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移ろいゆく日常

作者: tomoyuki gomi

お題「犯罪者」「モンスターハンター」「不正」「ほうじ茶」「同じセリフを3回」

※この小説はフィクションです、実在する人物・場所とは一切関係ありません

________________________

これは、どこかにいそうで、それでいて個性的な、とある大学生たちの物語………。


「ふわぁぁ………眠い」

とても眠たいが、講義があるから起きないと!という使命感からどうにか目を覚ました俺、(あかつき) 当真(とうま)。住んでいる寮に備え付けてある洗面台で軽く身なりを整える。

「うーん……やっぱり相談すべきだよな……」

考えていたのは、2年前に両親が起こした無差別殺人事件、その影響で「犯罪者の息子」というイメージが染み付いて、色んな誹謗中傷を受けた。もちろん傷つかないはずもなく、今でもこうして夢に見る。

「まぁ……考えても仕方ないか」

そう呟き、テレビの電源を付ける。流れていたニュースを見てると、速報が流れてきた。

「あ、ようやく捕まったのか」

流れてきたのは、留置されている犯罪者を賄賂で不正に釈放していたとある政治家が捕まったというニュースだった。両親の一件以来、警察の調査なんかにも絡んでいた身としてはこういったのが捕まるというのは世間的にも自分の精神的にもありがたいと思っている、あくまで個人的見解だけど。

そんなふうに考えながら朝ごはんと着替えを済ませて自分の部屋を出る。ここに来て思ったのは、寮というのが「自分と同じ学校に行く人だけで構成されたアパート」だということ、偏見かもしれないけど実際そう思う。


「ふぅ……いい天気だ」

そんなふうに呟き、周りの風景を目で見て楽しみながら大学に向かう、あの寮から大学まではそう遠くなく、かといって近くもない絶妙な位置にあるため、歩きながら風景を楽しむのにはうってつけだ。

「おはようございます」

「あ、月乃さん、おはよう」

後ろから月乃(つきの) 遥奈(はるな)さんが声をかけてきた、年齢はタメで、真面目でしっかりしているが、ところどころ抜けているところがある人だ。

「もう……私のことは遥奈呼びでいいって言ったじゃない、何回言えばいいのよこれ」

「ああ……ごめん遥奈、やっぱり慣れてなくて」

「大学始まって2ヶ月ちょいだからまだ分からなくはないけどね」

「清田先輩とか影山とかにズカズカ接する人に呼び捨てはちょっと……」

「まぁ、それに関しては私がそういう人だって割り切ってもらって」

「まじですかぁ……あ、そうだ清田先輩に相談事あるんだった」

「え?あー……暁君の両親の事だっけ、いいじゃないそこまで気にしなくても」

「もう何回も夢に見るんだよね……あのときのことは」

「まぁ、気持ちは分からなくもないけどねぇ……って、あー!もうこんな時間!急ぐよ!」

「え、あっ、ちょっと!」

腕を引っ張られて二人仲良く走っていく、こんな姿見られたら恋人同士と勘違いされそうだ。


___45分後__

「皆、おはよう」

「おはようございます」

「暁君と月乃くん、二人とも遅刻ギリギリとは珍しいね」

「それ、普段遅刻ギリギリな教授が言います?」

「うっ……そう言われると否定できない……」

「まぁ、いちいち俺たちのことで時間割く必要はないんで早く講義始めてください」

「そうだね……それじゃ始めるか、号令」

「気をつけ、礼」

馬場(ばば)教授に朝からさっきのような問答を繰り広げて講義が始まる、馬場教授はいつも遅刻ギリギリで来るわところどころ講義の内容が抜けてるわで一見頼りなさそうだけど、農学校出身という立場からなのかか人生経験が豊富で色々と面白い話を聞かせてもらっている、もっとも、それで講義が止まったりして進行度は結構ギリギリなんだけど。


「それじゃ、これで講義を終わります、お疲れ様ー」

そういってひとまず講義が終わったのだが……

「やっぱり暁さんと月乃さんって付き合ってるのかしら……」

「ありえそうじゃない?仲いいし」

「うーん、どうなんだろうね、あんな二人で手を繫ぎながら入ってきたけど」

学生たちは俺と遥奈が付き合ってるとかいう噂でもちきりになっていた、勿論そんなことはないし遥奈にもその気はないと……思っているけども、なんかこっ恥ずかしい、まだ大学始まって間もないのにこういうのがあるとちょっと過ごしにくい、そう思いながら屋外のラウンジに向かう。

「あ、いたいた、おーいこっちだよ〜」

「お、当真じゃん、やほ〜」

「二人とも来るの早いな」

「「いやいやそれほどでも」」

「ハモってるんだが……まぁ、恋人だし当然か」

ラウンジで待ってたのは遥奈と遥奈の本命の恋人、影山(かげやま) 広人(ひろと)だ。影山は猫と「モンスターハンター」というゲームが好きな同学年(俺含めこの三人は大学一年)の知り合いで、こんな俺にも結構気さくに接してくれるいいヤツだ。口調がめっちゃ軽いけど。

「あの〜暁君?私達はまだ友達以上恋人未満の関係で……」

「流石当真!分かってるじゃん」

「ちょっと広人!」

このやりとりを見て逆にどこが恋人じゃないのやら、そんなふうに考えてると

「あ、3人ともこんにちは〜」

「あ、清田先輩、こんにちは」

「清田さんこんにちは」

「広美パイセンちっすちっす」

そこに2年の先輩である清田(きよた) 広美(ひろみ)さんが来た、この人はなんというか、ピュアが過ぎるしお人好しではあるんだけども、ホントにこれでひとつ上なのか?と思うくらいに経験豊富で色々と教えてくれたり相談にも乗ってくれる。あ、あとプッチンプリンが好きすぎて食べられないところとかある人だ。

「清田先輩、どうしてここに?」

「いやぁ、三人ならここにいるだろうな〜って思って」

「あーなるほど」

「あ、そうだ、清田先輩、ちょっと相談事が」

「お、当真にも恋人出来たのか、聞かせてみぃ」

「はいはい広人あんまりいじらないの」

「ふふ、相変わらずね、それで、相談事って?」

「両親の件についてなんですけど……」

顔が暗いだろうな、今の俺。つっても自分の表情なんて鏡とかで見ないとわからないけど。


……15分後……

「なるほどね……」

清田先輩は親身に俺の事に向き合ってくれる、俺だけじゃなくて学校内で関わる人全てにこんだけ優しく接してあげられるんだから、俺の事は気にしなくてもいいのに……そんな罪悪感なんかが頭をよぎった。

「おーい、なんで泣いてるのさ」

「え?あ……」

そう影山に言われて気づいた、どうやら俺は泣いていたようだ、全く気づかなかった。

「え、暁君大丈夫!?」

「あわわわわ、なんか辛いこと喋らせちゃったかな、あーどうしよう〜」

「なんで……どうして……」

「二人とも落ち着いてってば、はい、取り敢えず涙拭いて」

影山がハンカチを差し出してくれた、こういうときはなんだかんだ優しいんだよね。

「うん……清田先輩すいません、なんか色々と走馬灯が走って」

「いやいや、当真くんは悪くないからそこまで気にしなくても大丈夫、辛いこと話させちゃってごめんね?」

「俺が相談したかった事なんで大丈夫ですよ……ただ、俺なんかに清田先輩の貴重な時間を使ってもらうのは申し訳なくて……」

「別に当真くんが話して楽になることなら私はいくらでも聞くから大丈夫!」

「まぁ、良くも悪くも優しすぎるのが清田さんの特徴ですからね」

「まあね〜……ってえ?」

「こういうのにも気づかない鈍感っていうのも怖いですねぇ〜」

そういって遥奈はプッチンプリンを取り出して先輩に見せた。

「あわわわわわ、それはぁ……」

「そんじゃいただきま~す」

「ま、待ってえ……」

パクリ

「あ、ああ………プッチン……」

そう言うと先輩は事切れたかのようにばったり倒れた。先輩は誰かにプッチンプリンを食べられるとショックで気絶するっていう謎性質持ちでもある

「あ、気絶した」

「好きっていうのも考えものだね……とはいえ好き過ぎてこんなになるのは見たことないけど」

「あー、俺広美パイセンと次同じ講義だから連れてくわ、そんじゃね〜」

「おけ、俺たちもそろそろ午後の講義始まるし戻るか」

「そうだね、戻りましょうか」

そういって、お互いそれぞれ午後の講義に向かっていくのであった。


午後の講義も終わり、いつものように四人で仲良く帰路についていく俺たち。

「プッチン……プッチン……」

「遥奈にプッチンプリン食べられたこと、ひっぱりすぎでは?」

「清田さん優しすぎるからねぇ、こういうところが弄りがいあるのよね〜」

笑顔が怖えよ……

「あ、そういや当真、警察への定期調査とかは済ませたん?」

「それ、あんまり表で言っちゃダメなやつだから……一応済ませたから大丈夫」

両親の一件から俺は警察の事件調査に駆り出されることがときおりあった、なんでも犯罪者の深層心理に精通してるからとかなんとか、そういう自覚はないんだがなぁ。

「そっかそっか、それならこのあと四人でどこか遊び行く?」

「遠慮しとく、いつ何があるかわかんないし」

「私もパスで、広人の両親にも話つけてないのにそんなことできない」

「プッチン……プッチン……」

「えーと……二人は行かないのはわかったけど、広美パイセンはどっちなんだこれ」

「遠慮しとくってニュアンスでいいんじゃねぇかな」

「ま、そういうことにしとくか」

こういう他愛もない日常がいつまでも続くといいな……諸行無常なんて言葉があるから、そんなことはあり得るかわかんないけど。

「そんじゃ二人ともまたね〜パイセンのことよろ〜」

「暁君、清田さんのことよろしくね」

「オッケー、それじゃ、また明日!」

そういって俺たちはそれぞれ帰路につく、俺は落ち込み気味で今にも溶けて倒れそうな清田先輩をおんぶして寮に戻る、清田先輩もこの寮に暮らしているためである。

「おかえりなさい、ってどうしたの?」

寮母さんが声をかけてくれた。

「あー……ちょっと清田先輩落ち込み気味で……」

「あー……それなら私が部屋まで送りますよ」

「ありがとうございます」

寮母さんに清田先輩を預けて、自分の部屋に戻る。

「ただいま〜」

誰もいない部屋だけど、ただいまを言うことで少しは寂しくなくなるって先輩が話してたっけな。

そうして渡された次の講義で出す課題や夕食風呂その他諸々を済ませて、俺はベッドに寝転がる。

「ふぅ……お疲れちゃん、俺」

そういって、俺の意識は真っ白に薄れていく……



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