第一話 牧舞の決意
拙作『俺と下種さんのゲスい関係』の視点違いの話となります。
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よろしければそちらを先にお読みください。
下種牧舞のゲスな感じを十分知っているという方は、どうぞお楽しみください。
『やーいシモネタおんなー!』
『はっずかしいなーシモネタおんなー!』
……なんでそんなこというの……?
まきまだって、なりたくてなったんじゃない……。
こんなみょうじキライだよ……。
『あー! おんなのこなかしてるー! いけないんだー!』
え? だれ? しらないこ……。
『な、なんだおまえ! カンケイないだろ!? すっこんでろ!』
『わー! わるいことしてるのにえらそうだなー!』
『う……』
『そうだよなー。なきそうなおんなをかこんでるんだもんなー。いじめにしかみえないよなー。おまわりさんとかがみたら、どうおもうかなー』
『……このやろう……!』
もしかしたら、このこ、ヒーローなのかな……?
いじめっこたちをやっつけて、わたしをたすけて、
『うるせぇ!』
『ぶへっ!』
あ、あれ?
なぐられちゃった!
『うあ……。いてぇ……』
わ! すごいはなぢ!
『う、うわ……、どうしよう、とまらない……、しんじゃう……! しんじゃうよー!』
『や、やべぇ! にげろー!』
『ま、まってよー!』
『なぐったのおまえだろー!』
ど、どうしよう……!
わたしをたすけようとしたせいで、あのこしんじゃう……!?
こわいこわいこわいこわい!
『うわーん! しんじゃだめー!』
『うわーん! じにだぐなーい!』
『どうしたんだい!? あら! 大変! 救急車呼ばないと!』
『うわーん!』
『うわーん!』
「……ん……」
……夢、か……。
懐かしいな……。
千重里君との出会い。
あの慌てん坊のおばさんのお陰で大騒ぎになって、いじめっ子達はこってりしぼられ、二度と私の苗字をいじらなくなった。
でもそれはその後の話。
病院でお礼を言った時、千重里君は、
『……たすけられなくて、ごめん……』
鼻に脱脂綿を詰めたまま、うつむいていた。
あの時私は強い使命感を感じた。
「こんどはわたしがこのこをまもる」と。
でもたまたま遊びに来ていただけの千重里君とは、学校も違えば生活圏も違う。
だから私は、将来再会した時に向けて、強くなる事にした、
渋る親に頼み込んで、柔道と合気道を習わせてもらった。
クラスでいじめらないように、いじめられている子を助けられるように、明るく社交的で流行に敏感なキャラを目指した。
それとお洒落を組み合わせたら、ギャルになるのが一番手っ取り早かった。
そして親伝手に千重里君の高校の行き先を聞き、その全てを受験。
同じクラスにまでなれたのは、本当にラッキーだった。
我ながらあの時とすごく変わったと思うから、気付かれなかったのは想定内。
しかし誤算だったのは、あの後何があったのか、千重里君はいわゆる『陰キャ』になっていた事だった。
『やっほー。あたし下種牧舞ー。マッキーって呼んでねー。よろー』
『…………ども…………』
あまりの塩対応に、あの時の事を言い出し損ねた。
そこで千重里君がクラスで唯一話をしている伴野智也君から、色々聞き出して策を練った。
彼氏が欲しいと言っていた菅野慈代ちゃんと、彼女を欲しがっている智也君をくっつけて、千重里君も彼女がいない事への焦りを持たせる。
そこで私が彼氏のフリを頼めば、きっと乗ってくる。
接点を持ったら、二人の段差を少しずつ埋めていこう。
そうしたら、きっと……。
読了ありがとうございます。
ヤンデレじゃないよ!
ヤンデレだとしてもヤンデレという名の純愛だよ!
月曜からは、『俺と下種さんのゲスい関係』の流れに沿って牧舞視点で書いていきますので、よろしくお願いいたします。