第二話 牧舞の始動
こちらは『第一話 ゲスいぼっちとゲスいギャル』の牧舞視点になります。
道貞(道貞)と牧舞の屋上での出会い。
道貞視点ではイケイケなギャルでしたが、その内心は……?
どうぞお楽しみください。
……予定通り。
智也君から彼女ができた話を聞いた千重里君は、人目を避けて一人になれるところに行くだろうという読み通り。
さて、ギャルモードに切り替えてっと。
「ふぅ……」
扉を開けた音に振り向く千重里君。
あ、私の顔見てあからさまにガッカリしてる。
いいんだ。このマイナスからのスタートが大事。
「あれー? 人いたー」
興味なさそうに、むしろ若干迷惑そうに顔を背ける千重里君。
傷心だもんね。一人で黄昏れたいよね。
でも駄目。
「ねぇ君ー」
「はっ!?」
肩に手を置くと、目で見てもわかるくらいに跳ねる千重里君。
予想していた反応とはいえ、本当に女の子慣れしてないんだなぁ。
何だろう。ちょっと嬉しい。
「確か同じクラスのヒトだよねー? こんなところで何してんのー?」
「え? あ、その、そ、空を、見てました……」
「はー? ……変な奴ー」
誤魔化し方下手!
頭撫でちゃいたい!
でも事情を知るはずのない私がそんな事をしたら不自然なだけ。
「なになにー? ぼっちなのー?」
「え、あ、はい……」
「うわー、キモーい……」
千重里君のギャルのイメージのまま、いじり続ける!
……恥ずかしいけど、ここであの一言!
「あんたドーテー?」
「道貞です!」
「は?」
智也君情報グッジョブ!
ものの見事に釣れた!
恥ずかしさに耐えた甲斐があった!
「あ、あの、俺、名前が道に貞子の貞で道貞なんだけど、よく『ドーテー』って読まれてからかわれるからつい……」
「へー。あたしも苗字の下種を『下ネタ』とか言われた事あるからー、ヤな気持ちわかるわー」
「あ、ありがとうございます……」
この反応は、うーん、気付いてないか……。
ここで気付いてくれたら、ギャルのギャップと合わせてより動揺させられたのにな。
まぁこれは後のカードとして取っておこう。
「でー? 男としてのドーテーの方はどうなのー?」
こ、声、上ずってなかったよね!?
にやけてるのは、こ、こういう話題だから、不自然じゃない、よね……?
「……そうですけど」
「やっぱりー!」
大声で笑って、千重里君の肩をばしばし叩いて、照れを誤魔化す。
千重里君は迷惑そうな、でも満更でもなさそうな顔をしている。
よし、ここだ。
「じゃあ丁度いいやー。あたしのカレシのフリしてよー」
「は!?」
戸惑ってる間に畳み込む!
「あたしってモテるじゃーん? で、色んな男から声かけられまくっててさー」
これは本当。
まぁ片っ端から容赦なく断ってるけど。
「でもどいつもこいつも体目当てって感じでさー」
あ、今胸見た。
ちょっと盛っといた甲斐があった。
「カレシいるってなればー、そういう奴ら寄ってこないでしょー? それにぼっちに優しいギャルって受け良くなーい? ドーテーなら安心だしー。そういうわけでよろしくー」
悩んでる悩んでる。
千重里君のプライド的には、こんな舐めた提案受けたくないよね。
でも千重里君なら、これが智也君に対抗する現状唯一の手段だと気付くはず。
となれば、私の提案を飲むのが一番だとわかるだろう。
「……良いよ。彼氏のフリ」
「オッケー。じゃあとりま連絡先交換しよっかー」
第一段階成功!
ここから千重里君を少しずつ変えていこう!
読了ありがとうございます。
実は結構いっぱいいっぱいだった牧舞。
イケイケなようでいて純。
良いものです。
次話もよろしくお願いいたします。