第十四話 牧舞の気付き
『第十四話 ゲスい休み時間』の牧舞視点になります。
『第十三話 ゲスい危機回避』には牧舞は関わっていないので飛ばしてあります。
どうぞお楽しみください。
休み時間になった。
千重里君、朝廊下で身体の大きい人から高圧的な感じて声かけられていたけど、大丈夫だったかな。
すぐ戻ってきたからトラブルとかじゃなかったみたいだけど。
「おーい、道貞!」
あ。朝の廊下の人だ。
さっきとは打って変わって明るい感じ。
「なぁ道貞」
「何だ?」
「今日は良い天気だな」
「そうだな」
「……明日も天気は良いみたいだ」
「そうか」
「……」
「……」
???
何だろう今の会話。
ドラマで見た、気の乗らないお見合いみたい。
「……じゃあ、また」
「……あぁ」
え? 帰った?
不思議すぎる!
聞いてみよう。
『なになに〜? 新しい友だち〜?』っと。
「!」
あ、メッセージに気付いた。
お、返信早い。
『お前を好きな奴だ。俺が別れたらチャンスがあると思ったらしく、脅してきたから丸め込んだ』
へぇ。
それで千重里君のところに来たって事は……。
『え〜? どうやって〜? あ! もしかして「あいつより俺のことを見ろよ♡」的な〜?』
なんてね。
別れさせても接点がない状態だと可能性が低いから、とりあえず仲良くして好印象を持たせろ、とか言ったんだろうな。
……ちゃんと私の事、守ってくれてるんだ。
「……っく」
あ、今ちょっと笑った?
BLネタ、嫌いじゃないのかな。
『違う。本気で付き合いたいなら、脅したりしないで良いところ見せていった方が良いって言ったんだ』
う。
私に向けたんじゃないのはわかってる。
それに私は千重里君を守りたいから側にいたいだけ。
一緒にいるとすごく楽しいけど、付き合うってなったらどうしたらいいかわからない。
千重里君も、あまり恋愛に興味ないみたいだし……。
でもこのメッセージに動揺してるって事は、私やっぱり千重里君と付き合いたい、のかな?
家に呼んだ時はどきどきしたし、デートは楽しかったし、Tシャツ買ってもらえた時はすごく嬉しかったし……。
あの日私をかばって鼻血を出した千重里君。
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで、強くなって守りたいって思った気持ちは今も変わらない。
だからこの気持ちは恩返し、のはず。
……もしかして、その時の気持ちって……。
……あ! 既読付けたのに返信してない!
意味深な間になっちゃった!
『そうだよね。やっぱり本命には真っ正面から行かないとね』
うわわ! 慌てて打ったら、何かマジっぽい感じになってる!
……変に思ったかな。
『そうだな』
良かった。あっさり流してくれた。
千重里君の側にいるためには、とりあえず今のままで。
でももし、千重里君から告白してくれたら……。
駄目だ! 顔が変になる!
……落ち着こう。
冷静に考えれば、千重里君の告白なんてまずあり得ない。
まずは女の子慣れさせるところから、ゆっくりいこう。
読了ありがとうございます。
熊太も牧舞の仕込みとして、陰からその様子を見守る流れの案もあったのですが、あのおバカっぷりは天然であってほしいという個人的な願いからこうなりました。
ちなみに熊太には、一つ年下の可愛い系の幼馴染がいます。
名を井本恵子。
家がお隣なので、やれGが出ただの、切れた電球に手が届かないだのと日常的に頼りにされています。
熊太は手のかかる妹みたいな気持ちで見てますが、恵子の方は……。
書けたら書くわぁ(行かないやつ)。
次話もよろしくお願いいたします。