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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第八拾参話 側室騒動

 ナハから帰って来てからも、ユーヤはずっと戦神への嫌がらせを考えていた。そして戦神が嫌がる事イコール、戦神の分け御魂と融合している自身が嫌がる事でもあることに気が付く。


「ダメじゃん。」


 テラスでお茶を飲みながら、ユーヤは口からその結論を漏らしていた。


 マリオンがユーヤの顔を覗き込む。ウテナもおカジも不思議そうな顔をしている。ヒッターは…姫様達の相手をして遊んでいた。


「おお、イズナ様もハヤテ様もあんよが上手でございますよー。ああ、シア様。爺の体は一つしか御座いません。お待ちくだされ。」


 そこに現在、セーラの姿はない。


 僅か5歳か6歳の少女が、大量殺戮を目の当たりにしたのだ。しかも自身の乗る機体によってだ。到底耐えられる事ではない。それ故にユーヤは対外的には『夏休み』と云う事で休ませているようだ。


 しかし仕事熱心なセーラの母ネイは、それでも出仕して来ていて侍従達や乳母達の手伝いをしていた。セーラの傍に居てやらなくていいのかとマリオンがネイに聞いたが、ネイは笑顔でそれに答える。


「屋敷ではうちのメイド達が世話をしてくれています。それにもう大人の階段を嫌でも登り始める年頃です。一人にさせてあげる事も寛容かと思います。」


 そう言われては、誰も彼女を止める事は出来ない。ユーヤも承知した。これに喜んだのはネイのパンケーキの恩恵に預かる門番や、ネイの手助けに助かっている侍従や乳母達だった。


 こういった者達の態度を見て、ユーヤはネイの肩書を変える事にした。『セーラ嬢お付』から『侍従世話役』に変更したのだ。これを聞いた侍従長は、飛び上がって昇天してしまうのではないかと思われるくらいに喜んでいた。『侍従世話役』とは、言ってみれば副侍従長のようなものだ。


 この変更によって、ネイの給金も跳ね上がる。


 現状の給金を聞いた侍従長が、『侍従世話役』となったのならば今の給金では相場と合わない、もっと上げるべきです!と、恐れ多くもアレクソラス13世陛下に抗議したのだ。


 普段ウテナとサクヤが侍従達に迷惑を掛けている手前、ユーヤはそれを承認するしかなかった。尤もユーヤもその辺は考えてはいた。ただタイミングを待っていたと云う感じであろう。



 このような状態である為、エテリナは職務が終わると馬に跨り、足繁くロータス家に通っていた。家庭教師と云う名目の元、既に自分の娘のように想うセーラの為に授業を続けていたのだ。


「セーラ、今日は具合はどう?」


「エテリナ先生…いつもありがとうございます。今日は野山を駆けるくらいには元気です。」


「あら、相当なものじゃないの!よーし、じゃあ今日は久しぶりに剣術の授業にしようかしら?」


「はい!」


 心の傷は深かったが、彼女はまだ幼い故に回復も早いのであろう。ほんの1週間前のトラウマを、セーラは振り払おうとしていた。その口調は以前よりも更に大人びて来たなとエテリナは感じていた。


「先生、それにしても宜しいのですか?先生のお腹には二人目のお子様が…。」


「いいのよ。この子も大事だけれど、今の私には貴女も大事なの。職務はあと1ヶ月したら産休をとるけど、貴女への授業はギリギリまで通うわよ。」


 セーラはそれを聞いて、正直安堵していた。


 二人は剣術の稽古を終えて、ダージリンティーを片手にアップルパイを食べている。二人だけの女子会は、これからも続いて行くのだ。セーラはそれが嬉しくて仕方がないようであった。


 そんなオメデタ話はエテリナだけではなかった。ミハイルがようやくエウロパとの婚約をして、3カ月後には婚儀をする事に決めたのだった。義姉の策謀にまんまと乗ったのだ。エテリナにとっては良い事尽くしである。


 それ故に教え子の為に、今の彼女は走り回れるのだった。





 そして更なるオメデタが続く…。いや、騒動かもしれない。時は更に一週間後の事である。


「ユーヤ…いつ手を出したの?正直に答えなさい!」

「旦那様!私の親友…部下に手を出すなんて…もう、最低!!」

「まあまあマリ様もウテナ様も、喜ばしい事ではありませぬか。」


 ―2対1か…。判ってはいたけど…。


 マリオンとウテナの額には青筋が、おカジさんはユーヤの擁護に回っている。ユーヤは第1、第2正室に対して平伏して謝っていた。


 その横にはメルティがチョコンと小さくなって座っている。


「ごめんウテナ…。私がお誘いしてしまったの…。陛下は悪くないのよ。」


「いえいえメルティ。この場合誘いに乗ったユーヤが悪い!」


「そうです。既に子供が4人もいるのですよ?そんな人が簡単に誘いに乗って、メルティに乗っかる…もとい!メルティを妊娠させるなんて許せません!!」


 そう、こちらのオメデタは、メルティだった。


 3ヶ月ほど前のちょっとした酒宴の際に、酔った勢いでメルティから告白され、ユーヤは乗ってしま…了承してしまったのだった。


 そして今、テラスは修羅場と化していた。


 グルルルルと唸る赤毛の狼と、牙をシャー!と剥く紫の瞳のスコティッシュフォールドを目の前に、勇者はただただ平伏していた。


「すまん。議会にはもう届出は出しました。お許しください。」

「すまんで済むわけないでしょ!」

「そうですそうです!これだけ美女を揃えておいて、まだ欲しがりますか!」


 ユーヤの傍らのメルティが涙目になっている。おカジさんがそれをフォローしているようでハンカチを貸していた。


「お二人共、そのような事は寝所で言ってくださいませ。メルティ殿が震えているではありませぬか!」


 ここで火花はマリオネートとおカジの方との間に移る。おカジの方の言い分は、悔しければ自らの美貌で示せ、と云う事なのであろう。


 二人がギャイギャイとやりだす中、ウテナは、しまった!と云う表情でメルティに駆け寄った。今更になって、親友を泣かせてしまった事に気がついたようだった。


「ごめん!ごめんねメルティ。貴女の事を考えずに…私…。」

「いいの。いいのよウテナ。だって私も悪いんだもの…。ウテナ達が羨ましくて…それで…ごめん…。」


 ウテナはユーヤに向き直り、メルティと同じように正座の姿勢をとる。そして手を床に付くと涙目でユーヤに懇願した。


「メルティの事はもういいです。だけれど、ちゃんとメルティの事を可愛がってあげてください。そして私達にも同じように接してください。」


 ユーヤは顔を上げて真剣な眼差しでウテナを見返し、そして誓った。


「わかっている。必ず皆を幸せにする。これは約束だ。」



 その日からメルティは、メルティ・L・クノン・コンテとなった。家屋敷の権利と子爵の称号は弟に譲る事としたようだが、世間に公表するまではそこからメルティは通う事となった。


 親兄弟は皆が彼女を祝福してくれたようで、ラース子爵家は安泰のようである。


 クノン王家は…暫く第1、第3正室との御寝所争奪戦と言う名の抗争(バトル)が続いたらしい…。さすがのユーヤも3週間ほどでフラフラになっていたようだった。


 しかしこれも、ある意味では安泰と呼べるのかもしれない。






 そして、シア様は3歳にして剣術のお稽古を始める事となった。先生は勿論…。


「陛下、こんなにも早くお約束が果たされる事、我は感無量であります!」


 ユーヤは急遽、テラスの傍に簡単な練兵用の場所を作らせていた。そしてそこには、白虎のような姿の男が大刀を片手に鼻息荒く佇んでいた。


「クーガー殿、シアは剣聖勇者とは謂えまだ3歳だ。無理はさせないように頼む。」

「わかっております!そうですな、まずは腕立て伏せ50回くらいから―」

「お前のとこの孫達と一緒にすんじゃねー!」

「では10回…も、まだきついですよね、はい。心得ました。」


 ユーヤが『怒りのパパオーラ』を纏っている事に気付いて、クーガー卿は自粛したようである。ユーヤは戦神への怒りを思い出してしまっているようだ。


「あいつが変な祝福をしなければ、こんな事させなくて済んだのに…畜生!!」


 クーガー卿は、陛下の怒りの矛先がこちらに向く事を恐れて、一先ずテラスのお茶席へと退散する。ウテナとおカジさんがそれを迎えてお茶菓子を用意していた。マリオンは第一正室然として、既に席で紅茶を口に入れている。


 シアはと云えば、只今の時間はお昼寝中であった。今日は後日からの授業の打ち合わせの為に、クーガーはお茶席に呼ばれていたのであった。


 お茶菓子の準備が終わり、ユーヤも席に着く。こちらは近頃はコーヒーのようである。奥方衆は全員紅茶のようだ…。いや、一つ空いた席にはオレンジジュースが注がれていた。


「メルティ・ラース只今参上!」


 かつてのウテナ張りに音もなく、お茶席の前に突然片膝を付いてメルティが現れた。


「コラ妊婦!そんなに飛び回ってるんじゃないの!!お腹の子に何かあったらどうすんのよ!」


 第一正室様が早速のお説教である。


「そうですよメルティ殿。我々の子供は国の宝でもあるのです。側室とは云え貴女も王族らしく振舞ってください。」


 第三正室は何やら王族としての在り方を説き始めた。


「メルティ。まだ脇が甘いです。登場の際にはもっと心静かに『メルティ・ラース、これに御座います』です。」


 第二正室は登場の仕方の講義のようだ。

 ユーヤとクーガーは飲み物を吹き出して、硬直していた。


 侍従達が毎度の事と、何事もなかったかのようにテーブルを拭き、ユーヤとクーガーのお召し物を拭いている。そこへネイがやって来て、ユーヤとクーガーに替えのシャツを手渡す。


 そして彼女らは一礼すると、また定位置へと戻って行った。


 ユーヤとクーガーは一旦着替える為にテラスを離れる事にした。




 二人が部屋で着替えている間も、女性陣のキャッキャと騒ぐ声が聞こえる。リンドバウム王朝はメルティを加えて、更に騒がしくなったようである。

ずーーーっと逡巡しておりました。

メルティを輿入れすべきかどうか。


でも以前に成長したシアの「弟妹達が5人も6人もへばりついてきて―」

とかって云うくだりを回収するには

もうここで彼女を側室にするしかないなと思い、こうなりました。


メルティには普通の家庭を―


と願っていた方、ごめんなさい。




※雑記


なんとなく気が向いて

「リンドバウム」と云う単語を今更調べました。


え?!

ドイツ語で


ドラゴンだとぉおぉおお!?


ああ、意図せずに強国らしい名前を付けていたんですね…私。


うん。

今度からゲームでギルド名とか国名付ける時は

ずっとこれで行こう。


そう決めた、ある夏の日であった。


by某ゲームでジュンサマーを無料ガチャの二日目に当てて浮かれているミツクラ

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