第二十四話 思惑
久しぶりの投稿です
またできるだけ毎日投稿したいと思います
「そもそも今回の決闘は儂が強引に決めたものだったのじゃ。本来ならば、ドナテロのせがれは問答無用で処罰しなければならないくらいの事をした。しかしそれに情状酌量の余地を与えたのが儂なんじゃよ」
確かにドナテロさんが最初に王様の前でそんなこと言っていた気もする。
「しかしそれじゃあまずいのじゃよ。ベネディクトゥスの罪はその家族にまで罪が及ぶほどの事なんじゃよ。しかしそれではドナテロにも罪が及ぶ。今の王国にはドナテロの力が必要不可欠だからのぉ。その為にはどうにかして罪をベネディクトゥスの一人のものとしなければならなかった。そこで儂は決闘を持ち出したのじゃ」
「それでなぜ、僕らがその相手に」
「表向きの理由は当事者同士による解決。……真の理由はセレスの正体を暴くことじゃ」
「セレスの正体……」
それは……転生者であるという事か……。
「そう、セレスははっきり言って異常じゃ。セレスを除いた現王族で最も才能溢れた者はセレスの兄レオンハルトじゃ。しかしセレスの才覚はそれを遥かにしのぐ。儂は驚いたよ、城の隅に隔離されていた孫娘が当時三歳の時点で初級魔法を扱えていた事に。誰も魔法は教えていない。当時セレスは周りの者から嫌煙されていたからの。文字だって教育係が少し教えただけ。つまりセレスは一人で本を読み、理解し、修得したのだ。そんなことはふつうあり得ない。儂はセレスが英雄か、それとも魔物か何かかと疑った」
王様はセレスを見る。セレスは僕の胸に頭を押し付け、顔を隠している。かすかに僕の服を握る手が震えている。
「もちろんセレスが不貞の子などと思ったことは無い。あの子はそんな事をする娘ではないと知っておるからな。しかしセレスの異常性は日を増すごとに大きくなっていった。つい最近の事じゃ、レオとセレス、それに幾人かの協力者の手により、セレスに付きまとっていた悪評を覆した。魔法の件に続き、これもまた異常じゃ。なにせセレスには人脈がなかった。レオこそ味方をしていたが、レオもそれほど頼りになる人脈があるわけではない。さらに、悪意を持ってセレスの悪い噂を流布する者もおる。そんな状況を六歳の子供がなしたのだ。王として、そのような異常な子供に対して何も思わないわけがない」
王様は一拍おいて再び話し始めた。
「そこで今回の決闘じゃ。ベネディクトゥスはまだ兵としての経験は浅く、二年程しかたっていない。しかし、同年代の中ではそれなりに優秀な人材だった。当然君らの世代で勝てる者などいない。更に奴は随分と歪んだ性格をしている上にセレスの事を嫌っておった。奴の罪を聞いた時、儂は丁度いいと思った。ベネディクトゥスをセレスにぶつけよう、とな。ベネディクトゥスならば規則で縛っておってもセレスを殺すかもしれん、そう考えた。命の危機になればセレスも真の顔を出すと思っておった。……結果は言うまでもないな」
そういった王様は酷く落ち込んだような表情をしていた。
「儂はしまった、と思ったよ。セレスは異常なまでの頭の良さがあるだけで、心は普通の女の子なのだと、痛感した。儂らの前では一度だって取り乱したことのなかったセレスが先ほどの決闘では取り乱し、冷静ではない面を見せた。殴られた時なんて目に涙すら浮かべていた。病室で目が覚めて、君が倒れているのを知ると泣き出して、儂につかみかかってきた。びっくりしたよ、あのセレスが口調も崩して儂に向かって抗議してきたのだからな」
「お爺様! 余計な事は言わなくてよいのです!」
「はっはっは。このように必死になって何かを訴えるような、普通の面、今まで見た事がなかった。正体不明だった孫娘が途端にただの女の子に見えるようになった。すると儂にも後悔が出てくる。儂は幼子になんてなんて事をしまったのだろうと。疑心暗鬼になるあまりその者の本質すら見抜けなくなっていたとは……」
すっかり落ち込んだ様子の王様。セレスは僕から体を離し、しっかりと王様に向かって、座りなおした。
「お爺様。お爺様のしたことは私にとってとてもつらく、理不尽な事でした。しかし、それがお爺様の国、民を思う気持ちからだという事も私は理解しているつもりです。ですからそのように落ち込まず、顔を上げてください。……私はお爺様の事を恨んでなどいませんよ」
「おぉセレス」
王様はセレスの手を取り、しわの入った大きな手で優しく包み込み、顔の前に持ってくる。そして祈る様にうずくまった。
穏やかな時間が流れていく。
それからしばらくして、場が落ち着いた所で王様が口を開いた。
「アルノルト君。すまなかったね。今回の件、君は完全な被害者じゃ。危険な目に合わせてしまったことを心より謝罪しよう」
「いえ、その……王様にも事情があったわけですし、僕はお二人の仲が悪くならなかっただけでよかったです」
「そうか……。それはそうと、決闘の報酬についてじゃが、二人は何を望む」
「そうですね……」
「報酬は儂への貸しを作るという事じゃったが、何か望むものがあるなら用意しよう」
どうしようか。正直今すぐ欲しい物はないな。杖とかローブでもいいけど、今の僕には不要だし……。ていうか僕杖を鈍器としてしか使ってなかったなぁ。魔法を飛ばせないのだからしょうがないんだけど……。あ、そうだ。
「王様、望むものというのは物でなくても良いでしょうか」
「権利……という事かの? いいじゃろう」
「此度の会議が終わるまでの間、セレスと共に過ごす事をお許しいただきたい」
「ほう」
「アル君!?」
僕の言葉にニヤニヤとする王に取り乱すセレス。僕そんなに驚くような事言ったかな?
「私は今だ魔法を上手く扱えないのです。しかしセレスは私に合う練習法を教えてくれました。私はセレスと共に魔法の練習をしたいのです」
「……知ってました」
「はっはは、そうかそうか、よかろう。許可する」
先ほどの発言の時とは変わって、気まずそうな顔をするセレスと声を上げて笑う王様。……本当に僕何でこんな反応されてるの? 訳が分からない。
「アルノルト君はそれでいいとして、セレスは何かあるかい?」
「私は今はまだ使いません。時が来た時、お爺様に貸しを返してもらう事にします」
「それは怖いのぉ」
そういって、嬉しそうに笑う王様。
「さて、話すことも話したし、儂は執務に戻るとするかのぉ。此度の決闘の無茶なスケジュール組みのおかげでしわ寄せが大変じゃわい」
「お爺様の自業自得なのですからそれくらい頑張ってください」
「そうじゃの」
王様はそう言ってベットから離れる。
病室から出る直前、王様はこちらも見ないままに思い出したかの様に一言放つ。
「セレス――いや、君の秘密、君が話したくなった時でよい、話しておくれ」
王様、セレスが転生者という事に気が付いて……。
「お爺様……」
セレスが病室の入口を見る。王様の顔は見えない。
「アルノルト君、孫娘の事よろしく頼んだよ。君にセレスを任せる」
「お爺様!」
王様は病室から去っていった。去り際に一瞬見えた横顔には柔らかな笑みが浮かべられていた。
「えっと、とりあえず決闘お疲れ様」
「……お疲れ様」
病室に取り残された僕ら二人の間に少し気まずい雰囲気が流れる。
先ほどまでは王様の話や、決闘の後のドタバタ、寝起きという事もあって意識してなかったけど、僕随分とセレスになれなれしくなかった!? セレスもセレスで僕に抱き着いてくるし。
王様には孫娘を頼むとか言われるし、なんというかその。黒板に女子と自分の名前で相合傘を書かれてクラスの人達にからかわれた時の様な恥ずかしさを感じる。
僕はセレスの顔を見た。セレスは僕から目をそらしていた。しかし、セレスの顔は耳まで真っ赤になっていた。
き、気まずい。
「とりあえず、ねよっか」
僕らはそれぞれのベッドに戻り眠る事にした。
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