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序章 第二十一話 聖女の初仕事は────ジャンピングダブルニーキック

「あたし、あんたの気持ち悪い逆ハーなんかお断りよ」


「ああっ? 何が気持ち悪い逆ハーなんだよ。相変わらず頭が悪いなお前は」


 咲夜と信吾が口喧嘩を始めた。魔物に囲まれた戦場で、何してんの二人とも。咲夜は信吾が好きだって言うわりに喧嘩が多かったんだよね。


「あんたの嗜好にあたしは合わないって証拠があるわ。聖奈、見せてやりなさい」


 まともにやり合っても、今の皇子達は倒せない。そのための秘策はカルミアから聞いていた。咲夜はうまく会話で誘導してくれた。


「えっ? な、何を」


 いかにも戸惑った風を装う。いまさら私には用のない皇子(信吾)が興味を惹かれる。皇女(七菜子)は訝しんでおり、意外な事に呪術師ホロンが反応した。


「その付いてる部分よ!」


 咲夜は私の後ろに回り込み、ピンクの制服のスカートを黒パンツごと脱がした。


「なっ······」


 私の股の間にぶら下がるシンボルに、皇子(信吾)と呪術師ホロンが驚愕していた。皇女(七菜子)まで、少し驚いて顔を赤らめていた。


「他人の趣味をどうこう言うつもりはないけどさ、あたしは逆ハーなんてお断りよ」


 咲夜はそういうなり私の股の間のシンボルの下から、魔銃で信吾に撃ち込んだ。


 ────バンバンッバンバンッ。


 咲夜が連発で撃てたのは四回。おじじ達の指示で浄化弾にしていた。


「うぐぉぉ!?」


 私の股間に目を見開いていた皇子(信吾)は不意を突かれ被弾した。ただ魔法による防御結界は彼らも使っていたみたいで、ダメージは期待ほどではなかった。


 しかしそれでも良かった。弾丸よりも速い矢が飛んできて、薄まった結界を突き破り、皇子の腕を貫いた。

 

「いまよ、聖奈」


「えっ、な、何?!」


 リモニカさん凄っ、て感心していた所で咲夜が私を持ち上げた。えっ、私は二度目の合図、何も聞いてないよ?


 咲夜は私を抱えて皇子(信吾)に向けてぶん投げた。私も咲夜に憑くおじじ達も、魔銃の追撃かと思っていたからビックリした。


「────ハァぁぁ!?」


 下半身丸出しの私は、弓矢を放った主を見る皇子(信吾)に向かって飛んでゆく。腕に刺さる矢を引き抜く皇子は私を避けられなかった。私の両膝が綺麗にその頬に見事にぶつかり、ぶっ倒す。


 浄化を纏った私のジャンピングダブルニー……正確にはスローイングダブルニーキックは、防御力の高い皇子(信吾)をダウンさせる事に成功した。


 咲夜のどこにそんな力があったのか────あっ、装備更新した時か。両親譲りの馬鹿力が戻るとかなんとか言っていたやつだ。


「戻るよ!」


 咲夜は私を投げると同時に駆け寄り、スカートとパンツを持った手で私を抱える。そして驚きっ放しの皇女(七菜子)の手を取って、走り去った。


「ちょっ……貴女、私はいま敵なのよ」


 皇女はそう言いながらも、抵抗もせず咲夜に手を取られついてゆく。まったく異世界の他人のくせに、皇女の嬉しそうな顔がうざい。この戦いの決着がついたら、私と七菜子との戦いが始まるだろうな。


 思ったよりダメージを受けたせいか、呪術師ホロンが慌てて皇子の介護をしていた。咲夜は追撃を無視して戦車のある所まで逃げ込む。あれくらいでは倒せないとわかっていたからだ。


「カルミアならなんとかしてくれる」


 咲夜がそう呟くのが聞こえた。何だかんだ咲夜もカルミア達を気に入っていたからね。カルミア達も戦車は仲間に任せ、私達を迎えに出て来てくれた。


「聖奈、七菜子と先に行って!」


 咲夜は私を降ろすとスカートとパンツを渡して走らせる。回復した皇子が、怒りながら迫って来たのだ。咲夜は足を止めて、一人で迎撃に向かう。


「────無理だよ咲夜ぁ」


 私は怖くなって叫んだ。皇子もさっきまでと雰囲気が違う。私との約束通り咲夜は信吾をぶん殴る機会を与えてくれた。殴るというか膝蹴りだったけど、怒り狂うくらいダメージはあったみたいだ。


 私の身体はカルミアの造った聖霊人形(ニューマ・ノイド)だ。聖女らしく全身に浄化の力が駆け巡っていた。だからかなり痛かったみたいね。


 皇子は信吾単体の時よりも酷く傲慢になっているように見えた。女と見れば見境なく犯そうとするし、咲夜に対しても手に入らないなら殺して凌辱の限りを尽くしてやると嘲笑った。


「咲夜……」


 ザラつくような殺気。私も咲夜の身を案じながら、自分が受けた覚えのある殺意と戦う。


 重たい皇子の槍の柄で叩かれ、咲夜が地に膝をつく。ニヤつく皇子はその隙を逃さず、咲夜を蹴り飛ばそうとしたが、すぐに飛び退いた。


 ────ビュンッと絶妙なタイミングでリモニカさんの矢が皇子のいた位置に刺さる。咲夜の隙を守るタイミングの支援に、皇子は舌打ちをした。


「お前ら、あの弓使いを殺せ!」


 一度ならず二度も攻撃を受けた皇子は、リモニカさんを警戒していた。矢は避けられても、咲夜に対しての集中力が削がれ鈍る。


 咲夜はその隙を利用して、突撃した。なんか咲夜の身体が輝くようだ。


「あれ、なんか速いし────身体の動きが軽い」


 咲夜も戸惑っているみたい。咲夜のとっておきの切り札は、まさかのおじじ達だた。デカゴブがどうこう呟いているけれど、動きが格段に良くなって強い。


 意表を付かれた皇子(信吾)が、今度は咲夜の攻撃で膝をついた。


「この俺が……二度も」


 皇子と信吾が激しい憎悪と敵意を咲夜と私に向けて来た。咲夜のおかげで気持ちが楽になった気がする。


 私は急いで黒いパンツを履き直す。それを見た皇子(信吾)が許さんと吠える。


「聖奈にパンツ履かせたのを許さないとか、どういう変態よ」


 ちょうどその時、皇女(七菜子)を受け取りに来たカルミアが容赦のない口撃で皇子を刺す。


「ち、違っう!!……ぐっ」


 咲夜が再び見えた大きなチャンスを逃さず、皇子(信吾)の急所に前蹴りをぶち込んだ。


「グギャァ゙────」


 悶絶し声にならない声をあげて転がる皇子。なんだかさらにスッとした気分になる。


「あたしらの黒歴史になりそうだから、ここで仕留めておこう」


 咲夜が優位なうちにトドメをさしに動く。パワーアップした咲夜と、リモニカさんから援護があっても殺意剥き出しな皇子の方が強い感じがするからだ。



 ────追撃しようと咲夜が構えた所に、パラパラと砂粒が降って来た。


 そして砂粒から小石、岩が雨のように落ちて来る。私達はまとまって退避行動に移る。


 広い空間で天井もないかと思ったのに、屋根が崩れるように天井が割れ、おっきな黒い生き物が墜ちて来た。



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