第五話 牧舞の家路
『第四話 ゲスい帰り道』の牧舞視点になります。
家に招いた牧舞の心中は……?
どうぞお楽しみください。
慈代ちゃんとの話を切り上げ、千重里君の席へと向かう。
放課後うちで写真を撮ろう、と打ち合わせをしてたけど、まさか教室でそのまま待っててくれるとは思わなかった。
昇降口とかで待ち合わせにすれば良かったかな。
……嫌じゃないけど。
「お待たー」
「おう」
やっぱりクラスのみんながめっちゃざわざわしてる。
これまで接点なかったもんね。
どう思われてるのかな。
付き合ってる、はまだ無理か……。
「じゃー、行こっかー」
「あぁ」
ちょっと得意げな千重里君。
私といる事がそうさせてるのなら嬉しいな。
「クラスさー、すっごいざわざわしてたねー」
「そうだな」
……それでおしまい?
もうちょっと会話を続ける努力をしてほしい。
うちまでそんなに遠くはないけど、ずっと無言はやだな。
話を振ろうにも、何か考え込んでるっぽい。
うちに来てから何するか、作戦立ててるのかな。
考えられるのは、私の弱みを握ろうとする事。
私のプライベートを探って、それで優位に立とうと思ってるんだろうな。
残念だけど、もうばっちり対処済みなんだよね。
一週間前から大掃除して、見られて困る物は全部片付けてある。
そして、成果に見せかけた罠も。
……笑わないように頑張らないと。
「なーんか考え込んでるー?」
「別に」
……まさか家に上がれるからって、エッチな事とか考えてないよね?
時々胸に視線を感じるのは、男の子なら仕方ないと思ってたけど……。
大丈夫だと思うけど、一応釘は刺しておこう。
「あ、わかったー。エッチな事考えてたんでしょー」
「違う」
「えー? 即答ー?」
即答に安心したけど、ちょっと腹立つな。
魅力が全然ないみたいに感じる。
身体鍛えたり、お洒落に気を遣ったりしてるのに。
異性としての魅力は感じるけど、欲望のままに嫌な事はしないっていうのがいいな。
……我ながら面倒くさいとは思う。
「あたしの胸ちらちら見てるのにー?」
「……」
「今更目ーそらしても遅いんですけどー?」
まぁ興味がない訳じゃないみたい。
あんまりからかって変な男気を出されても困るから、一応フォローしておこうかな。
「ま、約束あるから大丈夫だとは思うけどねー。ドーテーはヘタレだしー」
「あ、当たり前だ。そんな事するわけないだろう。あと俺は道貞だ。ドーテーって呼ぶな」
別に馬鹿にしてる訳じゃないんだけどな。
まだ道貞君って呼ぶの恥ずかしいんだもん。
「ふーん。ちなみにさー、今日両親帰ってこないから二人きりだけどー?」
「!?」
照れ隠しで言った言葉に、目を見開く千重里君。
あ! 私が誘った感じになってるこれ!?
そ、そんなつもりじゃ!
今日両親帰ってこないのはホントだけど!
「ちょ、顔マジになりすぎー」
笑って誤魔化そう!
気持ちを立て直そう!
「……とにかくとっとと二人の写真を撮るぞ……」
「おけー」
良かった、からかったと思ってくれたみたい。
うぅ、でも恥ずかしい……。
読了ありがとうございます。
余裕ぶっていて内心ドキドキって良いですよね。
……私だけ?
次話もよろしくお願いいたします。