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第七話 牧舞の誤算

『第六話 ゲスい女の子のお部屋滞在記』の牧舞まきま視点になります。

道貞みちさだが部屋を探索している間の牧舞は……?


どうぞお楽しみください。

 シャワーの時間が好き。

 肌の上をぴちぴち跳ねていくお湯の感覚が好き。

 汗でベタついていた身体がさらっとしていくのが好き。

 メイクが落ちて、素の自分になっていく瞬間が好き。

 でも今日はそんなに気を抜く訳にはいかない。

 千重里ちえさと君に、私に好きな人がいると思わせる。

 今のシャワーはそのための時間稼ぎ。

 ……って思ってたけど実際やると恥ずかしい!

 親のいない自宅に男の子をあげて、シャワー浴びるって何!?

 千重里君にエロい女だと思われたんじゃ……!

 ……いや、きっと大丈夫。

 千重里君なら、「そんな罠に引っかかるものか」って跳ね除けてくれるはず。


「あ、見つけた」


 写真立てを写メで撮ってる千重里君を携帯の画面で確認した私は、シャワーを止めて脱衣所に上がった。




「お待たー」

「おう」


 部屋に戻ると、千重里君は最初に座った位置に戻っていた。

 写真立ては伏せた状態に戻ってる。

 ここで問い詰めたりしないで、証拠集めをするつもりかな?

 結構冷静なんだね。


「じゃあ撮ろっかー。ドーテーもうちょっと寄ってー」

「み、道貞みちさだだ!」


 身体を寄せたら、急に動揺した!

 やっぱりこういうのには反応するんだ。

 女扱いされて嬉しい気持ちと、欲望の対象にはされたくない気持ち。

 我ながら面倒くさいなぁ……。


「はい撮るよー」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 一旦離れて何か顔を必死に押さえてる。

 にやけないように頑張ってるのかな?

 ……そんなに照れてくれてるんだ。


「よし、良いぞ」

「じゃあハッピーラッピーイェイ!」


 嬉しくて変な掛け声かけちゃった。

 さて写りはどうかな?

 ……何か千重里君の表情が死んでる……。

 そこまで照れを殺さなくても……。


「何か顔のテンション低くなーい? もっと自然に笑ってよー」

「良いよそれで。『初彼女で緊張してて』とか言っとけば良いだろ」

「あ、やっぱ初カノなんだー。ウケるー」


 ギャルだったらこういう煽りをするべきだよね。

 それで千重里君が反論して……。


「……そうだよ。俺なんかこんな事でもなけりゃ、女子と話すらできない男だよ」

「え……?」


 ……あれ? 落ち込んでる?

 うそうそ! そんなにやわじゃないと思ってたのに!


「そんな事ないよ!」


 千重里君は、千重里君は、私を救ってくれた救世主なんだから!


「あたしは確かにカレシのフリを頼んだけど、誰だっていいわけじゃないんだよ! ドーテーがいいヤツそうだったからだし! 顔も別にキモくないし! 臭くもないし!」


 もっと良いところ言いたいけど、そうしたら色々な作戦がバレちゃう!

 悔しい! 歯がゆい!


「ドーテーは自分の事嫌いなの!?」

「……え、あ、その、まぁ、嫌い、かな……」

「じゃああたしとは!?」

「は?」

「あたしと自分、どっちが好き!?」

「俺よりはお前の方がマシだろ……」

「マシとかじゃなくて! 好きなの!? 嫌いなの!?」


 私の事が嫌いでも良い!

 千重里君を落ち込ませたままでいさせたくない!


「……また録音してんのか?」

「……えっ」


 千重里君の言葉で頭に昇ってた血が下がった。

 わ、私何言ってんの!?

 わー! わー!

 千重里君が自分を卑下してるのに耐えられなくて……!

 幸い誤解してるみたいだから、このまま押し切ろう!


「……録画とかもしてそうだな」

「そんな事してないよー!」


 それは認めるとヤバい感じだから、録音だけって事にしておこう!


「じゃあ録音は?」

「……し、してないよー……」


 目を逸らす演技に、勝ち誇った顔をする千重里君。

 良かった。うまく見抜いた気分になってくれたみたい。


「成程成程。そう考えれば、わざわざシャワーを浴びたのも説明がつく。敢えて隙を作ってこの部屋で俺が何かしたら、脅迫材料を追加ゲットするつもりだったんだな?」


 当たらずとも遠からず、だね。

 やっぱり千重里君はこうじゃないと。


「な、何でもそうやって疑うのよくないよー?」

「目がめっちゃ泳いでいる状態でよく誤魔化せると思ったな! その図太さ逆に見習いたいわ! こんな危ないところにいられるか! 俺は自宅に戻るぜ!」

「あ、ちょっとー!」


 ……行っちゃった。

 でも二人の写メも撮れたし、写真立てにも食いついた。

 これで次のステップに進めるね。

 写メを送って、と。


『今度はドーテーの家で撮ろうねー』


 あ、返信早い。

 ……『NO!』って、余裕ないなぁ。

 でもまだ今はこれくらいが良いかな。

読了ありがとうございます。


卑下されるのは、たとえ本人であっても許せない感じです。

危うくぶっちゃけるところでした。

ぶっちゃけられたら、道貞の事です。

「なら付き合おう」とはならず、距離を置く事でしょう。

なので牧舞の作戦は続くのです。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当は好きで好きでたまらないという本心を押し隠してるのに、ついそれが漏れ出てしまうマッキー可愛いですね。 慌てながらも咄嗟にごまかしを入れていて、そこは凄いですが、冷静に次のステップにいけ…
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