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第十三話 牧舞の狙い

『第十二話 ゲスい昼食風景』の牧舞まきま視点になります。

ツーショット写真を撮るために昼食に付き合う事にした道貞みちさだ

その裏でうごめく牧舞の狙いとは。


どうぞお楽しみください。

「やー、ありがとねミッチー」

「ど、どういたしまして……」


 宝物の入った袋を抱えて、私の足取りは軽い。

 初めて自分のお金で服を買った時、いや、それ以上かな?

 対照的に千重里ちえさと君はどんよりしてるけど。

 あ、そうだ。


「ねー、そしたらちょっとさー、ご飯食べてかない?」

「……いや、あぁ、うん」


 そしたら行きつけのレストランのランチをご馳走しよう!

 ランチだと二千五百円のステーキがイチキュッパになってお得なんだよね。


「おけー。じゃあさー、服買ってもらったしー、お昼はあたしがおごるよー」

「いや、大丈夫。俺自分の食べる分は自分で買いたいからさ」


 あー、そっか。女の子の奢りって抵抗あるよね。

 でもあそこのステーキ、できれば一緒に食べたい。


「そっかー。でももらってばっかりっていうのも気が引けるんだよねー」


 ……駄目か。表情は固いままだ。

 仕方ない。ステーキはまた今度かな。


「まぁ何か頼みたい事とかあったらその時に頼むよ」

「おけー」


 さて、そしたらあまり高くないところを選ぼうかな。

 あ、ボスバーガー。

 ここ、美味しい割にいつも空いてていいんだよね。


「じゃーここにしよっか」

「え……」


 あれ? 表情固い?

 ハンバーガーは好きって智也ともや君から聞いていたのに……。

 お腹あまり空いてないのかな?


「よかったー。すいてるねー」

「……そう、だな」


 でもそれならポテトとかサイドメニューだけにすればいいから、とりあえず入っちゃおう。


「あたしはダブルボスバーガーのセットでー」

「……バリューバーガー一つ……」

「えー? それだけー?」

「……セットで」


 あ! そうか!

 さっき私の服を買ったから、もう今日の予算的にはオーバーなんだ!

 あー、お店のチョイス間違えたー!


「なぁマ」

「ねーミッキー、今日何か無理してなーい?」

「ッ」


 それじゃ駄目だ。

 遠慮や無理があったら、千重里君は私から離れていく。


「そんな事ない。楽しいぞ」

「あのさー、そーゆーのはホントのカノジョにとっときなよー」

「は?」

「嫌われて困る関係じゃないんだからさー。もっと友達みたいに軽ーく接していーんだよー?」

「……」


 だから私は女を意識させないように、ゲスい女を演じてきた。

 願わくば智也君みたいに、憎まれても側にいられる存在になるために。


「あたしはカレシのフリしてもらってる時点で、けっこー借りあると思うんだよねー」

「……え……」

「だからー、せめてやりたい事とか言いたい事とかー、遠慮しないでほしいんだよねー」

「……」


 あ、引き絞っていた口元が緩んだ……!

 もしかして……!


「……いや、やめとく」

「えー? どーしてー?」

「また録音されていても困る」

「もうしないよー。なんなら携帯置いててもいーし」

「最近はICレコーダーも進化してるからな。携帯は安心させるためのエサかもしれない」

「……ミッキー、考え方ヤバくない……?」


 私が仕向けた事とはいえ、ここまで警戒されると少し寂しいな……。

 でも逆に言えば、それだけ警戒していても、帰ったりしないで一緒にいてくれるんだね。


「一度見破られた手なんか使わないよー」

「別の手なら使うと言っているように聞こえるが」

「まー時と場合によってー?」

「それで遠慮するなとかよく言えたな」


 あ。

 私の軽口に、ふっと千重里君の雰囲気が柔らかくなった。

 良かった。

 まだ色々課題はありそうだけど、今は千重里君の側にいられそうだ。


「お待たせいたしました」

「おー、待ってましたー」


 絶妙なタイミングで運ばれてくるハンバーガー。

 千重里君と向き合って食べる、何の変哲もないそれは、お気に入りのステーキよりもすごくすごく美味しく感じた。

読了ありがとうございます。


昔とある小説の中で、登場人物が側近に対して言った評価の、

「最も油断ならない友人にして、信頼できる敵」

というのがとても気に入ってます。

わかった人は僕と握手!


まぁ二人はそんな関係にはならないんですけど(ネタバレ)。


次話もよろしくお願いいたします。

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