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謎の女
「あっちい……なんだこの暑さは……」
夏休みに入る七月の半ば。
渡来有人は重い足取りで暮らしているマンションへと向かっています。
「あちぃからアイスでも買おうと外に出たけど、扇風機で涼んだ方がマシだよこれ」
ぶつくさ呟きながら歩いています。
ふらふらと怪しげな足取りでしたが無事自室の階にはたどり着きました。
「やっと着いた……ん?」
自分の部屋の扉前で誰かが座り込んでいました。
見覚えのない女性です。
「……あ、こんにちは」
「あ、どうも……じゃない!あんた何!?」
「うーん……、お姉さん?」
「は?」
思わず出てしまった言葉。
彼には姉がいないため、言葉の意味を理解できずにいました。
「そこ、俺の家なんですけど」
「うん、知ってる」
「……は?」
「私、八重花っていうの」
「俺は渡来有人……じゃなく!!」
「ああ!私、あなたと暮らしたいの」
「暮らしたい……えっ」
こうしてよくわからない女性との同棲生活が始まりました。