第五話 日常と異変
「えっ!!・・・・・今・・・何て言った・・・・?」
「比良沢に告白された」
「・・・・・ホントに?」
「ホントに」
今は晩飯中
だが、いつもならすごい勢いで食べていく稀沙奈は俺の話を聞いて箸が止まっている。
顔は驚きの表情のまま固まっている。
やっぱりありえないよな・・・・
「すごい!!結局、比良沢さんが勝ったんだ!」
「・・・・勝った?」
「な、何でもないよ!そんなことより返事はしたの?」
「してない」
そんなことよりさっきの話のほうが気になってるんだが?
「なんで!?」
「する前に比良沢が帰ったんだよ」
「あちゃー!比良沢さん逃げちゃったのか」
まあ、帰らなくても返事が出来たか怪しいけどな
っていうかさっきからの話聞いてると・・・・
「お前何か知ってるだろ?」
「へ?な、何のことか分かりませんなぁ・・・」
そう言いながら目線を逸らす。
・・・・コイツ分かりやすいな・・・
「言わなかったらこれからの飯は自分で作らせるぞ」
「それは無理!!」
俺の普通は当たり前の脅しに観念した稀沙奈は渋々話し始める。
「実は・・・・アニキのこと好きなのって比良沢さんだけじゃないの」
呼び方まだ決まってなかったのかよ・・・
「でも、俺ってクラスの中で一番目立たないような奴・・・」
「そこから間違えてるの」
どういうことだ?
いまいち分かっていない俺に稀沙奈が話したことは俺が今まで過ごしてきた学校生活からは根本的に違う内容だった。
「クラスのみんなは兄さんを拒絶してるんでも怖がってるんでもないの。それどころか美月はクラスで一番の人気者なんだよ?」
「・・・・・・意味が分からない」
「だけど、みんな兄ちゃんと話すのが緊張して出来ないだけなの」
「・・・・・・」
「その証拠に今まであんたは虐めなんて受けたことないでしょ?」
それは確かに不思議に思っていたことだ。
影が薄い奴なんか虐めの格好の的なのにだれもちょっかいを出してこなかった。
「クラスの三大イケメンって水野君と白鳥君とあなたなんだよ?」
・・・・・信じられるか
「それに、バレンタインデーのチョコレートもあげたいっていう人が多すぎてじゃんけんで決めたし」
・・・・・作り話だ
「今回の比良沢さんだって告白する人を決めるじゃんけんで勝ったから出来たんだよ?」
「それをさっき言ってたのか?」
「まあね・・・・でも、みんなに怒られちゃうかも」
「なんでだよ」
「これって秘密にしてって言われてるんだよね・・・・」
秘密・・・・か・・・
その秘密で俺はこれまで・・・・・
思わず大きなため息をつく
「・・・・大丈夫、そんなこと知ったって何にも変わんねぇよ。今までと同じように過ごすだけだ。」
稀沙奈はまだ悩んでいたが心配要らない
俺にとっての毎日は変わらない
俺は唯、日常を過ごすだけだ。
「おい、由香利!」
「・・・・・・」
「お前・・・・好きな男が出来たんだってな」
「ッ!!」
何でコイツがそのことを知ってるの?
「誰なんだよ」
「・・・・・・」
言える訳ないじゃない
鬼城くんのことを知られたら・・・・どうなるか
「言わない・・・か・・・ギヒッ!!」
気味の悪い笑みを浮かべる『悪魔』
「お前が言わなくてもそのうち分かるんだ。」
「・・・・・・」
祈った
美月くんが無事でいられるように
この『悪魔』から逃れられるように
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