第八拾七話 オーガ大陸上陸戦
新章突入です。
あんまり戦闘ばかり描くのはきついんですけど
なんとか頑張ります。
リンドバウム号を先頭に各艦はV字の編隊を組み、それに守られるようにホエール級が続く。また海からもカラシン改級やダイワ改級と云った艦隊と、人員及び弾薬などを積んだ輸送艦がオーガ大陸を目指していた。
そして、ここに来て初めてユーヤは知る限りの情報を全軍に共有する。
『我々は魔王魔王と言って来たが、真の敵はその上に居る。オーガ大陸には3人の魔王がおり、これを統べる魔神が存在するのだ。』
マイクを通してこの声は全艦に放送されている。この事実に、皆は騒ぎ出すどころか、逆に声を潜めた。
『…皆を騙すような事をしてしまっていたとは思っている。しかし、ラウズ大陸内でこれらが伝われば、復興中の街などでは恐慌した民がそれまでのやる気を失ってしまう可能性もあった。また、恐らくこれを知った議会では尚更に決定が遅れるどころか反対する者達が、どんな策に出るのかも解らずこれまで秘匿して来てしまった。』
目を閉じながらユーヤは謝罪の意味を込めて、自身に向けられているカメラに頭を下げた。
『本当にすまないと思っている。このような事を秘匿して来た事を心から詫びる。』
長い間頭を下げ続けるユーヤに、ヨーン達は居た堪れなく思っていた。
そしてホエールではモニターを凝視しながら、マリオンは泣いていた。色々と理由は付けているが、恐らくこれらを一人で秘密にして来たのは女神マリオンの為であろうと。
魔神の存在に気付けなかった女神マリオンを庇うために、夫は一人その罪を被ろうとしている。それを想いマリオンは泣いていた。
「バカ!何で今まで言わなかったのよ!!」
マリオンはそれをはっきり口にしながら、両の目から幾つもの雫を床に落とす。それをウテナとサクヤが抱きしめると、彼女は二人に抱きとめられたまま蹲ってしまうのであった。
『この罪はラウズに帰還後に幾らでもその罰を受けよう。だがしかしだ、今は堪えてくれ!我々は幾千年もの長い間蹂躙され続けて来たこの歴史を塗り替えねばならないのだ!それが我々の使命だ!!』
長い長い沈黙が各艦を包む。そしてその時を待っていたかのように、飛空艦ガリアンから割り込み通信が全艦に流れた。
『よく言ってくれた!!我々ベルツ州は国王アレクソラス13世を支援する!今この時代に我々が立たずして誰が立つ!?そうだ!我々がやらねばならんのだ!!!』
ベルドのこの言葉に感化されてコンゴウからも割り込みが入った。
『我ら防人衆もベルド閣下に同意である!我らもまたアレクソラス陛下を死んでもお守り致す所存!!』
そしてテンゴウに続いて、次々と各艦から割り込み通信やら伝文やらがリンドバウム号に送られて来たのだった。
ユーヤの瞳は真っ赤になりながらも、涙を見せぬように見開き、そして更なる感謝をこめて無言でユーヤは再び頭を下げていた。そしてようやくユーヤは床に涙の染みを作ったのだった。
「陛下、心中お察し致します。勿論我がリンドバウムの旧臣達は、変わらず陛下の御為に邁進する所存です。」
ヨーンは艦長席を降りて、ユーヤの傍に来ると片膝を付きその姿勢のまま右腕を胸に当てて、リンドバウム式の敬礼をした。
周囲を見ればクルー全員が立ち上がり、やはり敬礼をしている。ユーヤはそれを見て安堵からか、更に大粒の涙を流すのだった。
暫くして、気を取り直したユーヤは再びカメラの前に立つ。目は赤いままだったが、涙は全て拭き取ったようだ。
『諸君。ありがとう。こんな大規模な戦がせめて我々の次代には起こらぬように、俺も全力を尽くす。さあみんな!勝ってトライデルで大宴会だ!魔族に後れをとるなよ!!』
空から、そして海上からリンドバウム軍の精鋭達の声が轟く。オーガ大陸上陸作戦まで、30分ほど前の事であった。
オーガ大陸が目の前にまで迫ると、空中を飛び交う影が見え始める。鳥人魔族と魔鳥の群れであった。
『全艦!まずは手始めにデカい花火を上げてやれ!!砲撃開始!!!』
ヨーンらしからぬノリで砲撃の合図が出されると、飛空艦と海上の戦艦から魔導砲の掃射が始まった。カラシンやダイワも改装されて、魔導砲が甲板部に取り付けられている。その為空中の敵影に対しても対応可能となっていた。
砲撃の中、掻い潜って来た者には、魔銃隊の銃撃の嵐が待ち構えていた。勿論こちらの全体指揮は、ジード・ガンプである。
『艦に…特に輸送艦とホエール級には近づけるな!!トライデル班!何をやってる!!回り込まれるぞ!!』
冒険者集団のトライデル号の人員は、こう謂った作戦には慣れていない為、銃撃に遅れがあるようだ。それを珍しく、ジードが怒鳴り散らしている。
「よーし、そろそろかな。イザナミとエンリル、そろそろかましてやってくれ。」
ユーヤはマイクを手に持つと、ホエールに連絡を入れていた。
『お義兄様、迎えは?』
「まだいい。まずはどちらも魔導ランチャー装備で出てくれ。弾が切れたら後は任せる。」
『ラジャー了解!サクヤ姉様、ランチャーのコントロールはそちらにお任せします。』
『任されました。イザナミGO!!』
『エレーナ・クレィル。エンリル行きます!』
ホエール1番艦から紫の機影と黄金の機影が飛び立つと、他の2艦からも3機ずつ機鋼甲冑が飛び立った。2番艦からはテンゴウ率いるアイリス部隊、3番艦からはロン率いるベルツ部隊である。
これら8機はエンリルとイザナミを中心に陣形をとると、一斉にランチャーを構えて掃射した。
魔族と魔鳥は突如現れた巨人と、その魔導兵器に驚き困惑しながら次々と落とされて行ったのだった。
『姫様。これよりホエール上陸の為の道筋を作ります。我に続いて頂きたい。』
テンゴウの指示に、サクヤは素直に了解のサインを出す。ただし、イザナミにVサインを出させて、それを合図としているようである。
しかしそこはテンゴウ。サクヤの癖は熟知しているので、スルーして低空飛行に入った。
『むぅ…相変わらず御堅いです。』
『サクヤ姉様、そんな事よりも他の方たちに後れをとりますよ?』
各機は上陸すると半数が陸上の魔族に、半数が空中の魔族軍にランチャーを掃射して殲滅して行く。そして頃合いを見てホエール3艦が地上へ着陸した。
その上空では飛空艦6隻が魔導砲を随時発射しながら、制空権の維持をしている。そして弾の切れた機鋼甲冑は、それぞれ専用の武装を手に持ち替えていた。
テンゴウの機体が手にするのはオーソドックスに大剣を、ロンの機体は拳や腕を保護する為の装備を着用していた。
まずはウテナにシフトチェンジしたイザナミが飛び出す。
『マキビシシューター!!』
腕に装備された武具から大きなマキビシが幾つも射出され、魔物や魔族を蹂躙する。そして怯んだ相手にはイザナミの小刀の一閃が襲いかかった。
『さすがニンジャマスターですね。ではベルツ流格闘術をお見せしましょう!!』
ロンの機体がイザナミの更に先に居る魔族の群れを捉え、急加速急接近をする。そこで拳を握ると、ロンの機体は右ストレートを放ったまま直進した。その後ろでは何頭もの魔獣や魔族の血飛沫が上がる。
『ふ、我の剣は守りの剣。故に―』
テンゴウがそう呟く間に魔軍の群れがテンゴウの機体を覆い尽くした。しかし――。
『斬!!!』
一瞬にしてそれらは骸となった。
『我の剣は返しの剣。無闇に近づけばこうなる。』
そうして機鋼甲冑が完全に戦場の空気を制すると、ホエール各艦から騎士達が降り立った。それを指揮するのはカイザーブレードきっての船酔い男…もとい、筆頭ゼフィールドである。この編成に伴いブランがその副官を務めている。
「顔色が優れないようですが、大丈夫ですかい?」
「だ、だ、大丈夫だ。ち、ちゃんと用法用量は守っている。うっ。おごぇえええ!」
「…言わんこっちゃない。」
以前の薬よりも弱い薬の為か、あまり効き目がなかったようだ。ゼフィールドは盛大に汚物を吹き出していたのだった。
ブランは溜息を吐きながら、通信機を取り出し救護班の手配をする。
「あーあー聞こえるか?こちら陸戦隊副官のブランだ。早速だが一名搬送を頼む。え?怪我?違う違う。ゼフィールド殿と云えばわかるか?そうだ。ゼフ殿だ。ホエールの脇で四つん這いになってるから頼んだ。」
「す、すまぬ副官殿…。」
この連絡を傍受していたユーヤは、予想通りのお約束事項にリンドバウム号のブリッジで溜息を吐いていた。
「ヨーン。お前の言うとおりブランを付けておいて、正解だったよ…。」
「は、ははははは…。」
二人の額には、幾つもの青い線が入っているように見える。
その頃カスバドも同じ連絡を傍受して呟いていた。
「本当にお約束を守る男じゃのう…。情けない…。」
そんなゼフィールド陸戦隊師団長を脇目に、ホエールからは魔導力エンジンを用いたジープが何十台も上陸して行く。今次魔族戦争用に作った物で、機鋼甲冑のような強力なエンジンを必要としない為、多く量産出来たようだ。
海上の輸送艦も砂浜に向けて上陸艇を何艘も射出していて、これにもジープが搭載されていた。
これらは、馬などの生き物を長期搬送するよりも、コストが掛からないと踏んで投入された物であった。そして、騎馬隊用にオフロードバイクも開発し投入している。
「各隊!機鋼甲冑が暴れている今の内に前進!!戦況が落ち着き次第に鉄条網を張るぞ!作業用の魔法所持者をしっかりガードしろよ!!」
「「「了解です!副官殿!!」」」
「ヴァルキュリア諜報隊は救護班の手伝いを頼む!腕の立つ者はその護衛も忘れるな!」
足早にブランの指示が飛ぶのを、皆よく付いて行っていた。この分ならこの地に拠点を作る事も、それほど苦労はなさそうである。
『ウテナ・サクヤ機ホエールに補給の為帰還します。ホエール周辺の人員は注意されたし!繰り返す――』
戦況が落ち着きだした処で、一旦ツクヨミ姉妹は休憩に入ったようである。残りの7機は哨戒任務に転換したようだ。リンドバウム号を始めとした飛空艦隊も、トライデル号を空中で待機させた以外は地上に着陸していた。
そしてゼフィールドのように乗り物酔いの激しい者達の為に、地上には幾つもの野営テントが陸戦隊によって張られて行った。
艦の中の方が安全なのだが、こういった生理現象と云うモノを持つ者の為に配慮せねば、長くは戦えない。
そう、これからラウズ大陸の動乱以上に激しい戦いが、このオーガ大陸では待っているのだから。
まずは上陸戦でしたが
描きながら私の頭の方が忙しすぎて
パニックしそうでした。
※お知らせ
前回の外伝にて、マリオンのセリフにて
『魔神を倒したような相手』と云うセリフがあったのですが
『倒した事になっているような相手』に修正しました。
多くは語りませんが
そういう事です。




