第一話 日常と非日常
日常とは何か?
いつも通りのことがいつも通りに続くことそれが日常というなら
少年・・・・鬼城美月の毎日は日常とは呼べない
美月は普通の毎日を過ごしていると思っているかもしれないがそれは日常ではない
普通からすれば非日常にしかならない
たとえそれが身近にいる異常な存在のせいだとしてもその非日常を過ごすのは美月自身
他の誰でも彼の変わりは出来ないだろう
そう考えれば彼の存在もまた・・・・・・・
今日も美月は非日常な日常を過ごす。
普通で普通な街の日常
よっぽどのことが無い限りその普通が異常になることは無い
だがこの日、大きな町からすれば小さな
しかし、小さな存在である人からすれば大きな異常がおこる。
パトカーのサイレンが鳴り響く
数台のパトカーと十数人の警官が取り囲む一つのスーパー
その中では非日常的なことが起こっていた。
「チッ!出入り口を塞がれた」
「おいおい、どうすんだよ。やばくないかこれ?」
顔に覆面を被り上下真っ黒な服を着た男達が騒ぎ始めた。
表情は分からないが声からは不安が伝わってくる。
そんな中、リーダーらしい男が一喝する。
「てめぇら静かにしろ!こっちには人質がいるんだぞ」
リーダーの言葉に勇気付けられたのか男達の声が静かになる。
そして、完全に無音になったとき、男達とはまったく別の方向から声が上がった。
「すいませーん、この縄解いてもらってもいいですか?」
男達が声の方向へ顔を向けると声の主は制服を着た高校生くらいの少女だった。
ちなみに高校生と分かるのはその制服が町では有名な高校の物だったからだ。
ただし、有名といっても学業や部活動が有名なのではないが・・・・・
「ふざけるな、お前は自分の状況が分かっているのか?」
「し・り・ま・せ・ん。ていうか知りたくもないしね」
「生意気なガキが・・・・・・お前、なかなかかわいいな」
「はぁ?」
確かに少女は美人・・・・というよりかわいいという部類に入る顔立ちだがこの状況でそう思える男
普通じゃない
まあ、普通の男なら仲間と・・・・強盗などしないと思うが
「なあ、こいつ連れていっちゃだめかな?」
男が仲間におかしなことを聞く
強盗が人を連れていても邪魔になるだけだというのに
男の問いに対しての仲間の答えはもちろん・・・・
「いいんじゃない?」
・・・・・・・・仲間も普通じゃなかったようだ。
だが、少女を連れて行かれるのはまずい
・・・・この言葉遣い、やりづらいな
やっぱいつも通りが一番か・・・・
「おい、お前こっち来い!」
「ヤダ!」
「いいから来い!」
少女・・・・この呼び方もいまいちだな・・・・・・
鬼城稀沙奈は男に抵抗するがその抵抗はあまりにも貧弱だ。
そのうち疲れて男に連れて行かれ
「おい、そこのお前何やってる」
・・・・やばいかも
「い、いやぁ別に」
「今何か隠しただろ・・・・出せ」
出せって言われて出す奴はいない
無視するか
「・・・聞こえなかったのか?出せって言ったんだよ!」
ぐっ!こういうのを胸倉をつかまれるとか言うんだったか?
殴る気満々でいるなコイツ
「出せって言ってんだろうが!!」
怒鳴るなよ
たかがこんなことで
はぁ~しょうがないな
たかがこんな強盗くらいで時間つぶすのも面倒だ。
「もういいか・・・・・お前等に三つだけ言っとく」
「あぁ?」
強盗のほとんどの奴がこっちを見る
そりゃ高校生の俺にお前呼ばわりされれば普通怒るか
「一つ目、お前等は敵に回してはいけない奴を敵に回した」
俺はそう言いながら『こんなときのために持っておいた』ポケットナイフで縄を切る。
強盗たちは一瞬怯むがすぐに立ち直りそれぞれの拳銃やらナイフやらを構える
意味ないのに
「二つ目、それは俺のことではない」
「お前じゃなかったら誰だって言うんだ」
俺の胸倉を掴んで持ち上げている男が聞いてくる。
はぁ~勘違いしてるなコイツ
少し前にいただろうが
空気も読まずに助けも求めないような奴が
「三つ目・・・・・稀沙奈は半端ないぞ?」
俺がそう言った次の瞬間
俺の目の前にいる男が吹っ飛ばされた。
仲間達は状況を把握できていない
「・・・・スマン、助かった」
「お兄ちゃんはホントに後先考えないよね」
俺が話しているのはさっき連れて行かれそうになっていた奴
俺の双子の妹であり男を吹っ飛ばした張本人稀沙奈だ。
俺達はこのスーパーにただ買い物に行くっていう日常を過ごそうとしていただけだったんだが・・・・
強盗に巻き込まれて今に至るというわけだ。
「お前も成長したな強盗をまったく怖がらずに蹴り飛ばせるようになったか」
「もう慣れたよ。これで丁度三十回目だもん」
周りの強盗や人質の人にはわからないかもしれないが俺達からすれば強盗騒ぎなんて特別なことじゃない
そんなことよりも俺からすれば稀沙奈のほうがよっぽど異常に思える。
「じゃあ、これが終わったら帰って三十回記念を祝うとするか」
「あ!それいい!あたしハンバーグがいい」
「またか?こないだもハンバーグじゃなかったか?」
「あれ?そうだったっけ?忘れちゃった」
「しょうがないな。じゃあお前も手伝えよ?」
「はーい!」
「てめぇら何ごちゃごちゃ言ってんだ!」
いつの間にか全員こっち向いてたんだ
あまりにも普通すぎて気づかなかった。
「稀沙奈・・・今日は早く帰りたいから一分でいけるか?」
「そんなにいらないって。そうだなぁ・・・・・四十秒くらいで終わるよ」
「じゃあ、頼んだ」
「はーい」
稀沙奈が男達の方へと駆け出す。
これを見るのも三十回目だな
そして、合計三十回目となる強盗対少女の戦いというより一方的なリンチが始まった。
当然、リンチされるのは強盗のほうだが・・・・
二十五秒後
警察が取り囲むスーパーのドアから出てきたのは
気絶した十数人の強盗たちと無傷で買い物袋を下げた双子の兄妹だった。
人知らずです。
他の小説が完結していないのに始めてしまいましたがそちら共々よろしくお願いします。