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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第1章 ―転生・ガロウ獣王国編―
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第八話 レザリア奪還

ウテナとマリオンの扱いに困っています。

どちらも勝手に動きすぎるので、出番を抑えています。

何とかならないかなぁ…。

 リンドバウム王国領聖王国府を経って十日目、二度目のレザリア攻防戦に挑もうとしていた。


 王国軍は、東部にて孤立してしまった王宮騎士団団長ジード率いる約一万の軍勢を助ける為にも、後顧の憂いとなるレザリアを奪還する必要があったのだ。

 ユーヤ率いる本隊は現在、西部にてマリオンに合流して来た獣騎士達や、クーガー王の供回りとしてレザリアを脱出出来た者を合わせて、ようやく約二万と謂った状態であった。


 因みにベルツ帝国の騎士達は、負傷していない者を除いて全員帰国させた。遠征軍の上級士官は皆戦死、若しくは重傷を負っていてレザリアに取り残されている。

 そして、リンドバウム王国に仕える身となったヨーンは、王国騎士団ヒューズ参謀司令の側付きとなっていた。


「ヨーン、ヒューズ卿から盗めるものは全て盗め。それが今の君の使命だ。新たな陣営に加わって初の戦だからと気負い過ぎるな。生き残る事を考えろ。」


「はっ!参謀閣下の傍らにて、勉強させて頂くつもりで頑張ります!」


 ヨーンは胸の前で右腕をグっと力強く屈して、敬礼をする。その瞳は熱く炎を宿していた。


「俺の授業は厳しいぞ。因みに俺の側付きになったと謂う事は、貴様は子爵相当の扱いになる。しばらくの課題は『扱い』から早く卒業して、それ以上を目指してもらう。参謀司令の側付きが士爵では、お互い格好がつかんからな。」


 ヒューズがニカっと笑った。


「そ、そんな無茶苦茶ですよ、参謀司令殿ぉ!」


 ヒューズ・ロンバルトは、ヨーンに対してからかうような態度をとっているが、実は内心では彼に、戦地から帰らなかった息子の影を見ていた。


 彼の息子は生真面目で、正々堂々とした騎士であった。しかし、その生真面目さが祟った。

 獣王国との共同戦線の折り、突出しすぎて孤立した獣王を守ろうと、残された僅かな兵員で奮戦し、戦場の露と消えた。

 損害を思えば、撤退しても構わない状況だった。何故そうしなかったのか?それは父ヒューズより「何があっても獣王閣下をお守りしろ」との厳命に従ったからであった。


 ヒューズが、ふとそんな過去に浸っていると、後ろから肩を叩く者があった。クーガー王その人である。


「ヒューズ殿、思えばお主に助けられたのはこれで二度目であったな。あの頃の私は若かった。すまぬな…。」


 それ以上の言葉は必要なかった。ヒューズは無言で首を横に振る。


「過去の話しです。閣下に恨みなぞありません。」


 ヒューズは気に病む必要はないと謂う事をクーガー王に現す為に、にこやかに微笑んだ。


「さて、冬が本格的に始まる前に終わらせましょうか。」







 ユーヤ、マリオン、ヒューズ、クーガーそれぞれ五千に兵員を分け、四方から攻め入った。各々敵陣に飛び込んだ後は、街を中心に壁沿いに左回りに追い立てる。

 街門前にユーヤの部隊が辿り着いた際に、ウテナ以下くノ一隊が外壁を越えて街の内部に突入し、生き残りの兵と住民を先導する。

 街内部に入り込んだ魔族、魔獣は思いの外少なかった為、懸念したよりもスムーズに事が運んだ。


「クーガー王脱出の際のリンドバウム王国の奮闘が、予想以上に効いていたのでしょうか?」


 ヨーンが、戦況が割と落ち着いて来た際にヒューズに問いかけた。


「ああ、そうみたいだな。しかも今回は、若以外に姫様とクーガー王と謂う突出した戦力がいる。前回は大火力の戦力が若様だけだったから、正直慎重に成らざるを得なかった。」


 前回はあくまでクーガー王に気付いてもらったうえで脱出してもらう事が目標だったが故に、押しては引いてを繰り返した。

 しかし、今回はなるべく叩き潰す事が目的である。しかも前回と違い、戦闘力の高い将が三人もいるのだ。


 クーガー王の大刀が横薙ぎにまとめて数人を蹴散らしている。かと思えばユーヤが日本刀を振り数人を袈裟切りにし、マリオンは音撃波で周囲の魔族をまとめて弱らせ、そこへ兵が突撃する。


「うーむ…。うちは強襲作戦が一番向いているのかもしれんな。」


 ヒューズがユーヤ達の暴れっぷりを顎を摩りながら眺めて呟いた。「あ、でも獣王閣下を数に入れちゃいかんよな。」と、ヨーンの方を振り返り軽く微笑んだ。


 ユーヤがヒューズ達を見つけると、騎馬を彼等に向け手を振りながら駆け寄った。そしてニコニコしながらヨーンに言った。


「そんじゃ、ここらで手柄を立てて来てもらおうかな。ヨーン。」


「そうね、未来の参謀司令候補殿の腕前を見せてもらいましょうか。」


 いつの間にかマリオンも駆け寄っていた。近くにクーガー王親子の姿も見える。


「あはは…責任重大ですね。」


 漫画なら、ヨーンの顔に青線が数本入っていた事であろう。


「ヨーン、俺の部隊全てを連れて行け。魔族共は南に追い立てろ。俺は陛下とクーガー王と共に街に入る。姫はこやつのお守りをお願いいたします。」


 皆がニンマリとヨーンを見る。「俺、就職先間違えたかな…。」とヨーンが引き笑をしながら呟いた。





 ユーヤが街門を潜り街中に入ると、ウテナと数人のくノ一達が瞑目し膝を付いて待っていた。ユーヤがその目の前まで来ると、ウテナが目をキラキラさせながら報告してきた。


「陛下、お疲れ様です。街の内部の魔王軍は全て殲滅完了しております。」


「ああ、助かる。住民と負傷兵、並びに残留していた兵達は無事かい?」


 ウテナは軽くウインクすると、グっと親指を立てた。


「はい。回復系の魔法を使える者達も数人連れて来ているので、怪我人の方も無事です。それよりも陛下、お疲れでございましょう。お食事になさいますか?お風呂になさいますか?それとも、わ・た・し?」


 それを聞いていたウテナの後ろに控えていたくノ一達も、キャッキャと騒ぎ出した。クーガー王親子はそれを見て目を真ん丸にし「リンドバウムは自由だなー」と呟いていた。


「ウテナ…そういうのはいいから、避難している人達のところへ案内してくれ。」


 ユーヤの額に青筋が浮かんでいる。拳はグーで固まり震えていた。







 クーガー王の意思であったので、怪我人や住民、負傷している帝国士官等は馬車に乗せて聖王都に向かわせた。街に残っていた守備隊で、無傷な者に関してはそのまま守備を任せた。

 ここまで戦ってきた兵達には、まる一日の休息を与え、その日の午後にはヨーンの部隊が帰投した。


 ヨーンは、帰投すると事細かに今回とった戦略と結果報告、そして反省点をヒューズに告げた。そしてヨーンが退室した直後に、入れ替わりでユーヤがヒューズの元に訪れた。


「へえ、特に指示も与えていなかったのにしっかり作戦が練られている。さすがだね。」


 ユーヤはヨーンのレポートを見て感心をした。


「ええ、これは自分の後継者として最高の人材を見つけてくださいました。若、感謝いたします。」


 ―拾いはしたが、向こうから飛び込んで来たんだよな…。と、ユーヤは苦笑いを浮かべた。


「若、それでお願いがあります。本人からの承諾を得なければなりませんが…。」


 ヒューズは参謀として以外に、自身の家の跡取りとしてヨーンを迎えたいと言う。嫁に出した娘の子供…要は孫娘が十五歳と謂う事で、ヨーンの嫁に丁度良いと顔を綻ばせながら語った。


「ま、本人次第だよね。私は賛成ですよ、ヒューズ卿。」


 しかしこの件は、リンドバウムに帰るまでは秘密にする事になった。戻った時にあちらに住居のないヨーンを、宿舎に案内すると称してロンバルト侯爵家に連れて行ってしまおうと言う事に決まった。


「ヒューズよ…そちも悪よのお。」とユーヤが悪い顔をしながら言うと、「いえいえ若様には敵いません。」とヒューズは笑顔で受け答えた。


 そうして、一日ではあるが休息をしたリンドバウム・ガロウ共同軍は、東部にて孤軍奮戦する騎士団のもとへ急ぐのだった。






「エクステリナ殿、物資の方はあと如何ほどでしょうか?」


 レザリアの東二十キロ、アルガスの街をジード達は拠点にしていた。既に戦力の損失は二割強となっていたが、噂を聞きつけて獣騎士達が集まり始めていたので、まだ士気は保たれていた。


 アルガスの街は獣王国の東部中央に位置し、北西に進めば聖王国、北に進めばベルツ帝国の突端に、東へ進めば愛理須皇国、そして南に進むとオーガ大陸が目と鼻の先に見える。因みに獣王都マジンゲルは、レザリアとアルガスの中間を真っ直ぐ南に下った位置にあった(・・・)


 そのような位置にある為、この街はレザリアに比べると砦としての機能が高い。故に要塞都市アルガスともよばれている。


「ジード団長、あと三日程は保つかと思います。ただ、一部の兵員に疲れが見えています。」


 そう言うエテリナの表情にも疲労が見れる。


 アルガスの裏手…東側は山があり、北には川がある。おかげで自然の要害となっている為、自然に魔族の攻めて来る方向は決まっていて、守るには良い場所ではある。

 しかし、予想以上の魔王軍の増援の数に、日々ガリガリと精神は削られている事は確かだ。


「団長、ひょっとしたら魔王軍は初めからリンドバウム…いや、むしろ勇者である陛下を誘き出す為に、ガロウ獣王国に攻め込んだのではないでしょうか?」


 ジードの副官ブランが眉間にしわを寄せながら進言した。


「そうですね。しかし、そうかと言ってここを簡単には退くわけにはいきません。陛下、そして参謀司令閣下の期待に応えねばなりません。」


「しかし団長、すでにその範疇を越えようとしていると自分は思います。」


 ブランがこれ程ジードに反論する事は珍しい。普段は何を言われても「ま、うちの大将のためだ。」と謂った具合にジードに従う男なのだ。それ程ブラン達指揮官クラスも疲れてきているのだろう。


 そんな時だった。「ジード団長、ウテナ様達が到着しました!」と報告が入った。それを聞いたエテリナがすぐさま立ち上がり、一礼をして部屋を駆け出て行った。


 エテリナは、久しぶりに顔を見せた同僚に抱き着いて歓待した。そしてウテナを会議室まで案内する。

 ウテナの連絡によると、本隊の到着は明日の予定との事だった。灰色だった会議室の空気が晴れる。


 雪が降り出す前に、戦況の折り目が着きそうだ。

今更何故かマリっぺの魔楽器あれこれ


 マリっぺの基本装備はギターです。ちゃんと本編で表現してませんが、(某マスクドライダーみたいな)エレキギターのような形状をしています。そのうちちゃんと表現したいです。

 現在登場しているサブ装備は、ヨーヨー…もといカスタネットだけですが、フルートやクラリネットそれにハーモニカとか、太鼓かドラムなども考えてはいます。あーシンバルなんかも痛そうですよね。

 なんて、こんなとこでネタバラシしちゃったので、別のモノにするかもですが。

 あとは、普通に投げナイフ等も隠し持っているはずです。…女神なのに。

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