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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第八拾四話 海中のアナト

「アナト、次は急旋回からの急降下だ。しっかりサポートしてくれ。」


『イエス、マスター。』


 機鋼甲冑アナトが空中を舞う。通常航行においての最高速で急旋回をし、そこから流れるように降下する。この際のパイロットや機体への負荷は、重力制御装置によって大幅に軽減されており、乗り物酔いにさえならなければ、一応子供にも耐えられる程である。


「よし、このまま水中に突っ込むぞ。」


『ラジャー。』


 ズドーンと云う衝撃音を響かせて、アナトは水中へと飛び込んだ。


 水深500m程潜ったあたりで警告音が鳴り出していた。ユーヤはマニュアル操作でグラビティーシールドを展開する。これによって機体の周りには大きな膜のような物が発生した。しかしこれは膜ではない。


 グラビティーシールドと云うのは一種のバリアである。機体周辺の重力を変動させる事によって外圧や、外からの攻撃を遮断すると云うものである。つまりこの膜のように見える物は、ゼロに近い機体周囲の水圧と通常の水圧とが見せている物なのだ。


 これは空気中でも似たような姿を見せる物と思われる。


「アナト、違和感はないか?正直に言ってくれ。」


『特にこれと云ってございませんが…一つあるとすれば、搭乗者がマスターお一人である事に違和感を憶えます。』


「それに関しては勘弁してくれ。今日はそのテストなんだから。」


 そう本日のテスト内容は、搭乗者一名である時の搭乗者の魔力消費量のチェックと水中に於ける機体の性能テストであった。


「ふむ、新たに付けたコンバーターのおかげで、1人でもそんなに急激な魔力消費はなくなったみたいだね。これなら二人乗り時の消費が更に抑えられたかな。」


 セーラの事故を反省して、改良を加えているようだ。セーラの一時的精神障害は、大量殺戮の目撃だけが原因ではない事がわかった。他の要因として解ったのは、機鋼甲冑がスキルを繰り出す際に消費する魔力量が膨大であったためでもあった。


 あの事故の際、ユーヤとマリオンの魔力だけをアナトは消費したわけではなく、シアとセーラの魔力も消費していたのだった。


 シアは勇者と女神の娘だけあって、一般の子供よりも多く魔力を保有していた為に何の障害も起きなかったのだが、セーラは正に一般の子供であり、その保有量は微々たるものだったのだ。


 そうした事もあり、ユーヤはアナトの更なる改良に踏み切ったのだった。セーラの魔力の底上げなどは、ユーヤの口からは言えない事なので本人の意思に任せる事とした。


 何しろ言い方は悪いが、魔力供給の予備と云う一点で言うならば将来的にシアの傍付きとなる、テンゴウの甥タケルがいる。ウテナやサクヤを見る限り、勇者因子を持つ一族の者だけに不安はないだろう。


 やれる者がやれる事をすればいい。そうユーヤは思っていた。


 ただそれまでに、このアナト達機鋼甲冑をシア達が戦争で用いなくても良くすればいいだけの話しだと、ユーヤは自身を鼓舞していた。


 そうして深海1000m辺りまで来た時に、機体への負荷に関してではない別のアラートがコックピット内に響いた。アナトが緊張しているようである。


 ユーヤは内心『これはひょっとしてお出ましかな?』と、それまでマニュアル操作をしていた端末を引っ込め、腕にモーションアームを装着する。


「アナト。これよりモーションモード及び音声入力を起動する。心してくれ。」


 アナトは創造主の言葉を理解し、周囲を警戒する。


 深海の中を巨大な影が蠢いている。恐らくその影の大きさは50m程はあろう。


『クジラか?いや違う…腕や脚のようなものも見える…。そうすると俺の予想以上のモノが釣れたのかな?』


 ユーヤはその影を見ながら相手の正体を探っているようだ。


 不意にその大きな影は口を開けたかと思うと、凄まじい水流の嵐がアナトを包んだ。重力制御によってアナトはその姿勢を保ってはいるが、グラビティーシールドで防御しているのにも関わらず、機体が軋む。


「アナト、どうやら大物が現れたようだ。恐らくこいつは海獣ではないだろう。魔王七大幹部か何かだ。」


『は、はいマスター。相手の魔力量の大きさから言って、その見解は当たっていると思われます。また、どうやら周囲を海獣達に取り囲まれたようです。複数の魔力反応を検知いたしました。』


 アナトは初めて相対する魔族に緊張をしていた。しかも敵の中でも大物である。


「さて、この状況をホエールも感知していてくれればいいが、少し深く潜り過ぎているからな…。アナト、俺一人の魔力で閃光斬は何回使えそうだ?」


『3~4回と云ったところでしょうか。裂光斬も同じくらいです。』


 どうやらエクストラスキルとも云える技は、どれも似たような消費量らしい。そうなると乱発は出来ない。久能流剣術をメインに戦う事になりそうである。


「まずはデッカイ花火を打ち上げようか!閃光斬!!」


 巨大なクジラ魔族に向けて、シアが放った閃光斬と同等の威力で放つと、周囲の海獣達がその盾となり、閃光斬の光の中に消し飛んでいった。


 クジラ魔族は、その人のような腕でガードをしていたようだ。指の間には水掻きが見える。無数に飛び散った海獣達の血肉を見るや、クジラ魔族は目を見開き口を開きボエェエエエエ!と咆哮する。


『勇者王とその人形め。貴様らよくも私の可愛い海獣達を!!』


 水中であるにも関わらずクジラ魔族の声がユーヤの耳に鳴り響いた。どうやら超音波のようなものか、はたまたテレパシーであろうか?


「クソうるせー奴だな!喋れるんなら何者か名乗れよ!!」


 未だにユーヤの頭の中を魔族の声が反響している。そのあまりの煩さに、ユーヤは呻いているようだった。


『確かに名乗らずに於いたのでは勇者王殿に失礼でありまするな。我は七大幹部の一人、海獣王ハクゲイ。お相手願おう。』


 ハクゲイはその名のとおり真白いボディーに、ヒレの代わりに人族の手足を生やし、鎧を装着した巨大なクジラであった。その腕は今しがたの閃光斬によって手甲が吹き飛び、赤く腫れ上がっているようだった。


 海獣達が身を挺していなければ、こんなものでは済まなかったはずである。


『ところでハクゲイとやら。つかぬ事を聞くが、お前さんこの獣王区の海の中をどれくらいの間治めてきたんだい?』


 戦闘の真っ只中、ユーヤが機鋼甲冑のスピーカーから問いかける。そう、ここは海獣達の棲家である獣王海だったのだ。


『ふん、そんな事を聞いてどうしようと言うのだ?貴様が生まれる遥か以前。それこそ2000年以上も昔からこの海は私の物だ。』


 ―ビンゴ!


 獣王海が魔王七大幹部ハクゲイの物である事なぞ、ユーヤは知らない。ただカマをかけただけだった。だがそれは、今のユーヤにはとても重要な事であった。


 そしてその情報を得るやユーヤは、ハクゲイの下方に回り込むとあからさまに(・・・・・・)スキル技の構えをとった。


『ふん。そんな見え透いた攻撃当たるものか!!』


 そんなハクゲイの言葉など関係なくユーヤは技を発動する。


『裂光斬!!』


 ハクゲイの宣言通り技は避けられた。裂光斬の衝撃波がハクゲイの頭上で炸裂し爆発する。


『マスター、これではスキル技はあと1~2回が限度となります。何故このような無駄撃ちを?』


「気にするな。じきに判るよアナト。」


 そんな会話をユーヤとアナトがしている間にも、次々と新たな海獣の増援が現れていた。既に完全に逃げ場はないかのように見える。


 ユーヤ…機鋼甲冑アナトは太刀を一旦鞘に納め、柄に手を添えて低い姿勢で構える。久能流抜刀術の構えであった。


『ふふふ…多勢に無勢ですよ。勇者王。さあ、この群れに呑み込まれてしまいなさい!』


 ゴウっと激しい水流の音と共に、海獣の群れがアナトに襲い掛かる。その刹那に海中は正に血の海と化した。


 飛び散ったのは海獣達の肉片であった。居合によって、周囲を取り囲んだ海獣は皆細切れにされていたのだ。その肉片と大量の血によって、海獣の群れとハクゲイはアナトの所在を見失ったようであった。


『小賢しい!何処に居ようとこの数には――』


 そうハクゲイが言いかけた瞬間、今度は群れの上方が血の海に染まる。


『そこですか!行くのだ!我が同胞達!!』


 血の海の中に見える影を目掛けて群れが一斉に攻撃を仕掛けると、影は二つに分かれる。ハクゲイはそれを視認すると、驚愕したかのような表情を見せた。


 しかし、その影とは別方向で新たな血の海が発生する。その血の海から現れた機体――それこそがアナトだった。では、上方に現れた影はなんだったのであろうか?


 海水の色が少しずつ元の色を取り戻しつつある中、チラリと見えたその二つの機影は紫色であった。イザナミだ。


『ふっふっふー。今日はマリ姉様とのコンビで、女神パワーのイザナミさんです!おかげさまで分身も思いのままなのです!』


 そうウテナが叫ぶや、イザナミは2体から更に分身し4体に増殖していったのだった。


「ウテナ、調子に乗り過ぎないでよ。この分身て、魔力制御してる側は大変なんだからね!」


「マリ姉様、外連味たっぷりのポーズ中に、無粋なツッコミはおやめいただけませんか?」


 ウテナの言うとおり、四つに分かれたイザナミは、それぞれが某戦隊を思わせるポーズをとって海獣達を威圧していたのだった。


『増援ですと!?この位置をどうやって特定したのです!ここは深海であるのだぞ?!』


 ポーズをとる4体のイザナミの真ん中にアナトが立つと、ユーヤは太刀を抜き上段の構えをとる。これで真ん中にレッドが揃った事になる。他は皆パープルだが…。


『さっき派手に放ったスキルを何だと思ったんだ?あれは別にお前さんに当てる必要なんかなかったのさ。』


 そう、ハクゲイの下方から放った裂光斬、その爆発が起こったのはその頭上…つまりその衝撃波は水面へと駆けのぼって行ったのだった。


 そして、それを探知したホエールがイザナミを緊急射出したと云うわけである。


『創造主があのような場面でスキルを発動したのは、この為だったのですね。恐れ入ります。先程は失礼致しました。』


 アナトがユーヤに謝罪する。


「気にするなよ。俺がちゃんとアナトに伝えなかったんだ。戸惑うのは仕様がないさ。それよりこれからが本番だ。気合入れて行くぞ!!」


『はい!マスター!お供させていただきます。』

これで七大幹部で未登場は

後一人です。

この最後の一人の設定は前々から決めてあります。

しかし登場は5章に入ってからの予定です。


※雑記


なんですか

この今年の気温は?


連日赤いマークが点いてて、死んじゃうかと思いましたよ。


私は現在、しんちゃんの街に住んでるんですが

最高気温38度までいきました。


早く秋が来て欲しいです。

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