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儚のロワイヤル  作者: 更衣
1日目
6/6

第3話 考察

「…」

踊り場にいる皆が黙っている。それもそうだ、一人亡くなったのだから。

外は結局助からず、命を落とした。

「すまない…」

藪が口惜しげに、悔しそうに言う。顔も険しいものだった。

「藪さん…」

夜は藪を見つめていた。

(一体、誰がこんなこと…)

その時、広間の扉が開き、蝶と原、客が出てきた。死体を調べていたのだ。

「毒…だと思います、多分。この短時間でならそうかと。ただ、割れた破片一つ一つを見たのですが、どれも綺麗でした…。グラスに塗られていたんじゃなくて、混入されたんだと思います」

蝶が調べた結果を言った。蝶は心肺蘇生を一番多くやっていたこともあり、死体を見てみると言っのだ。そして、その結果をこうして伝えてくれている。

「でも、あんな毒は聞いたことが無い…」

原が言った。書庫でのことで知識量が多そうだったと考えられる原も、検死のメンバーに加えられていた。

「混入ってのが僕らの見解なんだけど…。その…。皆を疑うようで悪いんだけど、荷物をチェックさせてほしいんだ」

落ち着いていたこと、疲れていなかったことで客もメンバーに加えられた。きちんとした思考を持っていてくれているだろうという期待もあった。そして、思った通り、客はきちんと役割を果たしてくれていた。

「そうだな、仕方ねえ」「はい…」「うん…」

やましいことがあるのかないのかはわからないが皆それを承諾した。





   ♢  ♢  ♢


結局のところ、誰の持ち物からも毒物らしきものは見つからなかった。夜を含め武器となりそうなモノを持った人は何人かいたが。

持ち物検査を終え、西館のラウンジに平常だった夜、蝶、反、客、真、英、竜、流が集まっていた。

「うーん、誰からも見つからないってことは一回限りのものを使ったか」

顎に手を添えて客は考えている。

「後は上手に隠してるか、だな」

反がそれに付け加えるように言った。

「でも、このタイミングでどうして殺したのでしょう?」

蝶のその一言がやはり皆の引っかかるところである。

「そうなのだよな」

うんうんと英が頷いている。

「やっぱり殺したかったからとか?」

真が反論を試みる。

「記憶も無いのに?」

蝶が首を傾げる。

「…」

皆が押し黙った。しかし、そうなのだ、記憶がないというところで行き止まりに当たる。

「殺人鬼だったとかですか、ね?」

夜が口を挟んだ。

「そういう線があるか」

英がなるほどという顔をする。他の人もうーんという顔をしている。

他にこれぐらいしか思いつかなかったのだ。

(あー、この人じゃなさそう…蝶さんはまず除外!てか、なんで皆こんな落ち着いてるんだろ、いや僕もか…。どんな奴だったんだよ、僕は…)

現実離れしすぎた状況だから落ち着いているのか。この状況で落ち着いているということはそういう中で生きていたということだ。どんな生き方をした人達なのだろうかと夜は気になった。

「あ、私。妖さんの様子見た来ますね」

行き詰まり会話が無かったところで蝶が話題を変えた。

「あ、頼みます」「お、頼んだ」「ありがとうございます」「ありがとう」「すまない」

感謝だったりが蝶に言われる。

「蝶、よろしく」

「うん、夜。ありがと」

「私もついていこう」

英が蝶について行った。

「…」

客がその後姿を見つめている。

「どうした?」

「あ、いや…にしても…」

蝶に対して気になることでもあったのだろうか。はあ、と客はため息を着いた。それにつられて全員も。

「この話している中にもいるかもしれないんですよね、犯人」

「…そう、だな」

竜が重々しく言った。

「…」

それに対して、皆が黙り込む。

「あ、あー。ご飯を食べ損ねたね、僕達」

客がこの重い空気を変えようと話題を変えた。

「支配人に頼んでくるよ、夜食」

「ああ、ありがとう…」

夜は本当にいい奴なんだなと感謝を述べた。

「着いていくぜ、また何かあっても困るしな」

真が客を見た。真の顔は曇っている。

「疑われてる…ってわけじゃないかもだけど、あまりいい気分はしないね」

客が苦笑している。

「いや、すまねぇ」

その発言に申し訳ない、という顔を真はした。自分がされたときのことを考えたのだろう。

「いいんだよ、仕方のないことだ。見張り合うのも大事だし。互いが疑われないようにするのも疑うのも仕方ないよ、この状況だったらね。僕だってそうする」

「ありがとな」

「いいさ。じゃあ行こうか」

「ああ。じゃ、行ってくる」

そう言うと、真と客は支配人がいるであろう中央館(そう記してあった)に向かった。

何を話していいかわからない。沈黙の時間が続いた。

「みなさーん、妖さん大丈夫みたいです」

蝶の明るい声が聞こえて振り返る。先程までの蝶の顔は少し暗かったが、それよりはすこし明るくなっていた。

「よかった…」

妖に対して、蝶に対して二重の意味で夜はそう呟いた。

「あ、真と客が夜食ねだりに中央館に行ったぜ」

「そうなんですね、後でお礼言わないと…」

「だな」

「皆…で食べた方がおいしいですよね、やっぱり…」

蝶がしょんぼりとしている。先程のこともあったので一人ずつで食べた方が良いと思ったのだろう。

「なら、女子と男子で分かれて食べればよいではないか!交流も兼ねて!怖がっていても仕方あるまい!」

英がそれに対して、ニコっと笑って言った。

「それに今度は、二人で行ったんだ。彼らが犯人ならそんなヘマはしないと思うぞ!」

どうだ?という顔を蝶に向けている。その顔で蝶は元気が出たのだろうか、フッと笑った。

(よかった…蝶元気なさそうだったから)

夜はその様子にホッとした。

「そうですね、確かに。そうしましょうか」

蝶は少し嬉しそうである。

「よし、そうと決まれば解散だな!」

英の解散の言葉で考察会はお開きとなった。そして、この蝶の案で女子と男子に分かれて夜食を食べることとなった。

次の夜食編は女子部屋男子部屋で話が分かれています!

どんな会話がなされるのか、皆様お楽しみに!

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