第八拾五話 獣王海
アナトとイザナミの2機は、獣王海の深海にて七大幹部の一人海獣王ハクゲイと対峙していた。ハクゲイは数でユーヤ達を圧倒しようとしていたが、ウテナのニンジャマスタースキル、影分身によって増殖したイザナミに手を焼いていた。
『えーい!たったの5機の人形に何を手を焼いておる!討ち取れ!討ち取るのだ!』
ウテナの援護の許、海獣達を斬り伏せていたユーヤ…アナトであったが、ハクゲイの狼狽える様を眺めながら首を傾げるような動作をする。
『なあ、ハクゲイよ。誰が増援がウテナだけだと言った?』
『え?』
その刹那に激しい渦が海獣達を消し飛ばした。その渦は、ハクゲイよりまた上方から湧き起っている。
やがて渦は収縮し、海中に幾つもの泡が浮かぶ中に、巨大な槍を担いだ黄金色の機体が現れたのだった。その機体に乗っているのはエレーナとロイエルであった。
『ロイエル、次は私の番よ。メイン交代!』
『了解です。シフトチェンジ!』
剣聖と槍聖の乗るのは風の精霊の宿った『エンリル』である。彼は男性態の精霊である。
エンリルはシフトチェンジ完了と共に、それまで手に持っていた槍を頭上に掲げる。そしてエレーナが『ウェポンチェンジ』の掛け声を発すると、槍はガシャリと音を立て、収縮して更に変形を始める。
ガチャガチャと音を立てながら変形を終えると、槍は大剣へと姿を変えたのだった。
『エレーナ様。変形完了であります。』
『ありがとうエンリル。では、行くわよ!閃光斬!!!』
不意を突かれた格好のハクゲイ率いる海獣軍団が、その光の奔流へと呑み込まれ、消えていく。海獣達はほぼ壊滅状態となっていた。
『なにぃ!?なんだ?何なんだ貴様らは!』
某仮面を付けたバイク乗りの宿敵、アポ○ガ○ストさんもかくやと言わんばかりのハクゲイさんの言葉に、ユーヤは少し恍けて答える。
『なにって…聞くまでもないだろうに。敢えて言うなら、アレクソラス13世とその御一行様?』
『陛下そこは、通りすがりの王様だ、覚えておけ!ですよ。』
『ウテナあんた何の話しをしてるのよ?』
『いえ、詳しくは言えませんよ。色々引っ掛かるので。』
『色々ってなによ?』
『ストップ!ストップですお妃様方!!』
ロイエルが二人の会話を止めてくれた。例の如く陛下ポイントが上がった事であろう。
そして毎度の事だが、置いてけぼりの七大幹部ハクゲイさんは怒っていらっしゃる御様子である。
『貴様ら!ここは戦場であるぞ!!私をからかっているのか!?』
ハクゲイが激昂し、大口を開けて激流の渦を放射する。アナトとエンリルは4機に分身しているイザナミの後方へと退くと、イザナミ達は両の手をクロスし魔法による障壁を発生させた。
『闇魔法による重力障壁…グラビティーウォールです!!』
その声と共に激流は4枚の障壁に吸い込まれていく。この重力障壁と云うモノは、ブラックホールのようなモノであるらしく、辺りに散らばる海獣達の肉塊さえも吸い込んでいた。更にはハクゲイさえも引き寄せていたのだった。
『ぬあ!み、身動きがとれん!?』
ハクゲイはその巨体をくねらせて、もがき足掻いている。
そんな状況を見逃すわけもなく、エンリルが正面より瞬絶で斬りつけると、ハクゲイは辛うじて動いた腕を振るい、三つ又の鉾でその攻撃を受け止めた。
『く、年若い剣聖よ。早々この私を倒せると思うたか?』
『いえ、思っていません。私は囮なので。』
『なに?囮だと―』
直後にズドンと云う衝撃音が海中に響くと、ハクゲイが呻く。ハクゲイの後ろにはアナトがいつの間にか回り込み、居合の一撃を放っていたのだった。
その衝撃で前のめりになったハクゲイに、エンリルが追い打ちの連撃を放つと、ハクゲイの体中から血が吹き出す。
機鋼甲冑によって其々が普段の何百倍もの威力の攻撃を放てば、七大幹部との戦闘も児戯に等しいものであるのかもしれない。
ほんの数分でハクゲイは虫の息と云った状況になっていたのだった。
『さて、武士の情けと云う奴だ。そろそろ終わりにしてやる。テストに付き合わせて悪かったな。ハクゲイ。』
ユーヤがハクゲイにそう告げると、アナトが太刀を斜めに構える。ハクゲイは既にその戦闘意欲を失いかけていたようで、逃走を図ろうと手足をバタつかせて闇雲に更に深海へと身体を向ける。
しかし、そこにはイザナミ4機が立ち塞がり、4方向からの小刀による斬撃が襲いかかった。
『ひぎゃ!』
七大幹部とは思えない情けない声をあげるハクゲイを、エンリルが追撃する。
『裂光斬!!』
脇腹に命中したそれは、脇腹を抉りハクゲイの臓腑を海中へとぶちまける。
『うああ”あ”!!!』
完全にその巨体は無防備となり、ハクゲイは水面方向を見つめる。そしてその方向へと手を伸ばすが、次の瞬間にその視界は二つに別れていった。
『三流派融合剣イカズチ!!!』
ユーヤの声は、ハクゲイの耳には既に届いてはいなかった。頭から真っ二つに分断されたその身体は、更に深く深く深海の底の方へと沈んで行ったのだった。
「すまんな。ここまで力の差が出るとは正直思っていなかったんだ。せめて安らかに眠ってくれ。」
敵であるとは謂え、あまりの蹂躙劇にユーヤは目を閉じ黙祷をする。クレィル姉妹、ウテナ、ロイエルもそれに倣って黙祷した。
気付けば周囲を鮫達が囲んでいた。
『そろそろ戻ろうか。俺も魔力がなくなりそうだし。』
『『『了解。』』』
3機の機鋼甲冑は、一気に水面まで上昇するとそのまま飛行して、上空で待機していたホエールへの着艦体勢をとっていた。ホエールの横にはリンドバウム級3番艦マジンゲルの姿が見える。
いざと云う時の為に待機していてくれたようである。
『ライガ、後で報告がある。取り敢えずマジンゲルの城ででも落ち合おう。』
『了解致しました。城の方には風呂と食事の準備をさせておきます。』
『助かる。魔力の遣い過ぎで腹ペコだ。』
モニター越しに見えるユーヤの表情を見て、ライガは安堵していた。
この獣王海にユーヤがテストに入る際に、ライガにこう言伝していた。
『獣王海の主を釣り上げに行って来る。もしもの事があるかもしれないので応援を頼む。』
そう、今回の機鋼甲冑の水中試験は、獣王海に潜むヌシを退治して、獣王区の海辺でも人々が生活できるようにする為でもあったのだった。そしてその目論見どおりの獲物が掛かり、獣王区の海は2000年ぶりに魔族も海獣もいない海へと変貌したようだった。
ドス黒かった海水が、次第に青みを増している。そしてホエールとマジンゲルの周囲には、どこから飛来したのか、カモメたちが併走するかのように飛んでいた。
「こんな風景を見れば、報告内容は何となくわかる。城では王達の冒険譚を聞かせてもらおう。」
そうライガは呟くと、ブリッジ内のクルーを見渡し大声を張り上げて告げるのだった。
「皆、よくこの光景を焼き付けておけ!艦のカメラでの撮影も許可する!2000年の長きに渡った海獣王国が瓦解し、我らの元にこの海は返ってきたのだ!!」
「「「了解致しました!!」」」
ブリッジ内では窓の傍に張り付く者や、艦載カメラの映像を食い入るように見守る者達の笑顔が溢れた。また、艦内各所でも似たような光景が見受けられた。
獣王区の真の復興が、これから始まる。この解放された獣王海によって。
ちょっと駆け足気味だったでしょうか?
想定よりも短くなってしまってるし…。
機鋼甲冑のスペックを高く設定しすぎたかもしれません。
派手に演出しようと
シア様の時に時空まで斬っちゃった為
私の想像の範疇では、軽く七大幹部を越えてしまいました。
たぶん魔神に匹敵する能力になってしまったかも…
ああバカ!やりすぎちゃったよ!!(号泣)
※雑記
5章エピローグまで描ききったよ!(涙)
なので
9月から残りを
連日投稿いたします。
さて、その後の6章に関しては…
うーん…。
うーーーん。。。。
…6章と表記せずにAPPENDIXとしようかなあ。
うん。そうしよう!
だってもう私からすれば外伝とか番外ですから。
そんなわけで、それに伴って
エンサイクロペディアも予定を色々前倒しにする事と思います。
その際にはまたこの後書きに
お報せを書いておきますね。
それではSEE YOU!




