第二十一話 決闘・2
今日の投稿分は短めです。次話がその分長くなる予定です。
「セレスティーナ殿下、アルノルト殿、装備の準備が整いました、控室への移動をお願いいたします」
ドア越しに知らない女の人の声がした。
「『もう来たみたいね……。作戦は不安ではあるけどこれでいいかな?』」
「『うん。ちょっと不安だけどこれしかないと思う』」
僕らは部屋を後にした。
「こちらがお二方の装備になります」
メイドさんに案内された部屋には二着のローブと杖が置かれていた。僕はローブと杖を手に取る。
ローブは真っ白な色をしていて、貴族の普段着よりも手触りが良い。布の裏地には何やら文字と思われるものが書かれているが、こちらの世界で日常に使われている言葉ではなかった。
杖の方には特に変わった事はない。木製の棒に、先端には水晶の様なものがついいているくらいだ。
「僕らの装備と言いますが、これは布のローブですよね? 剣を持つ兵士相手には防具にすらならないと思うのですが」
「いえ、これはとある昆虫系の魔物の糸で編まれた特殊なローブです。下手な革の鎧や、薄めの鉄プレートよりも防御力はあるでしょう」
僕のボヤキに後ろのメイドさんが答える。きたなファンタジー素材。
「こちらの杖はどのような効果があるのでしょうか」
セレスが杖を持ち、メイドに尋ねる。
「そちらの杖は術者の魔術効率の上昇、魔力放出の補助が主な機能ですね。こちらも特殊な木を材料に作られているので平均的な冒険者や兵士の剣では斬る事のできな代物です」
メイドさんはスラスラと杖の性能についても述べる。博識だなぁ。
「お二方とも装備は身に付けられましたね。それではこの中のどれかを体に身に着けてください」
メイドさんが僕らに見せたのは透明な薔薇の形をした宝石のようなものが付いた装飾品の数々だった。
「これは魔石……ですか?」
「その通りでございます。魔石をお妃さまの好まれていた薔薇の花の形にカッティングしまして、それを守る事の出来る騎士であれとの事で、王が最近の決闘ではこちらをしようするようにおっしゃられております」
魔石。こちらの世界でのあらゆる生活基盤を支える石だ。明かりをつけるのも火を使うのも全てこの魔石を利用している。もっとも魔石自体屑の様な物から宝石のようなものまで価値はピンキリだ。スラムの住人の様な人ならば、魔石ではなく、何かを燃やして明かりを灯す事もあるだろう。
魔石は純度の高い物程澄んだ色になる。僕らの身に着けているこの薔薇の魔石はおそらく最高品質の物だ。それを砕き合うなんてぞっとする話だ。どうやら僕の貧乏性は前世のままの様だ。
僕は薔薇の宝石が付いた腕輪を、セレスは髪飾りを手に取った。
「そちらの装飾品の魔石を全て失った陣営の負けとなります。何か他にご質問はございますか?」
「いえ質問はありません。ありがとうございます。アルノルトさん、もしも当初の作戦が失敗したのなら試してほしい事があるのですが、こちらへ来てもらってもよいでしょうか」
セレスは僕に手招きをする。
セレスは近くにまで来た僕の耳元でそっとささやいた。
「もしもの時はこの杖の宝玉部分にアルノルトさんの魔力をありったけ注いでください」
セレスはそれだけ言って僕から距離を取った。
「私たちは準備完了です。それでは決闘を開始しましょう」
僕とセレスは決闘場へと向かった。
決闘場は土の地面に石畳の台が作られただけの簡素な物だった。その周りには城に勤めているであろう兵士が大勢いた。
決闘場は一辺五十メートル程の正方形でその中央には顔を腫らしたままのベネディクトゥスが立っていた。
奴は修練場で来ていた鉄の鎧とは違い、皮の鎧を身に着けていた。その胸元には薔薇のブローチが光輝いていた。
「二人も来たようだし、始めるとするかのう」
王様が観覧席に座り、僕らの到着を知らせる。その言葉に周りの兵士たちが僕らの方を見る。
「本当にまだ子供だ」
「姫様だっている」
「おい、まてあの赤毛の子可愛くないか?」
兵士達のざわめき声が聞こえる。
最後の奴誰だよ、名乗らずにここから去ってくれないかな?
「静粛に。此度は我が王国の騎士、ベネディクトゥス・ヘルツォーゲンベルクの責を問うものである。彼の者は第一王子の長女セレスティーナへの暴言、殺傷未遂、ならびにリーベルト伯爵家の長男アルノルト・リーベルトとその護衛への暴行を犯したと報告を受けた。それにつき拘束し、事情を聴いたところ、ベネディクトゥスはアルノルトが私をはめたのだという。双方の意見は食い違い、現場を見ていた者は他に居ない。よって我が国の伝統である決闘によって責の所在を定めるものとする。ベネディクトゥスが勝てば今回の件は不問とする。負ければ此度の罪を全て一身で背負う事となる。諸君らはこの決闘の未届け人である。同僚への友情、王族への忠義、それらを全てを無にし公平な目で見届けてくれ」
王の演説が終わり僕とセレスは舞台に上がる。
さぁ決闘の開始だ。
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次の投稿は11/22水曜日の零時~一時頃の予定です。




