第四話 日常と放課後
人の運命は産まれたときから決まっている。
そんなことを聞いたことはないだろうか?
誰と結婚するとかいつ死ぬとかは産まれたときから全部決まったことで抗うことは出来ない
そういうことらしいが俺は違うと思う。
人はいつでも自分の頭で考えて動いているというのにそれは元から決まっていたなんて事があるはずがない
だからこそ今俺は考える。
今の状況をどうすればいいのかを・・・・
「・・・・・・ひと目見たときからずっと好きでした。付き合ってくれませんか!!」
「・・・・・・・え?」
今日、俺の日常が崩れるかもしれない
1時間前
授業が全て終わり、比較的静かになった校舎
だが、生徒指導室からは怒鳴り声が廊下へ響いていた。
「大体、お前は何に対しても緊張感というものが足りんのだ!!」
「すいません」
「何度も遅刻はするし、提出物はほとんど未提出じゃないか!!」
「すいません」
「何のために高校来ているんだ?勉強のためだろうが!!」
「すいません」
「さっきからすいませんすいませんってそれだけで済んだら警察なんか要らないんだよ!!」
「先生、それはちがうと思いますが」
「うるさい!偉そうな口を叩くのは成績を上げてからにしろ!」
「はい、成績を上げたら先生を馬鹿にします」
「・・・・反省してないだろ」
「してますよ?これだけ長い間説教をされ続けたらさすがに先生の顔も鬱陶しくなりましたけど」
「・・・・・もういい、お前といると頭が痛くなる」
「失礼しました」
二時間という思ったよりも長い説教を終えて生徒指導室を出る。
早く帰って晩飯の支度するかな
高校生とは思えないような主婦(?)的な考えをしながら靴箱へと向かう
稀沙奈はまだ校舎の中にいるらしい
稀沙奈は部活動に所属していない
だが、いろんな部を回っては一日だけ体験入部をするというのを日課にしている。
まあ、あいつは何をやっても異常だから部員の自信を失わせているだけかもしれないが
「ん?」
自分の靴箱に違和感がある。
というか明らかにおかしい
うちの学校の靴箱って紙の扉とか付いてたか?
いや、付いてるわけないよな
大体これルーズリーフで作ってあるし・・・・・いたずらか?
紙を剥がすと俺の靴の上に手紙が置いてあった。
「・・・・・・・」
手紙の内容は
『2年1組の鬼城くんへ
放課後体育館の裏で待ってます。必ず来てくださいね
来てくれるまでずっと待ってます。
あなたを思うわたしより 』
・・・・・・これはやっぱり行ったほうがいいのか?
いや、でも行けば何かめんどくさいことになりそうだしな・・・・
・・・・・・・・・・・・・行くだけ行くか!
もし、これがいたずらだとしてもそれはそれでいい
それで全部終わり
帰ってさっさと晩飯作るだけだ。
っていうかこれが本当だとしたらかなり待たせてるよな?
そう思いながらもいつも通り特に急がずに体育館裏へと向かった。
体育館裏
・・・・・・・いた。
体育館裏の木の下で本を読んでいる。
遠くからでも本を読み終わりかけていることが分かった。
顔に見覚えがある。
確か隣のクラスの奴で名前は確か比良沢由香利だったはず。
長い髪を後ろで纏め、いつも堂々としている。生徒会にも入ってたはずだ。
隣のクラスのトップともいえる奴だがそんな奴がなんで俺を呼び出したんだ?
説教・・・・なわけないか
でも、そうなると分からない隣のクラスでも俺のことを知ってる奴は少ない友人だけのはずだが?
俺の名前を知っていたというだけでも驚きだ。
とにかくこれ以上待たせるわけにはいかない
比良沢のいる木へ向かって歩き出す・・・・が
こけた
木の根っこに足を取られて見事にこけた。
その音で俺に気がついたのか比良沢は本を仕舞い走って近づいてくる。
「大丈夫?」
「まあ、何とか」
ホントは足が結構痛いけど骨は折れてないだろう
ちょっとひねったくらいだ。
そんなことよりも
「っで俺になんか用事?」
「ッ!!」
俺の言葉に顔を赤らめる比良沢
あれ?俺、変な事言ったか?
「え・・・えっと・・・用事って言うほどでもないんだけど・・・・・」
「じゃあ何?」
さっきから様子がおかしい
いつもみたいな堂々とした感じがないし
俯いてばっかりだし・・・・なんで?
「・・・・・落ち着いて聞いてね」
「ん?ああ・・・分かった」
何度も深呼吸をしている。
体調でも悪いのか?
「・・・・・・ひと目見たときからずっと好きでした。付き合ってくれませんか!!」
「・・・・・・・え?」
・・・・・これは現実か?
これって告白されてるんだよな?
なんで比良沢が俺に告白してるんだ?
まったく目立たない俺なんかに?
ありえないだろ
比良沢は無言でいる俺に顔を真っ赤にしたままさらに続ける。
「へ、返事はいつでもいいから・・・・考えといて・・・それじゃあ・・待ってるから」
そういうと比良沢は木の下のカバンを持って走って帰っていった。
俺はまだ状況を把握しきれていないが一つだけ分かっていることがある。
それは俺は何となくで日常を過ごせなくなったということだ。
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