プロローグ:きっかけは半年前に...
この作品は、2013年12月にゲーム化する「DeuxEngage~the Real World~」のシナリオをライトノベル風にしたものです。原作と少しばかり、表現や視点を変えお送りします。公式サイトのURLはこちらhttp://deuxengage.com/
○場面:勇也の部屋(朝)
携帯電話の目覚ましが喧しく鳴り響く布団から手を出して止める木嶋勇也(19)
勇也「………………朝か……」
そう言いながら、勇也はカテーンを空けた。
携帯電話を手に持ちながら立ち上がり台所へと移動する。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し口にし手の中の携帯電話の液晶画面にを見ると母親からの着信と伝言メッセージの表示気づく。
勇也「……っ……!」
苦虫を噛み潰した表情で伝言メッセージを確認する。
母親「勇也、母さんだけど、仕事の方は見付かったの? 最近、連絡をくれないから、母さん心配で心配で……どうしても、って云うのなら、こっちに——」
何も言わず伝言メッセージを切る。
勇也「そんなの……云われなくても解っているさ……」
伝言メッセージを削除しながら溜息を零し、外出用の服に着替えて部屋を出る。
春の日差しの眩しさに一瞬目を瞑るが目が慣れた所で足早に駅へと向かう。
○場面:自宅前道路 ⇒ 最寄り駅 ⇒ 構内 ⇒ ホーム(朝)
平日の通勤ラッシュ過ぎで人が疎らにしか存在しないホーム
電車が来る時間を確認するために携帯電話に視線を落した所で
何かの視線を感じて振り返る勇也。
勇也「……??」
辺りを見回すが、自分を見ている人はおらず、再び携帯電話に視線を戻す勇也
勇也が携帯電話に集中した所で物陰から現れる高野兵吾(30)
兵吾「……危ない危ない……でも、なかなか優秀で嬉しい限りだ。育て甲斐がある」
再び物陰に隠れ勇也を監視する兵吾
電車がホームにやってきたので乗り込み目的地まで乗車する勇也と兵吾
○場面:電車 ⇒ ホーム ⇒ 構内 ⇒ 目的駅(朝)
目的の駅について肩掛け鞄の中から飲み物を取り出して口にする。
飲み物を口にして気持ちを入れ替えた所で職業安定所に足を向ける。
木嶋勇也は、去年新卒で入った会社でいきなり、俗にいう「ブラック企業」を引き当ててしまった。その後、ある程度働いたがすぐに会社を辞め、現在絶賛就活中だ。
実家と都会の街並みの違いを実感しながら歩みを進める。
勇也(実家と違い、こっちは全てが目まぐるしく動く。上京して1年以上経つのに、やっぱり未だこの空気には慣れないものだ……)
○場面:街並み ⇒ 路地①(朝)
大通りから路地に入った所で再び視線を感じる。
だが、今度は振り返らず角を曲がった所で身体を隠して待ち伏せをして、気配が曲がり角に近付いた所で姿を表す。
勇也「あ、あれ? ……誰も……いない……??」
小首を傾げ、今一つ納得のいかない勇也であるが諦めて職業安定所に向かう。
勇也がある程度離れた所で物陰から現れる兵吾
兵吾「僕の存在にもちゃんと気付くし、曲がり角を利用するとは、良い判断だ。
やっぱり、僕の目に狂いはなかったようだね」
先程まで姿を隠していた物陰に隠れて存在を消すと、勇也の後を追う。
○場面:路地① ⇒ 路地② ⇒ 職業安定所(朝)
真っ直ぐ受付に進みハローワークカードを見せて職業安定所に登録されている募集職種を検索するためのパソコンの予約を取る。運良く待たずにパソコンを使用出来たので早速仕事の検索に入る。
勇也(俺のこれまでの経歴を活かせるモノは……っとこの辺りか)
ディスプレイに映し出される検索結果を食い入るように見詰める
100件以上の検索結果を確認してその内の5つを候補して印刷する
パソコンの使用を終えた旨を受付に伝え、応募するために担当を呼んでもらう勇也
勇也「すみません、こちらの(印刷した募集要項を受付に見せる)募集をしたいのですが、担当の方をお願いします」
受付「あっ、はい、では、こちらの(応募相談順番カードを発券機から引き抜く)カードをお持ちください。順番になりましたら、お渡ししました番号をお呼びしますので、お呼びしました部屋に向かってください。それまではあちらの椅子にお掛けになってお待ちください」
勇也「ありがとうございます(応募相談順番カードを受け取る)」
椅子に腰掛け番号を呼ばれるのを待つ勇也
ディスプレイを凝視していたので目頭を押さえて目元をほぐす勇也
暫くするとチャイムが鳴り、自分の番号が呼ばれたので机に向かう勇也
○場面:職業安定所・待合室 ⇒ 職業安定所・応募相談机(朝)
応募相談机の向かい側に担当の女性が立っている
机の前に勇也が来ると一瞥して相手を確認する担当
担当「どうぞ、お掛けになってください(手で座るのを促す)」
勇也「失礼します(椅子に腰掛ける)」
椅子に腰掛け、筆記用具を机に広げた所で担当の女性を確認する勇也
目が合った瞬間背筋を云い様のない寒気が走って軽く身震いする勇也
担当「……? 寒いのでしょうか?」
勇也「あっ、いえ、空調の風が当たっただけなので、気にしないでください」
頭に片手を当てて首を傾げて苦笑する勇也
勇也の仕草を視界の端で確認すると直ぐに手元の応募要項に視線を落した担当
担当「木嶋さんがご希望されるのは、こちらの5社で間違いありませんか?」
勇也「はい、こちらの5社に応募させていただきたいと考えています」
担当「解りました。そうですね……木嶋さんのこれまでのご経験から、こちらの5社ならば、木嶋さんのスキル的にも以前記入していただきました希望調査書にも合致しますし、問題ないと思います」
担当と応募の相談をしているだけなのに背中を冷たい汗が流れる。
口が乾き、唾を飲み込み、苦しくもないのに首元を緩める。
担当「………………木嶋さん」
勇也「は、はい?」
担当「本当に何ともないのでしょうか? 体調が余りよろしくないようにお見受けするのですが?」
勇也「あ、あ〜……もしかすると、そうかもれないです……」
担当「やっぱりですか……では、後はこちらで応募の手続きを行いますので、本日はこの辺りにしまして、木嶋さんはお帰りになられたらどうでしょうか?」
勇也「そ、そうですね……そうさせていただきます」
机に広げている筆記用具を鞄に入れなおして立ち上がる勇也
担当も勇也に合わせて立ち上がる
勇也「よろしくお願いします(一礼)」
担当「畏まりました(一礼)。こちらの方で責任を持って対応させていただきます」
勇也「失礼します(一礼)」
部屋から足早に去る勇也
職業安定所・待合室を抜けて職業安定所・ロビーに進んだ勇也を見詰める担当
耳元の髪を掻き上げ、装着しているイヤホンの通話ボタンを押す担当
担当「兵吾様、木嶋様がそちらに向かいました」
兵吾「了解。それじゃ、後は僕の担当だから、青は先に車に戻っていてくれ」
担当「畏まりました」
イヤホンのボタンから指を離し兵吾との通信を終えると職業安定所の職員専用の休憩室に向かう担当
休憩室に向かう途中に存在するシュレッダーに応募要項を入れて裁断する担当
○場面:職業安定所・応募相談机 ⇒ 職業安定所・ロビー(朝)
ロビーについて後ろを軽く確認して応募相談した担当がいなくなった事を確認した所で一息つくと額に手を当て体温を確認する勇也
勇也(別に熱はないんだけどな……あの寒気はなんだったんだ??)
額から首のリンパの辺りに手を当てる。
勇也(やっぱり、ないよな……)
首を傾けて悩む勇也に声をかける兵吾
兵吾「キミ、仕事を探しているんだろう?」
突然声を掛けられて飛び退く勇也
兵吾「あぁ、ごめんごめん、驚かすつもりはなかったんだ。僕はこういう(スーツの内ポケットから名刺を取り出す)者さ」
兵吾から視線を外さずに名刺を受け取り、内容を確認する勇也
勇也「高野探偵事務所 所長 高野兵吾……さん?あれ?もしかして、どこかでお会いした事無いですか?」
兵吾「君とは初対面だよ。それより、僕は探偵の高野兵吾って云うんだ。まっ(両の手を広げる)、探偵と云っても、よくドラマであるような華やかなモノじゃなくて、本当はとても地味なものだけどね(片目を瞑る)」
微笑んだまま身振り手振りを交えて自己紹介をする兵吾
眉根を寄せて兵吾を見ている勇也
勇也「……それで……探偵さんが、俺に何の用ですか?」
兵吾「おっと、そうだった。つい自己紹介に力を入れ過ぎて忘れてしまっていたよ」
頭を手を当てて軽くおどける兵吾
兵吾「実はね、僕は住み込みで仕事を手伝ってくれそうな人をここでず〜っと探していたんだ。これがまた難儀なもので、なかなか僕の条件に合う人が現れず、諦めかけていた所に僕の条件にピッタリのキミが現れたから、ついつい声を掛けたって所さ」
訝しげに兵吾を見る勇也
勇也「俺のドコが探偵さんのアンテナにかかったんですか?俺は見ての通り、どこにでもいる普通の無職の男ですよ?」
兵吾「だからだよ」
飄々とした態度のまま真っ直ぐに勇也を見詰める兵吾
合わさった視線を外せずに直視してしまう。
突然兵吾の雰囲気が変わったためだ。
兵吾「探偵はね、目立っちゃいけないんだ。相手に警戒されてもダメ。俗世に紛れ、一般の中に埋没して、己という存在を消さなければならない。これは誰もができる訳じゃない。素質がある者にしかできない所業なんだ。——否、業と云っても良い。それ位貴重な者なんだ」
勇也「それで……俺にはその素質がある、っと探偵さんは——」
兵吾「高野だ。高野って呼んでくれ、木嶋勇也君」
勇也「……高野さ——って、何で俺の名前を知ってるんですか?!」
驚きの表情を見せる勇也
余裕の表情を見せる兵吾
兵吾「探偵だからさ、木嶋君」
勇也「本物……なんだな……?」
兵吾「さっきから、何度も云ってるだろう? 僕は探偵さ」
目を瞑り、腕を組んで考える勇也
笑を浮かべたまま勇也を眺める兵吾
小さく頷き、何かを決心してゆっくりと瞼開ける勇也
勇也「仕事の内容や待遇とかはどんな感じなのですか?」
笑を崩さずに両の手を広げる兵吾
兵吾「今この場で詳細を云う事はできないけど、ここにあるどんな仕事よりも報酬面で上であることを約束するよ」
勇也「期間は?」
兵吾「1年……っと、コレ以上はこの場で伝える事はできない。探偵の仕事は守秘しなければいけないモノが多いからね(片目を瞑る)。詳しい事は、木嶋君に渡したその名刺の裏の場所に明日きてくれた時に伝えるよ」
踵を返して職業安定所の出口に向かう兵吾
兵吾「それじゃ、明日、その場所で待ってるよ」
勇也「ちょっ! ……って、もう行っちまったか……しかたない、明日、この場所に行くか……」
不安な表情で名刺の裏の地図を確認する勇也
勇也(この場所なら、俺の家からそんなに離れていないな……)
名刺を手帳に挟んで鞄にしまい、職業安定所を後にする勇也
○場面:(暗転) ⇒ 自宅最寄り駅(朝)
自宅の最寄り駅まで戻ってきて、一息つこうと喫茶店「フラワーガーデン」に向かう勇也。コンコースの落下防止バーに肘を乗せて下を眺めている制服姿の少女(10代)が勇也の視界に入る
勇也(こんな時間に制服姿なんて、目立ってしかないのだから、サボるなら私服になれば良いのにな……)
美波のことを不安げに見つめながら「フラワーガーデン」に歩みを進める勇也
美波に近寄る男①と男②
勇也(あ〜、やっぱり、そうなるよな〜……)
男達を一瞥だけして直ぐに視線を戻す美波
構わず話しかける男達
男1「あれ? 俺達、無視されちゃってる? ちゃってる??」
男2「マジかよ〜、寂しくて、僕、困っちゃうぅぅ〜」
下卑た笑を顔に貼り付けて美波に近寄る男達
逡巡するが、意を決して美波に駆け寄る勇也
男1「ほら、いつまでもそっち向いてないで、こっちに——」
勇也「す、すまん、待たせた!」
息を切らせながら声を張り上げて美波の肩に手を置く勇也
美波と自分たちの間に勇也が現れて固まる男達
驚きの表情のまま固まっていた美波だが、勇也の行動を読み取る
美波「も〜、お・そ・い。待ちくたびれた〜」
勇也「すまん、すまん。携帯の目覚ましをいつも起きる時間にしていたから、ちょっと遅くなっちまった」
美波「デートの時は気を付けてって、いつも云ってるよね?」
勇也「あ〜……昨日は寝落ちしたから、忘れちまった……」
美波「最低……まっ、いいや。お昼、奢りね」
勇也「まぁ、それ位なら、良いけど——」
美波「はい、それじゃ、決まり! サッサと行くよ」
勇也の手を取り先を歩く美波
勇也と美波を呆然と眺める男1と男2
男1「………………んだよ、男連れかよ……あ〜あ、シラケる〜」
男2「ツマンネェ〜、次いこ、次」
文句を口にしながら遠ざかる男達
男達が視界から完璧に見えなくなった所で手を放す勇也と美波
振り返る美波
美波「……取り敢えず、お礼だけは云っておくね。ありがとう、お人好しさん」
勇也「どう致しまして。それなら、お人好しついでに、もう1つだけ良いか?」
美波「いいよ、なに?」
勇也「今度サボる時は、私服にしな。制服だと目立ち過ぎる」
美波「へぇ〜、サボることには何も云わないんだ?」
勇也「キミの態度からして、今回が初めてって訳じゃないだろうし、俺が何を云っても無駄だと思うからね」
美波「お兄さん、解ってるね〜」
勇也「こう見えても、キミとは余り歳が離れていないと思うからね。ただ、まぁ、キミは女の子なんだし、余り目立つと、後々面倒な事に巻き込まれる危険があるから、気を付けな」
美波「う〜ん……解った、記憶の片隅にでも置いておくよ」
勇也「そうしておいてくれ、それじゃな」
片手を軽く上げてその場を去る勇也
同じように片手を上げて応える美波
勇也が見えなくなった所で手を下ろしてため息をついて俯く美波
美波「別に……わたしが何かに巻き込まれても、困る人なんか居る訳ないじゃん……」
美波と別れて目的地である「フラワーガーデン」に着いた勇也
○場面:最寄り駅 ⇒ フラワーガーデン(お昼)
ドアベルを鳴らす
カウンターを拭いていた花園一穂(21)が顔を上げる
一穂「いらっしゃい。いつもの席、空いてるよ」
勇也「どうも」
お店の出入り口から一番奥のカウンター席に腰を下ろす勇也
お店の名前が書かれたコースターとお冷を持ってくる一穂
一穂「それで、今日はどうだった? 注文はいつもの?」
勇也「変な男に会った以外は、いつも通りだったよ。お願い」
一穂「変な男? うん、了解」
眉根を寄せて訝しげな表情をしながら調理の準備を進める一穂
勇也「怪しいって言葉が人の形を持って服を着たらこんな感じだろうな、っと思える男」
一穂「そりゃ確かに変な男だ」
勇也「しかも、探偵をしていると云っていた」
一穂「うっわぁ〜、ダブルスコアじゃん」
勇也「更に、俺に声を掛けた理由が、自分の求めている条件に合致していたかららしい」
一穂「最悪だね。そんな変人が探す条件なんて、ロクでもない筈だから、もう関わっちゃダメだよ?」
勇也「いや、まぁ、そうなんだけど……どうも報酬が良いらしいんだ……」
調理の手は休めずに肩を落としてため息をはく一穂
一穂「あ〜、もう〜……コラッ! 木嶋君、そうやって報酬につられて、前の会社でどうなったのか、忘れた訳じゃないでしょ?」
勇也「そ、そうだけど……」
一穂「けども、でももダメ。タダでさえ胡散臭い探偵って仕事のお手伝いなのに、
報酬も良いなんて、危ない仕事確定だよ。お姉さん、それはオススメできないな〜」
勇也「……う〜ん……」
完成した料理を更に盛り付け、勇也の前に置く一穂
一穂「世の中そんなに甘くないよ。堅実が一番。それに、もう、どうにもならなくなったら、お姉さんに云いなさい。余裕はないけど、木嶋君1人位雇ってあげるからさ」
勇也「あはは〜、ありがとう、花さん。気持ちだけ受け取っておくよ」
一穂「そう? わたしは結構良いと思うんだけどな〜……まぁ、候補の1つとして覚えておいてちょうだい」
勇也「了解」
会話を終えて料理を食べ始める勇也
お客がちょうど来たので対応する一穂
勇也(花さんには悪いけど、話を聞いてみるだけは聞いてみるさ。もし花さんの云う通り、危なかったら、引き受けなければ良いだけだしね)
食事を終えて会計に向かう勇也
レジにて対応する一穂
勇也「ご馳走様」
一穂「お粗末さまでした。でも、本当、ウチでの考えといてね?」
勇也「解ったよ、その時になったら、お願いする」
ドアベルを鳴らし、店を後にする勇也
○場面:フラワーガーデン ⇒ 路地 ⇒ 自宅前 ⇒ 勇也の部屋(夕方)
洗面台に移動して手洗いうがいをして鞄をベッドの上に下ろす。
ベッドに腰を下ろして鞄の中から名刺を取り出して内容を確認する勇也
勇也(明日の待ち合わせ場所は、最寄り駅から少し離れた開けた場所か……時間は12時か……まっ、花さんの云っていた通り、余りにも変な内容だったら、引き受けずに断れば良いだけだし、気軽にいくか)
名刺を鞄に戻してリモコンを操作してテレビの電源を入れる勇也
画面にニュースの映像が流れる
キャスター「新興宗教、天神真理教が起こした街頭毒ガス事件から、今日で早くも5年が経ちます。死者8人、重軽傷者3000人にもなる重大事件でした。当事件から天神真理教に警察の一斉強制操作が入り、教祖の門倉一徳死刑囚を逮捕しました。先月、門倉死刑囚の控訴が棄却され、死刑が確定しましたが、刑執行はされておりません。教団幹部も含めると、教団関係者の死刑確定囚は、15人にものぼります」
勇也(そういえば、天神真理教事件からもう5年も経つのか……当時は同じ日本国内なのに何か映画を見ているような感じだったもんな。どのチャンネルにしても、全て天神真理教絡みで、酷いものだった)
立ち上がり、PCデスクに向かい、PCを起動して個人で受けてる仕事の確認をする勇也
勇也「余り良いのは来ていないな……流石にもう一回PVを作るのはキツイし、アレ、報酬と仕事量が合っていないからな〜。……ん? このメールは……?」
スパムとは違う知らないアドレスからのメールに疑問を感じる勇也
ウィルスチェックを掛けてみるが問題ないので、中を確認する勇也
Date:20YY.MM.DD hh:mm:ss
From:xxxxxx@mail.co.jp
Subject:よろしくね〜。
本文:高野だよ〜。いや〜、木嶋君はなかなか面白いこともしているんだな〜。個人請負は良いけど、明日、遅れないようにね〜。
内容を確認して肩を落とす勇也
勇也「お、おいおい、探偵ってこんなことも守備範囲内なのか?ってか、朝も思ったけど、俺の情報をどっから手に入れてるんだよ。マジで簡単に話を聞くって云うべきじゃなかったな……」
頭痛を覚えて頭に片手を当てる勇也
画面を凝視して考え込む勇也
勇也(拙いな……話だけって感じにして、逃げようと思っていたけど、このメールから考えるに、俺の住所もバレている筈だ。——アレ? これっていろいろな意味で詰んでないか?)
肩肘をついてため息をこぼす勇也
暫く俯いていたが、頭を左右に振って気持ちを切り替えて画面を見る勇也
勇也(いや、もうこうなったら、覚悟を決めるしかないな。あんだけヒドイ会社にいたんだ。アレ以上ってのは、そうそう無い筈だ)
○場面{回想}:入社初日
神奈川の片田舎から東京に就職するため
上京し就職先の会社の人事の人に案内され
会社に行く勇也
勇也「遂に入社だ。やっとあの親から解き放たれる。」
期待に旨を高鳴らせる勇也
社長「お〜君が今年の新入社員か!」
人事「はい社長!素晴らしい素質の持ち主です!」
社長「お〜君が言うなら間違いないな!期待しているぞ!」
勇也「はい!全力で取り組ませて頂きます!」
社長「はっはは!元気がいいな!うむ。では君、早速彼に例の案件を!」
人事「わかりました社長!では、早速で悪いけど勇也くん」
勇也「はい!」
人事「現在O社とC社のサーバーに問題が起きているから、すぐに現場に向かってくれ。」
勇也「はい!・・・え?」
人事「はい。コレが地図だから。あ、ちなみに交通費はうち経費で落ちないから!」
勇也「あ、あの・・・」
人事「よろしく〜」
今思い出しても悪寒がする。アレは本当に悪夢だと思いそっと胸にしまっておきたい、若しくは消し去りたい思い出だ。その後、クライアントに常駐スタッフとしてお願いされ約半年間家に帰る事が叶わなくなると誰が思うだろう。ましてや、高校卒業したての新社会人だ。新社会人と言っても、所詮はまだだだ、子供だ。想像出来るわけが無い。
○場面{回想終了}:勇也の部屋
勇也「アレより、マシな筈だ。なら、良いじゃないか。腹を決めよう。」
勇也は軽い気持ちで、兵吾と会う事をその時は考えていた。
その選択で人生が大きく変わるという事を、勇也はまだ知らない。