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sk  作者: あおいPpoi
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第1話 青い青いこの星で

キーンコーンカーンコーン


始業のベルが鳴り響く。





ここはとある場所にある、とある高校。


自由な校風が魅力の高校だ。


生徒の自主性に任せる代わりに自己責任が重のことで有名だった。


つまり、


自分の責任は自分で取れ!


ということだ。


そして、成績はいいが常識的概念に捕らわれない変人が多いことでも有名な高校だ。





佐々木政宗の機嫌はすこぶる悪かった。


なぜなら隣に見たくもない人間が座っているからだ。


ネコ耳。茶髪・緑の瞳。

それだけでも目立つが、演劇部で1年なのに主役をやってからは校内で知らない人はいない。

何の劇をやったかは……、まあ、追々語っていこう。


佐々木の幼馴染、川村昇だ。


不機嫌な雰囲気を纏っているにもかかわらず、表情は笑顔だった。


その原因たる事柄が起こったのは、数十分前に遡る。




それは、学年が1年から2年の境目でクラス分けが貼り出された時のこと。


「あ、佐々木~、川村~!!」


渡辺良太が手を振ってきた。隣には峰岸和美がいた。


渡辺は小柄で動きがチョロチョロしてる。

バスケ部名物(?)の元気っ子少年だ。

笑顔がキュートで男女問わずに大人気だ(笑)


逆に峰岸は大柄で隙のない動きをしている。

元不良の空手部次期主将かと言われるほど強い。

不良の名残の金髪だけが目立っている。


「同じクラスだぜ!!4人とも」


渡辺が大きな声で騒ぐ。


佐々木はそれが気に食わないが、優等生の皮を被っている以上何も言えない。

叫んでいる内容にも……何の言葉も浮かんでこなかった。

腹が立ちすぎて---。


「やったね、政宗!!これで同じクラス5年目だね」


嬉しさのあまり、川村は佐々木に抱きついた。

もし、周りの人間の目がなかったらこの場で川村を殴っていただろう。


川村が大人しくなぐられるかは別として。


この場では川村の体を押し返すことだけをした。

不審に思われないように。


そのせいで佐々木にはストレスが溜まっていく。


「やったな!」


無理矢理押し返された川村と渡辺が手を軽く合わせる。


バスケで点数が決まったときにするような動作だ。


峰岸も横で頷いていた。


声にも表情にも出さないが4人一緒で嬉しいようだ。


佐々木は……

『ふざっけんなよッ!!誰だ!!こんなクラス分けしたセンコーは?!殺!!会ったら絶対殺す~~!!』

と考えながら、天使のような微笑を浮かべておったとさ。



そのような顛末てんまつがあり佐々木の機嫌は絶不調だった。


そのとばっちりを受けるのは……憐れな川村。


今日の怒りは大きかったので川村は佐々木の隣で怯えていた。


ちなみに席順が早いもの勝ちのため、佐々木の後ろに峰岸で、川村の後ろが渡辺だった。


始業式は昼前に終わる。

その日、川村がどんな目にあったかは…誰も知らない…。




次の日のお昼にいきなり話が飛ぶ。


4人は屋上でお弁当を食べていた。

佐々木はお父さん手作り弁当。

川村は学食で買ってきたパン。

渡辺はなんと……自分で作ったお弁当だった。母親が朝に弱いため自分で作っているのだ。

峰岸は一人暮らしのため容易に想像が付くが……コンビに弁当だ。


周りに人気はない。

屋上は鍵がかかっているのだ。生徒会役員である佐々木(書記)が職権を乱用しているのだ。

1年の時までは佐々木と川村だけだったが、同じクラスになったために渡辺と峰岸がきた。


そこで、また佐々木の機嫌は最悪なものになった。

渡辺にはまだ、本性がバレていないために猫を被ったまま食事をしなければならないのだ。


昨日から、佐々木のイライラは止まらない。イライラの暴走列車状態だ。


「そういえば、昨日の部活でさ、俺顔面にバスケットボール食らった。痛かった」


渡辺が卵焼きをつつきながら言う。卵焼きは綺麗に薄皮で巻けており、渡辺の料理の腕はなかなかのものだとわかる。


「どうりで、鼻の頭に絆創膏なんて貼ってるわけだ」


川村が呆れたよう絆創膏を指差す。


「うん、昨日真っ赤だったんだゼ!顔」


「猿みたいだった?」


「んな訳ねーだろ!!川村おれにケンカ売ってんのか?」


「ナベにケンカ売るほどヒマじゃないよ~」


川村は最近渡辺のことを『ナベ』と呼ぶようになった。


「なんだと!!あいかわらず失礼だな」


誰かの怒りのボルテージがぐんぐん上がっているのに大人しくお弁当を食べている峰岸が気づいた。これは殺気の域まで到達している。武道をしている峰岸にはわかった。


「あ……」


佐々木が立ち上がるのを見て、峰岸が小さな声で言った。

彼がこの話で初めてしゃべったことにお気づきだろうか?


「てっめーら!!静かに飯も食えねーのか?!言い合いなんて後でヤレッ」


「ああ~!…政宗?」


川村が慌てた様子で佐々木を止めた。


「佐々木?」


渡辺が元々大きな目を更に見開いた。


「………」


峰岸は無反応だ。見守っているというのだろうか……?


「すげぇ!!佐々木ってそんな言葉遣いするんだな?」


渡辺は渡辺で変なところで感心している。


「うるさい。少しは黙れ。おまえ、一度スマキでまとめて東京湾に沈めたかったんだ」


渡辺に向かってそんな暴言を吐く佐々木だった。そうとう鬱憤うっぷんがたまっていたのだろう。


「なあ!なんでその決め台詞には東京湾なんだろうな?」


やっぱり変なところで感心する渡辺だった。話を逸らすことに長けているとでも言うのか。


「黙れって言ってるだろ?別に俺は本当に東京湾まで行ってもいいんだぞ」


「東京湾は観光には向かないゼ~☆行くならもっと綺麗な海に行こうゼ!!」


変な言い合いをする二人に川村は肩を落とした。


「なんか…不毛な会話を繰り返してると思うのはボクの気のせい?」


「人生楽ありゃ苦もあるさ」


「みねぎー……それ水戸黄門の歌……」


峰岸が肩に手を置いた。情けない気持ちで川村はつぶやいた。



「やあ、皆の諸君。ご機嫌いかがかね?」


屋上のドアに一つの影あり。

そこに立っていたのは夏でもないのに扇を手に持ち、長い髪を後ろで一本に束ね、男子制服に身を包む人間だった。

平安時代の貴族を思わせる外見だ。


「会長?!」


川村が叫んだように、そこにはこの高校の生徒会長が立っていた。変わり者で有名な会長だ。その風貌からも彼が奇特であることがわかる。

佐々木の表情が180度変わった。


「会長。こんなところにどうしたんですか?」


穏やかな口調で話しはじめた。

さっき怒鳴っていた人間と同一人物だとはわからないほどの変わり身の早さだ。


「我が高校の生徒会選挙が6月という早い時期にあるのは知っての通りだね?そこで、佐々木君と川村君に生徒会選挙に出てほしいんだ」

 

「ていうか……どっから出てきたんだあの人?」


渡辺が峰岸に耳打ちをしていた。


「渡辺君、人が話している時はおしゃべりは慎むように。あっと、返事はまた後でいいよ。じっくり考えてくれたまえ。選挙まで2ヶ月はあるからね」


そうして、風のように音もなく去っていった。


「あの人何しにきたの?」


渡辺が邪気なく言っている横で、川村がため息をついていると、横で佐々木が燃えていた。


「俺、絶対生徒会長になる!!」


そういう勝負事というか権力の象徴が好きな佐々木であった。


「政宗の頭の中はおめでたい……」


「なんだって?」


佐々木に睨まれて、川村は黙った。




「あの~、すみません」


そこに遠慮気味に声をかけてきたのは風紀委員長、榊春日さかき はるかだった。

華奢で女顔。風が吹いたら折れそうなイメージの性別男(!)の少年だ。

真面目なために、立ち入り区域にいるのがわかって、声をかけずにはいられなかったようだ。


「ここは、立ち入り禁止なの。即刻退去しなさい!!」


キツイ言葉を投げかけてきたのが、風紀委員会副委員長の西條理亜さいじょう りあだった。

モデル体系でいつでも強気な女の人だった。彼女に逆らうことはあまりしたくないと思う人間は多い。

いうなれば……女王様?


「ここで俺もお昼が食べたい……」


まったく自分勝手なことを言うのは風紀委員、速水健太郎はやみ けんたろうだった。

いつも、ボーとしていて、委員長と食べ物のことしか考えていない。

彼の代名詞は無気力・無関心・無感動だ。


お飾り風紀委員で真面目に活動しているのはこの3人だけだった。


「今日は来客が多いな♪」


渡辺が楽しそうにしている。


「風紀委員長。あなたも放課後この屋上を使っているという噂を聞きました。お互い様ではないのですか?そう言って脅すわけではないのですが、見逃していただけないでしょうか?」


佐々木が天使の笑顔で言い放つ。


「それとこれとは話が別ッ!!」


理亜が大きな声で反論した。


「いや、そうだよね。ごめんね佐々木君。君の言う通りだよ。今日のところは帰ろう理亜」


「ちょっと…ハルカ?!」


「西條先輩」


理亜は春日ではなく健太郎の少し強い声を聞くと仕方なさそうに屋上から出て行った。


「僕達もやめるから、君らも屋上を使うのをやめてね?」


「やめませんよ。だから風紀委員長もやめる必要はありません」


佐々木の言葉に春日は眉をひそめたが、何も言わずに屋上を去った。

健太郎もその後ろに続いた。



「お昼……あと5分」


ボソリと放たれた峰岸の言葉と共に予鈴が鳴った。


「バッカなやつらが来たせいでゆっくり食べられなかった!!」


佐々木が不機嫌な声を隠そうともせず言う。

後の3人を待たずにズンズン先に進んでいき屋上を後にした。


「ねえ、ナベはあの政宗知って……イヤに思った?」


川村が心配そうに聞いた。


「佐々木は変わんないよ。言葉は汚くなったけど、言ってる内容は同じだ。」


渡辺が二カッと笑った。


「良かった」


川村が安心したように笑った。


「良太は不良の俺も恐がらなかったし、差別しなかった」


峰岸が珍しく笑った。




こうして、名物4人の高校2年の生活が始まった。

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