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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第八拾壱話 4人目の剣聖

 ウテナとサクヤの操縦する機鋼甲冑イザナミは、海獣イッカクの角を掴んだまま二人の漫才のような会話に合わせて…と言うよりも、サクヤがモーションアームを装着したまま漫才を繰り広げている為に、イッカクさんはブンブン振り回されていた。


 そのイッカクさんの巨体は、近寄って来る他の個体を薙ぎ倒し、上空から飛来してくる魔鳥を吹き飛ばし、イッカクさん自体はすでに目を回しているようであった。


「これはまけておれんぞセーラよ。アナトちゃん、剣をぬくのじゃ!」


 きっとシア様は、伯母君達が果敢に戦っていらっしゃるのだと勘違いをしている事であろう。アナトは腰の巨大な太刀を鞘から抜き、今までに何度かユーヤがアナトで試した久能流の動きをトレースし始める。


「ではまずは勇者と剣聖のつかう『せんこうざん』からじゃ。」


『アルテイシア様、それを使うには高い魔力量が必要です。お二方はまだ幼い為、それほどの魔力はございません。』


 アナトは丁寧にシアに説明をする。しかしその時、3歳の幼児とは思えぬ表情…悪い顔でシアは父と母を見ていた。


「アナトちゃん。しんぱいはいらぬ。魔力ならほれ、ここにおとながふたりおる。」


 意味を察したセーラの顔が引き攣る。


「シア様!それはいけません。かってに陛下やお妃様をつかうなんて!!」


 悲鳴にも似た声は、ホエールのブリッジにも届いていた。疲れ果てたかのような表情のカスバドであったが、この光景を見て口元に笑みが戻る。


「ふ…ふははは!陛下も奥方達も面白いが、未来の女王様はもっと面白そうじゃ。これは将来が楽しみでしょうがないぞ。」


 ブリッジクルーの白い目なぞは、全く気にしていないようだ。


「なあ、なんであの人不敬罪で捕まらないんだ?」「そりゃあ、陛下と仲がいいからだろ…。」「ああ…だよねー。」


 モニターを眺めるフリをしながら男性クルー二人がごにょごにょとやっている。女性クルーは溜息を吐きながら、頭を抱えているようだった。


「私…ヴァルキュリアに行けば良かったかも…。」


 上司に恵まれない方の為の登録会社を、紹介してあげるべきなのだろうか?






 アナトはシアに従順である。マスターであるユーヤや、女神であるマリオンに対してもそうである。しかし、今その二人は何故か気を失っていた。


 アナトの優先順位1位2位が不在になっていると云える状況である。そして彼女は選択した。


『アルテイシア様の御命令を承認いたします。これよりマスターとマリオン様より、魔力供給を開始します。』


 ヒュイィィイイと云う機械音が鳴り始める。どうやら供給された魔力を増幅しているようだ。セーラはただただ「え?え?ええ!?」と青い顔をしていた。


 シアは不敵に笑みを浮かべている。今のわらわに怖い物なぞないわ!とでも言いたげである。


『魔力量、規定値です。』


「いくぞよ!アナトちゃん!!せんこうざーーーーん!!!」


 シアは拳をググっと握って、前方に正拳突きのように突き出す。その動作を合図と見てアナトは太刀を光らせて、魔鳥の群れに向かって振り抜いた。


 ズオっと衝撃波が音となって響く。巨人から放たれた光に魔鳥達は危険を感じて羽ばたこうとしていたが、時既に遅かった。光に包まれた数十匹の魔鳥達が消し炭へと姿を変えていったのだった。


 ウテナとサクヤはこれを驚愕したかのような表情で見届けていた。


「サクヤ姉様…あれってシア様ですよね…。」

「そうじゃの…シア様のはずよの…。」

「姉様…訛りが…。」

「そうじゃの…。」



 これを観測していたホエールのクルー達も驚愕している。わずか3歳の王女様が、音声入力のみで父と母の魔力を貸与されてとは謂え、初めて乗った機鋼甲冑で大技をやってのけたのだ。


「ふふふふふ…。お主らも我が狂喜する意味がわかったようじゃの。しっかりデータは残せよ。」


「は、はい…。」


「この方のアナトとの親和性…シンクロ率と云ったかのう?特にそのデータはしっかり保存するのじゃぞ。恐らくこれを見れば、陛下もお妃様もびっくりなさるぞ。何しろ我の観測した限り、この方に眠るスキル称号『剣聖』と『勇者』がこの歳にして目を覚ましたようじゃしのう。」


 その場に居たクルー全員が耳を疑った。本来スキル称号の発現が始まるのは早くて8歳くらいであり、14歳くらいで完全に表層化してくるものなのだ。それ故にこの世界では成人を14歳としている。


 しかし今彼等の目の前で機鋼甲冑を操る幼女は、僅か3歳で表層化し始めていると言うのだ。しかもレア中のレアである『剣聖』と『勇者』と云う二つの称号をである。


「ほれ、感動に打ち震えておるのなら誰ぞ声をあげよ。女王アルテイシア万歳!とな。」


 それに釣られるようにして、皆が口々に呟き始めた。


「女王万歳…女王アルテイシア万歳…女王アルテイシア様万歳!!」


 やがてそれは艦内全体を包む歓喜の声へと変わっていった。彼等にとっては、未来の女王の駆る機鋼甲冑のその立ち姿は、奇跡とも云える光景であったのだった。




 そしてこの光景を、アイリス方面軍司令テンゴウもまた飛空艦コンゴウから観測していた。


「警護の要請を受けて来てみたが…これは…。閃光斬…。機械兵が閃光斬を放ったぞ。」


「司令、しかもこれを行ったのは母艦ホエールからの連絡によりますと…信じられませんが…あの…。」


 通信官はあまりに信じ難いその内容に、目を白黒させている。


「どうした、早く申せ。」


 しかしこの回答をしたのは、コンゴウ搭載のコンピューター『ポセイドン』であった。


『テンゴウ様。アナトからの回答によると、アルテイシア様があの技を放ったとの事です。』


「な、に!?アルテイシア様だと!!」


 テンゴウも言葉が出なくなってしまったようだ。額に汗をいくつも浮かべている。


 テンゴウは目を閉じて思考する。


 確かに以前から本来4人は同時代に発現するはずの剣聖位がここ数十年3人までしか発現せずに居た。候補はいくらでも居たはずなのにだ。そう考えると、ひょっとしてこれはシア様の為に空席になっているものなのか?と。


 少し思案したあとに、テンゴウは通信官にホエールへの伝文を伝える事とした。


「ホエールが演習終了後に、我が合流したいと言っていると伝えてくれ。場所は…そうだな、ナハにある基地でお願いしたいと。次いでナハ基地には、アレクソラス王と女王アルテイシア様が降臨されると伝えておけ。」





 巨人の放った閃光斬のその威力は、生身の数千倍と云ったところであろうか?空間に歪みが出来ていた。生き残った魔鳥のうちの何匹かが、その歪みに囚われ、消滅していった。


 正直セーラは、お漏らしをしそうな程にビビッてしまっていた。顔面蒼白になっている。しかし『未来の女王アルテイシア様の傍付き』と云う肩書が、彼女を踏んばらせていた。


 それでも膝はガクガクと震える事を止めてはくれない。必死にセーラは自身の手でそれを押さえつけようとしていた。


 すると、横からスっと手が伸びて来て彼女の膝に光を照らした。


 マリオンが目覚めたのであった。彼女は泣きそうな顔をしながら、必死に自身の膝に手を当てている少女に、癒しの力を行使したのだった。


「う、あ、ああ、お妃様!!」


 マリオンは泣きじゃくるセーラを優しく抱き寄せる。


 何があったのかはわかってはいない。けれど全員無事のようではある。何故か体に倦怠感があるのは気のせいだろうか?等と考えながらユーヤの方を見ると、そちらも目覚めたようだ。


「くっそぉ!戦神の奴め!!」


 ユーヤは起きざまに呻いた。


「何?何なの急に、師匠がどうかしたの?」


 ユーヤはまず、隣りに居るシアの無事を確認する。怪我などはなく、蒼白となっているセーラと違ってニコニコしている。


「あいつ、シアの力を見たいとか言ってやがったんだ!」


「あー…それで私達気を失って…って、あのバカ師匠!!!シア達を試したのね!!?」


 そこへサクヤからの通信が入る。その表情はどこか恐ろしいものでも見たかのような、そんな強張った表情であった。


『兄君…ようやく起きなされたか…。今さっき何が起きたか知っておるか?』


 素の公家訛りから復帰しないサクヤを見て、ユーヤはなんとなく察する。


「いや、知らないが…シアが何かやったのであろう事は察しがついている。」


『では周囲を確認されよ。さすれば大体わかるはずじゃ。』


 ―そう云えばここは海上で、しかも海獣や魔鳥が数多く群れていたはずだよな。妙に静かだけど…。


 静かに対空するアナトから、ゆっくりと周囲をセンサーも使って確認をすると、海上には幾つもの海獣や魔鳥の死骸が浮いていた。ふと気付けば、アナトの手には太刀が握られている。そして死骸はどれも綺麗に寸断されていたのだった。


「これをシアが…?」


『そうじゃ。その歳にして剣聖の力を発現しよったのじゃ。』


「え?剣聖ですって!?」


 そこへカスバドの通信が割り込む。


『その剣聖様の一人がお呼びじゃ。テンゴウ殿がナハの基地で待つとのことじゃ。』


「ただ事じゃなくなってるようね。」

「ああ。4人目の剣聖か…。しかも3歳児がな…。」





 ナハ基地までは現場からホエールで10分程の距離であるが、ユーヤ達はホエールに戻ると、シアとセーラに怪我などの外傷がないかなどを再度確認する。


 シアに関して言えば何もなかった。しかしセーラは心に傷を負ってしまったようであった。ホエールに戻ってからも震えが止まらず、母であるネイの顔を見て再び泣き出してしまっていた。


 物事の道理と云うものを理解し始めた年齢の彼女には、酷くきつかったようである。


「セーラ、いいんだ。泣いて当たり前の出来事だったんだ。今回は大変だったね。」


 ネイに抱かれているセーラに、ユーヤは頭を撫でながら慰めた。


「わたしは…わたしはシア様のお傍付きなのです。なのになのに…なんにもできなくて…こわくてこわくてふるえてしまって…。」


 セーラの涙は止まらず、ネイもただただ「すいません。」と繰り返し謝っている。


 ホエールに帰還してすぐにカスバドとサクヤから見せられた映像は、衝撃的であった。


 ユーヤとマリオンが気を失ったあと、アナトと共に敵を迎え撃つ3歳児とは思えぬ表情のアルテイシアや、その恐ろしいまでの破壊の威力を発揮したアナトの姿をイザナミからの映像記録と、ホエールからの映像記録とを同時に見せられ、その際の詳細なデータまでも渡されたのだった。


 艦からの映像には、発現している能力の正確なアナライズ状態も表示されていた。初めコックピット辺りに表示されていた文字は『SEED』となっていた。これはシアをアナライズしていたようである。


 その文字が、アナトがユーヤとマリオンからの魔力供給を決意した辺りで変化する。『Germination』…発芽である。


 そして閃光斬を放つ瞬間に、更に表示が変わる。『Master swordsman』『Brave』…剣聖と勇者と云う意味である。


「…勇者までも発現してしまったのか。」


 ユーヤとしては、一番娘に得て欲しくないスキル称号であった。自らが持つだけに、家族も家庭も巻き込まねばならない最悪なスキルだとユーヤは思っている。


「因みにのう、スキル称号が発現した年齢としては歴代最速じゃ。これは現存する全てのスキル称号に於いてと云う意味でじゃ。」

そうです。

この為に4人目の剣聖は埋めていなかったのです。

下手に埋めるとシアが発現する前に

また殺さなければならないので。


※雑記

早いなあ…いえ、有り難いですね。

もう5000PV行きそうです。

ありがとうございます。

記念番外、又は外伝は10000までとっておきます。


現在執筆の方は、現状に於いての最終章最終局面までは行っております。

一応続けられるように、謎を残したり本当は在るべき物を書かなかったりと

小細工の真っ最中です。(爆)

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