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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第5章 ―オーガ大陸激闘編―
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第八拾九話 暴発した酔拳

 度々の魔族軍の攻撃があったものの、拠点建設は予定どおり三日ほどで完了した。完成するとすぐさまユーヤは戦神のダンジョンとの扉を作成し、もしもの際の全軍撤退場所とした。


 また、この扉は向こう側からベルヌ宰相が出入りできるようにもして、王不在の際の緊急時に、いつでも対応を求められるようにもなっている。


 そしてこの拠点には大会議場が設けられていた。早速ユーヤは上級指揮官クラス以上をここに召集し、こけら落とし代わりの会議を始める。


「さて、飛空艦各艦と海上からは艦船によってこの周辺の地形は大体把握出来た。そしてこれがその地図となる。」


 ユーヤは壁際に立つヨーンに視線で合図を送ると、ヨーンはユーヤの後ろの巨大なスクリーンに映像を流す。


「これを見てもらえば判るように、海岸は今のところ砂浜が続き、山が丁度この拠点の周辺を囲んでいる。尤もその内の一つは吹き飛ばしてしまったけれどね。」


 ここでクスクスと笑いが起こった。


「いや、あれは正直やり過ぎたと俺も思っているよ。これからは自重しよう。」


 そう言いながらもユーヤも笑っていた。


「さて、未だにこの程度の情報しかない為、作戦らしい作戦は立てられそうにない。なので拠点防衛隊と進撃組に分けようと思う。ここからの説明はヨーン提督に任せる。ヨーン頼む。」


 こうして敵地の真っ只中であるにも関わらず、相変わらず和やかにリンドバウム軍の会議は執り行われたのだった。


 そして決められた事は、進撃軍は2方向に分かれる事。リンドバウム号とトライデル号、そしてホエール1番艦が第1師団として右回りに、ガリアン号とコンゴウ丸及びホエール2番艦を第2師団として左回りに展開する事とした。


 残りのセイト号とマジンゲル号及びホエール3番艦は拠点の防衛を行い、カラシン改などの艦船は、輸送艦のラウズ大陸との往来の護衛に就けたのだった。


「なお、魔族の城なり砦の発見の際には必ず全艦に連絡し、進撃部隊全軍を以ってこれを殲滅します。絶対に単独攻略などしないように。私からは以上です。」


「誰か質問はあるか?」


 ユーヤの問いに対して、ライガが手を上げる。


「流れはわかりましたが、何故我々マジンゲル号が守備に就き、冒険者集団のトライデル号が進撃部隊なのかお聞かせ願いたい。」


 ライガとしては納得がいかないのであろう。これに関してヨーンが挙手をし答えた。


「これはゼフィロスとアネモイの相性からの組み合わせとなりました。また、ライガ殿には最終決戦の切り札として奮戦して頂きたく、今は防衛をお願いしたいと我々参謀部では思っております。」


 ヨーンが巧い説明をしたとユーヤは感心した。この説明ならばライガも納得出来よう。自分を切り札とまで参謀部が言っているのだから。


 現にライガは少し照れているようで、頬が少し赤くなっている。


「う、おっほん!ヨーン殿ご評価有り難く思います。では我々獣騎士部隊は死にもの狂いで、この拠点を防衛しきってみせましょう。」


 そして、乗り物に弱いゼフィールドもまたお留守番なのだが、こちらは乗り物に乗らなくて済んで安堵しているようである。


 また、第1師団は奥方衆が乗っている為ヴァルキュリア全軍が乗艦し、第2師団にはベルツとアイリスの州軍が乗艦となった。これにより王宮騎士団は、獣騎士達と共に拠点防衛の任が割り振られたのだった。


 因みにホエール2番艦はテンゴウの、3番艦にはロンの機体が乗っている。つまりカイザーブレードは、カスバド以外が居残りになったのであった。


 これに対して元皇帝のベルドは、特に異論はないようである。彼から言わせればカイザーブレードの現在の主はアレクソラス13世であり、今はもう自身の護衛ではないと云う事であった。


 会議後、英気を養う為と称して宴席が設けられた。今回はユーヤも少しだけ参加するつもりである。士気高揚の為だ。


「皆、杯は持ったな?ではこれより、我々の勝利を願い…乾杯!」


「「「かんぱーい!」」」


 見張り番、そしてブリッジ要員以外の兵員全てに酒と肴は配られていた。ヨーンは寂しそうに退場し、リンドバウム号に向かっていった。


 ブリッジに着くと、酒はないが肴だけは置いてありブリッジのクルー達はそれを立食スタイルで頬張っていた。


「美味そうだなあ。どれがお奨めかな?」


 ヨーンがクルー達に尋ねる。

「こっちのサイコロステーキはいけますよ。」

「俺はこっちの焼き魚だな。」

「いやいや、この馬刺しもいけるぞ。」


 どうやら皆、酒はなくとも満喫しているようである。


 鳥人魔族を壊滅させた為か、魔族の夜襲はなさそうである。山をも吹き飛ばしたリンドバウム軍の恐ろしさに、魔軍は攻撃を躊躇しているようであった。





 そして夜半頃、酔っ払った陛下がブリッジへ乱入…ご訪問あそばされた。


「ヨーン~~~、どうだ?何事もないな~~?ヒック」


「陛下~…艦内は禁酒と自分で決めたんですよね?」


「らにを言ってる。今は呑んでないろ。のんらあとだ。」


 ヨーンの困り果てる姿を見て、クルーはクスクス笑っている。


「おい。皆笑ってないでこの御仁を何とかしてくれよ~。」


「しょうがないにゃ…じゃあうちが部屋まで連れて行くにゃ。」


 そう言うとキャシーはユーヤに肩を貸して通路へと消えて行った。





 数10分後…帰って来ないキャシーが気になり、アルルが見てこようか?と言い出した時に皆はある事に気付く。


「なあ…『王の酔拳』て知ってるか?」


 操舵手のクルーが呟く。するとクルー全員がヨーンの方を振り向く。その状況になってヨーンは初めて事の重大さに気がつく。


「あ、あ、ああああああ!!やっちまったぁ!!!」


 ヨーンはそう叫ぶと、必死の形相で通路に駆けて行った。もしもこんな事がバレたら、奥方衆に責められるのは、昔から酒を呑んだ際の陛下の手癖の悪さをよーーーーく知っている自分である。


 夜間照明の薄暗い中を兎に角ヨーンは走り、ユーヤの個室前へと辿り着く。


 しかし時既に遅かった。


 陛下とキャシーはそれは楽しそうに、文字通りニャンニャン鳴いていたのだった。


 二人の鳴き声を聞きながら、個室前でヨーンは泣き崩れた。





 翌日、ユーヤとヨーンは奥方衆に睨まれ、キャシー以外の女性クルー達に蔑まされ涙を流す事となった。


「また諜報隊ですか?まだまだ欲しがりますか?」


 第一正室様である。


「また私の友人ですか?どれだけ欲しがりますか?」


 第二正室様でいらっしゃる。


「陛下、メルティ殿のお腹に宿したばかりですよね?」


 陛下には寛容な第三正室様も、呆れていらっしゃるご様子である。


「ヨーン…貴方はよーーーーく知っていた筈よね?それこそ従軍した頃から。」


「す、すいません。すっかり気が緩んでおりました…。」

「申し訳ない…帰ったらメルティ共々、ちゃんと式をあげまする…。」


 二人共朝から会議室で正座中である。酔って会議室で寝ていたメンバーが起き出し、事の顛末を見守っている。


「そうね。二人の両親にちゃんと義理を果たす為にも、式は挙げてもらいましょう。ウテナとカジも正式な式を挙げてもらってないから、合同結婚式にしましょうか?」


「わあ!それいい案です!!」

「おお、さすが御正妻様!!私も賛成です!!!」


 内心ユーヤも『まとめてなら国費も浮いていいなそれ』と思ったりしていた。


 それに勘付いたのか、マリオン…いや、マリオネートの目がギラギラと光り出している。それを見たユーヤが思わず仰け反る。


「皆への償いはそれでいいとして、さあ、私にはどんな償いをしてくれるのかしら?」


 思わずユーヤは小さく「ひぃ」と情けない声を上げていた。


「お金で買える物はダメよ。しっかり誠意を見せて欲しいわね。」

「え、えっとー…。」

「さあ!さあさあさあ!!」


 そんなこんなで、ユーヤは魔軍討伐後にシアと三人だけで、戦神のダンジョンの別荘での一週間以上の休暇を約束をさせられるのだった。


「その際には、滅亡の危機でも発生しない限り、職務にも応じない事。いいわね?」


「はい。マリオネート様!!!」


 そうして、何故か書かれた書面に拇印を押させられたのであった。さすがにこの行為を見た他の奥方衆(新規含む)もドン引きしていたようである。


「そういうわけで、今日からよろしくね。キャシー・クノン・コンテ殿。」


 マリオネートはそう言うと、キャシーに優しく微笑みかけた。


 キャシーは第一正室のその微笑みに心打たれ、以後完全な第一正室派の一人となる。陛下に何を言われようとも、第一正室の命令こそが絶対となるのだった。

キャシーに関しては

名前を付けた時点でこうなる事を考えていました。


獣人族からも一人は嫁さんを入れないとな。


と。


なんかユーヤの節操のなさが批判を受けそうです。


※今、自身でこれを含めたこの先3話を読むと…

あまりにユーヤが子供っぽい行動をしていて

とても恥ずかしいです。

しかし書き換えるのもどうかな?と思い、そのままにしておきます。


因みに、スキル名鑑を少しイジリました。

興味があれば、どこが変わったのか探してみてください。

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