような事を言ってたか。 その母上様はどこにいるんだ? 」


「ヴェクスターの邸宅か、この王城のどこかに保管されているのでしょう。 探しますか? 」


 ファーウェルが興味なさげに問うと、エンデヴァルドは玉座から立ち上がってエターニアを肩に担いだ。


「諸悪の根元はそれかもしれねぇ。 どうせ暇だし、そいつはもしかしたらフローレンと同じなのかもしれねぇ 」


 二人を玉座に残したまま、彼は下階へと続く赤絨毯の上を歩いていく。 動きを見せたエンデヴァルド達を兵士等が取り囲むが、彼の睨みに誰一人として攻撃しようとはしない。


「まったく…… じっとしていられない性格はそのままなんですね 」


「フフ…… 彼は腐っても彼ということでしょうか 」


 マリアもファーウェルも、思いつきで行動する彼にため息を漏らしたが、仕方なくその後に続くのだった。


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