第一形態って!?
「んじゃ、ちょっと行ってみます?」
「あ、ちょっと待って消音と透明化の魔法かけるから」
そう言うとタナカはスズキと並び魔法を唱える。
「田中さんて、魔法で何でも出来そーっすね。」
「まぁ、UI選択画面みたいなモノが表示されるとかじゃ無いから、何が出来て何が出来ないかは唱えてみなけりゃ解らないけどねー」
「ハハ、ザックリしてますね。」
「まぁ、財布落としたり、便所借りにくるような神様がくれる能力だからねぇ」
☆
二人は気配を消して下層に下りるが下層フロアに近づくにつれ、下層で繰り広げられている戦闘の激しい音が大きくなる。
「ハハ、やってるねー」
「……やってますね。」
二人は下層大広間の扉を少し開き中の様子を覗く、大広間はまるでドーム球場がスッポリと収まりそうな位広く、その中心に対峙する者達の姿があった。
扉から見えるその眼前にはまさに最終決戦然とした魔王軍幹部ワルイーデスと、勇者以外の勇者パーティーメンバーが、血で血を洗う戦いをしている。
「ヌハハハハハハハ、嬉しいぞ貴様ら!!我を本気にさせる者達が弱小な人間種族の中におったとわ!!」
「ぬかせ!! ワルイーデス!! 聖なる精霊の加護を賜った我等が、お前のその減らず口を止めてくれるわ!!」
身長こそ2メートル位のワルイーデスだが、背中には黒く大きなコウモリのような翼をはやし、中空に浮かび強気な言葉を叫ぶ女戦士を見下ろしている。
「あ、まだ大丈夫そうだ」
「なぜですか?」
タナカはワルイーデスの様子を見るなりそう呟く、スズキはそのタナカの様子に理由を求めた。
「だってワルちゃん、まだ第一形態だから」
「第一形態って!? て、事は第二、第三てあるんですか?」
「うん、聞いた限りじゃ第四形態まであるらしいから……まぁ、大丈夫なんじゃね。」
「えぇ〜……。 ま、まぁ、ウチの方も女戦士がまだノーマルでしたから」
「なにそれ、女戦士も変身すんの!?」
「変身というか、体質変化というか、バーサクモード入ると、なんというかガチムチになります。」
「あ、あそう、ガチムチに……結構美人なのにガチムチですか」
「い、いやぁ、見慣れればソレはソレでアリですよ! ……見慣れるまで時間はかかりますが」
「あ、でも、ビキニアーマーなんだね。 基本を抑えててなんか安心した。」
「あ、それ解ります。 最初はビックリしましたし、それ護れてなくね?とか思いましたけど、この世界だとしっくりきちゃうんですよね。」
「コスプレじゃなくてガチなんだって思うと、余計にグッと来るね。」
「ハイ、グッときます。」
「結構ムラムラしたんじゃね?」
「なっ!!……否定はしません! 否定は」
「……。」
「…………。」
一瞬の沈黙
「とりあえず、上戻ろうか」
「で、ですね。」
タナカとスズキは、扉をそっと閉め元の部屋へと戻っていった。