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破壊と創造の未来都市  作者: 若枝もとか
学生犯罪<クライマー>編
2/3

襲撃

「……あんたがうちに住み着いてから一週間だけどなんで何もしないんだ?」

「えっ、何かしたほうがいいんですか?」

「いや、いい……」


八重花と出会ってから一週間が立ちました。

はじめは料理や掃除といった家事をするという条件で居候を彼は認めました。

というのも彼が承諾したのは最もそこではなく、彼女が美人であり、スタイルもとてもよく、優しそうという点がありました。


「これ、ラブコメ的展開なんじゃ……」


 そんなことを考え、いろいろ妄想をしていました。

 しかし蓋を開けると料理はできず、掃除をさせると部屋は散らかる、その上大食らいとあらゆる面で問題児でした。三日目からは何もしないでくれと頼み込み、元々の生活へと戻りました。


「……ってことがあったわけよ、どう思うよ」


 有人が話しているのは同級生の巳出数基(みだしかずき)です。夏休みですが二人は英語で赤点を取ったため、補習を受けに学校へと受けに来ていました。



「羨ましい展開じゃね?嫌味に聞こえるんだけど」

「うっ」

「美人なんだろ?おっぱいでかいんだろ?」

「ぐっ」


 返す言葉が浮かびません。


「でもそのお姉さん、何者なんだろうな」

「俺も何度か聞いたんだけど歳上で下の名前しかわかんないんだ。中学・高校の学生バンクも覗いてみたんだけど下の名前が同じ学生は一人もいなかった」

「ふーん……何やら事件の香りがしますな」

「しねえよ!」


 そんな他愛のない話を二人はしていました。その後、本当に事件に巻き込まれるとは知らずに。




 補習の帰り道、すっかり夕方になっていました。帰り道は夏場にしては少し赤く、そして薄暗さがあります。


「……A班は夜8時、B班は夜11時に決行だ、いいな?」

「了解、そっちも抜かるなよ」

「わかってるって」


 あまり人気のない路地裏から話し声が聞こえてきたため、何事かと有人はこっそり覗きます。そこには三人ほど誰かがいました。一人がこちらに視線を向けたため、咄嗟に顔を引っ込めました。


「あっぶね、バレてないよな?怖いしさっさと帰ってしまおう」


 有人は走ってその場から立ち去ります。その後、路地裏から二人の男が出てきます。


「今のヤツ、話を聞いていたか?」

「いや、恐らく聞いちゃいなかったと思う。あいつが覗き始めたのはついさっきだったからな」

「どうする?」

「……顔を見られていたら厄介だな。黒蜘蛛、生け捕りできるか?」

「問題ない、僕にまかせて」


 黒蜘蛛と呼ばれた女性は頷き、すぐにその場から立ち去っていきました。




 慌てて走った有人は息を切らしながら無人の公園へと入り込み、自販機でザクロサイダーを購入します。すぐにそれを喉へと通していきます。


「ぷはぁー!いやービビったビビった。すげー怪しい雰囲気あったから逃げてきて正解だった」


 安心の一息をし、ベンチへぐったりと座り込みます。そのままもたれ掛かり、力を抜きます。その時、逆さで後ろの風景が視界に入ります。

 有人の表情が変わり、すごい勢いでベンチから前のめりで離れます。後ろを振り向くと、座っていた背もたれにナイフが突き刺さっています。


「……外しましたか」

「な、なんだお前!」

「黙って着いてこれば何もしませんが、どうしますか?」


 やばいという言葉だけが有人の頭の中に響いていました。あたりを見渡し、武器になりそうなものを探しますがその間に相手は次の攻撃を繰り出していました。


「うおおおお!」


 回し蹴り、それをなんとか避けましたが続けざまに踵落としを繰り出します。少し頭をかすめましたがなんとか避けます。額が少しきれ、血が流れています。


「防犯カメラもあるってのになんてやつだ」

「安心して。僕は防犯カメラには映らないの」

「……は?」

「今あなたは一人で暴れて怪我をしたようにしか映ってないと思うわ」

「畜生、電脳運用(ハッカー)かよお前!」

「ピンポーン!」


 ナイフを再び構え、ジリジリと距離を詰めてきます。有人は額の血を腕で拭い、構えます。


「へえ、僕と戦うっての?」

「あまり気乗りしないがしゃーねえ!行くぞ!」


 拳を握り、相手に向かって突っ込んできます。ナイフを持って待ち構え、迎撃しようとします。拳を振りかぶったタイミングを狙い、ナイフで腹部に突きを繰り出します。しかし軌道は奇妙なことに腹部の横へとそれていきます。


「残念だったな」

「この感触……まさか」

「迂闊だったな、俺も能力持ってんだからそれぐらい探りいれてから攻撃しないとな」


 有人はそのまま相手の胸ぐらを掴んで捉えようとします。しかし不思議な柔らかい感触が手にあります。


「きゃっ」

「……きゃっ?」


 思わず手を離します。相手は一気に距離を開け、後ろへと下がりました。


「お前、女かよ」

「うるさい!変態!絶対に許さない!!次あったら絶対にぶっ殺す!覚えとけ!」


 黒ずくめの女はそのままどこかへと消えていきました。有人は深く息を吐き、両膝に手を当てて項垂れます。


「なんかやばいのに巻き込まれた気しかしねえ……」

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