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詩集 駒鳥  作者: 蘭木堂
6/7

全部が全部、夢の中だなんて


  14. 化生


 アスファルトの溶けた匂いと

 水晶の滴りをつけた蜘蛛の糸


 (きんきらりと光っている)


 つゆのおかげで忘れていたが

 今日は君と会う約束をしていた

 お気に入りのシャッツはびしょ濡れで

 麦わら帽子もほつれてしまったが

 君はきっと気にしないのだろう

 

 (煙が噴いて 顔がまっくろ)


 

 ああだけど 君は待ってくれるだろうか

 君と朝方歩いた頃は

 まだ空も晴れていた

 いつしか俄かに曇りだし

 沛雨が全てをさらっていった


 (明日も会いに来てください)



 今一度 窓の外を眺めると

 入道雲は通り過ぎ 

 ことにも長閑な昼下がり

 

 (まだ今日は昨日だったのか)


 こんなに胡乱げに思うのも

 全てあの雨雲のせいだ




  15. 旅(胎生)


 いつかの遠い話をしよう

 君が まだ生まれてくる前の

 夜空が星で満ちていた頃

 

 僕らは旅をしていた 

 とてつもない深い旅



 いつかの遠い話をしよう

 君が ようやく産声を上げた後の

 ずいぶん尊い夜のこと


 僕らはやっぱり旅をしていた

 でも ようやく光が見えてきたんだ



 いつかの遠い話をしよう

 君が 僕を抱えて走り回って

 ようやく見つけた帰り道


 夜明け空が赤く滲んだ

 あのときの 涙が止まらなかった話をしよう


 必死で駆けて お腹も空いて 

 もう体もボロボロで

 それでも あの夜明けを見て笑い合えた


    君が帰ってきてくれるなら

  またいつか あのときの話をしよう


化生は『けしょう』と読むのですよー

仏教用語です。

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