一夜
進はドーンをガムテープで口と手にグルグル巻きにして動けなくし、夜が明けた。
「ん、はぁ〜、朝か……。ドーン? あ、そっか魔法使えないように口塞いだんだった」
ビリビリバリ! ガムテープを剥がして気づく。この勇者……。
「漏らしてしまったではないかー!」クセー!
「ごめん、そこまで考えてなかった。それより、魔法の件だけど、拳銃を奪われたってのは無かった事にできる?」
二日前の話である。
「できなくはないが、そーだな、もう少し情報が欲しいな。そもそも【ケンジュウ】とはなんなんだ?」
当然の話である拳銃を知らない者に拳銃に関する何かはできるはずもない。
「これだよ」ガチャ。黒光りする奇妙な造形、穴が前にも後ろにもある。
「そーか! 槍をセットする補助具だろ!」
「違うと分らせるには撃つしかないのかなぁ」
思案する結果。
「そういえばドーンは盾持ってないけど、防御はその鎧だけ?」
今明かされる事実。
「そうだ! この剣を使うのに盾は邪魔だからな!」
「じゃあちょっと鎧脱いで」これはもしや。
「ああ、いいが」ぬぎぬぎ。
「これでどうするんだ?」
「この拳銃の威力を見せてあげる」
やはり……。進は窓の方へ鎧を引きずり撃つ方向に誰もいない事を確認。そして!
ばきゅーん! 拳銃を撃った!!
「さ、ドーン、今の撃ったの無かった事にして! 早く!」
「す、すごいな! これ、魔王倒せるのでは?」
「いいから! 早く!」
確かに野次馬が集まりそうだ。特に母。
「わかった。ドーン! 今の無し!」
すると、鎧の穴は塞がり弾も戻った。音も無かった事になる。
「なあ、そういえばここの世界で魔法使えるのっておかしくね?」たしかに。
「なあに、ここにも魔力の泉があるんだろう」
「もしかして、俺も魔法使えたり?」
「魔力の泉って要するにMPの素、魔法の素だよね? で、あっちでは自分の名前を叫ぶと発動する」
「そうだ」これを聞いたら試したくなるのは必須!
「進! 学校なくなれ!」
………。
「ちょっと見てくる!」
数分後。
「学校あったし! なんだよ!?」
「うーん、この世界は【職業】が魔法使いじゃないといけないのかも」
よく聞くゲームな設定。
「それって小学生じゃダメなの?」
「ははは、ダメに決まっているさ」
ちょっとムカつくがドーンは勇者でした。そういえば。
「でも、この世界で魔法使いと言えばアマゾンの奥地なんとか族みたいな未開の地にしかいないな」
シャーマンとかの事を言おうとしてる進。
「職業は神殿で変えれるぞ? 俺はずっと勇者だが」
「あのなぁ、それはそっちの世界でこっちの世界の神殿なんて……あれ? なんか忘れてない俺達」
「さあ」
「そうだ! 二日前の出来事なかった事にしないと!!!」
それそれぇ〜!
「ドーン、覚えているだろ? おまわりさんの事! あれ無かったことにして!」
「わかった! ドーン! おさわりマンのことなくなれ!」
「ちょっと! 【おさわりマン】じゃなくて【おまわりさん】! これ、どうなるんだ!」
と、進が戦々恐々としていると世の中は大きく動いた。【触る】痴漢がいなくなったのだ。
これはこれでいいのかな?完