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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第七拾六話 復興の兆しの中で

言ってみるものですね。

ブックマーク有難うございます。m(_ _)m

目に見えて購読されてる方が居るのがわかると、やる気が出ます。

 ユーヤとおカジの方の第一子は、不可思議な生まれ方をした。


 おカジの方の中からこの男子が出て来た時の第一声は「おぎゃー。」ではなく、眩しそうな顔をしながら「ここはどこ?」と呟き、産婆が仰天して転げたのを見てから、その子は初めて赤ん坊らしい声をあげたと謂う。


 こう云った文献に詳しいどこぞの双子姉妹は、この話を聞くと狂喜して仰った。


「「きっとこの子は転生者ですよ!間違いありません!!」」


 ピッタリ息の合った二人の言葉に、ユーヤはそうなのかもなぁと、どこか達観した感じでいた。何せ自分自身が、手違いはあったが転生者であるわけだし、この出来事自体もどこかそれを容認させるような説得力があったのだ。


 なのでユーヤ自身、近いうちに聖女の処にでも行って、戦神に聞いてみようかと思っているようだ。


 そうして、この子につけられた名はワダツミとなった。日本語で表記するなら『海神』である。


 おカジの生家は海岸沿いの屋敷で、海の神を主に信仰していたそうである。そんなおカジがこの子を抱き上げた時に、信仰していた神が降りてきたような感覚を覚えたらしい。それ故におカジはこの名前に固執したようである。


「なあ、女房方…俺に名前を付けさせる気が、揃いも揃ってないだろ?」


 そうユーヤがいじけているのをヒッターが慰めていたようだが、奥方衆は見ていない振りをするのであった。


 アルテイシアの時は、マリオンがどうしても妹の名を付けたいと頑張り。イズナとハヤテは読者の方々も知る通りよくわからない理屈をウテナにこねられ、そして今回のおカジさんである。パパさんは非常に肩を落としていらっしゃるご様子だ。


「パーパ。ないてゆの?いいこいいこ。」


 シアが、落ち込んで座り込んでいるユーヤに背伸びをして、その背中を這い上る勢いで撫でている。ユーヤはそんなシアを抱きしめて、逆にいいこいいこをして返した。


「シアは良い子に育ってくれてて、パパは嬉しいよ。」


 しかしこんな素直で可愛いシア様も、恐らく3つか4つになるくらいには、あの王家言葉を使いだして小生意気になっていく事を、ユーヤはまだ知らない。まさに今が可愛い盛りなのだった。


 さて、ワダツミであるが、これ以後特に変わったところを見せなかった。そのためユーヤは、聖女の許を訪れようと思っていた事をいつしか忘れてしまうのであった。


 輪廻転生の際に以前の記憶を持ち越して生まれてくる事例は、元の世界にも(科学的証明はないが)あったわけであるし、そういう事であろうと、何故か納得してしまったようであった。


 この世界の風習や生活に馴染む事で、久能佑哉(・・・・)としての『個』が失われてきているのかもしれないようである。


 ただ不思議な事に、ある一定の記憶や元々の習慣は維持されているようで、転生前からの朝の習慣である久能流の鍛錬だけは、ほぼ欠かさずに行っているようだった。


 早朝に王宮騎士団の練兵所へ赴き、ランニングをした後に柔軟体操をし、素振りをする。そしてジード達が出仕して来る前に王宮へ戻って汗を流し、それからテラスでヒッターとお茶をすると言うのが、どうやら朝の日課の本当の全貌であるらしい。この全てを知っているのは、恐らくヒッターとマリオンくらいのものであろうか?


 その他にいるとすれば、守衛のロイド爺さんくらいであろう。


 ロイドはリンドバウム城が本城であった頃からのベテランで、その出仕時間は誰よりも早く、早朝の巡回をしながら王城周辺の掃除などをしている。彼はとっくに退役している身であるが、ユーヤからの信頼が厚いために、現在でも『守衛教育係係長』として出仕しているのであった。


 そんな彼を師と仰ぐ者は実に多く、ガンプ伯爵を始めとした、戦場で斥候を務めた者達にとっては尊敬すべき大先生なのであった。


 今朝もロイドは朝の清掃をしながら巡回して、ユーヤの素振りを眺めていた。ユーヤはそれに気付くと手を止めて大きな声で挨拶をする。


「やあ爺さん、おはよう。今朝も早いね。」

「おはようございます。なんの、陛下には毎度敵いませんよ。」


「よく言うよ。俺が練兵所に来る前に城門の周りを清掃してるだろ?若い夜番の連中が居眠りしてて爺さんに怒られたとしょげていたぞ。」


「はっはっは。少し厳しく言い過ぎたようです。以後気をつけます。」


 ロイドを爺さん呼ばわりできるのはユーヤくらいのもので、皆この『一守衛(いちしゅえい)』でしかない老人に頭が上がらないのであった。


「で、陛下。技の方は掴めたのですかな?」


 ロイドは穏やかな表情でユーヤに問いかける。ユーヤは少しこの問いに驚いていた。技の開発なぞ誰にも告げていなかったからであり、この老人の洞察力と云うべきか観察力というべきものに驚嘆したのだ。


「あ、ああ。今ちょっとしたコツを掴みかけているとこさ。しかし、よく解ったもんだね。」


 ロイドはフフフと笑うと、にこやかにユーヤの顔を見る。


「陛下、この老いぼれが幾十年衛兵勤めをしていると思われます?その年季は伊達ではないのですよ。」


「参った参った。ウテナやハンゾウよりもその目は凄いのかもしれないね。敬意を表して、午後にでもネイのパンケーキを爺さんにだけ持って行くよ。」


「おお!ネイ殿のパンケーキでありますか。あれは実にふわっとしていて、それでいて甘味も大人用に抑えてあってコーヒーと良く会うのですよ。」


 ユーヤは鼻の頭を軽く撫でながらクスリと笑う。


「そうか、爺さんもあのパンケーキのファンだったのか。じゃあ、今日は午後のお茶の時間にテラスに集合だ。これは王命である。…なんつってな。」


 ロイドもクスクス笑いながら、膝を付いて見せた。


「王命確かに承りました。お茶の時間を楽しみにしておきます。」


「じゃあ、そろそろ戻るよ。お勤めご苦労様!」


 そう告げると、ユーヤは手を振りながら王宮へと帰って行った。ロイドは膝をついたままそれを見送るのであった。



 ユーヤはこうして毎朝、オーガ大陸での魔神との戦いに向けて久能流、リンドバウム王宮剣術、そして戦神の技を掛け合わせた新たな技の鍛錬に勤しんでいたのだった。


 あとはオーガ大陸へと攻め込めるだけの余力が国内に出来上がるのを待つだけの状態にはなってきていた。


 しかし、この数年での戦役は思った以上にダメージが大きかった。


 ほぼノーダメージと云えるリンドバウムと元聖王国の力で、なんとか立て直してはいるが、併合したうち3国が戦いによって疲弊している。


 元獣王国は国土の内3/5ほどは回復している。しかしオーガ大陸に近い南側は荒れ地と化したままだ。南には常夏の海があり、ここを開発出来れば恐らくアクエリオス以上の観光地となるであろうが、海獣達の産卵と生育場所となっている為に、それは叶わずにいた。


 元帝国は国土の半分近くを焼失していて、未だに復興と行方不明者の捜索に忙しい。人的被害も膨大で、皇室は元皇帝とその第二皇子であるカリギュラスしか残っていなかった。その為ほぼ全てに於いてリンドバウムに頼らざるを得ない状況である。


 元皇国に於いては、1/3を焼失していた。しかしこちらは早期にオーガ大陸への牽制に動いていた為に人的被害は予想よりも低く、特に本国であるリンドバウム側から人を派遣する必要は帝国ほど必要なく済んではいた。


 だが、それだけに各支城は戦時中から放置されているものも多く、それらの復旧に労力を割いている状態であった。それ故にツクヨミも本城であるニジョー城に戻れずにいたのだった。


 これらを鑑みると、攻め込むにはあと少なくとも3年もの月日が必要と思われるのである。


 しかし、それほどの月日を重ねては逆にまた魔王軍の襲来を許す事となる為、ユーヤは出来得る限りを資金の掛からないダンジョン製品で急ピッチで賄う事とした。そしてそれらは国民の経済活動を少しでも刺激する為に、ほとんどを商業ギルドから流通させたのだった。


 だが、これでは商業は盛んになっても工業系の人々が干上がってしまう為に、民間レベルには基本的に国は建材を流通させずに、ある程度のデータを流出させた。民間でも作れるレベルのものは全てである。そしてこれらのパテントは王宮が握る事とした。所持しているのが国では舐められそうな気がしたユーヤが取った処置である。


 王を相手にこれを侵せば特許権の侵害のみならず、不敬罪にまで問われる可能性があるからである。そうなれば確かに誰もこれを侵そうとはしなかったが、ユーヤ自身が驚くことになってしまった。


 それまで存在しなかった電気やそれに関わる商品がバカ売れしてしまい、それらに民間商会が次々に参入した為に巨額の特許料が入る様になっていたのだった。




 午後、ヒッターとロイドを交えてコーヒーを飲み、ネイのパンケーキをパクつきながらユーヤは二人に相談する事にした。この使いきれないポケットマネーを如何に国に還元しようかと。


「陛下のポケットマネーで何か催し物を開催すると云うのは?」

「いいかもしれないね。でも問題は中身だよな…。」


「それならば坊ちゃん。大々的にこれまでの戦役に於ける英霊達の為の慰霊祭を開催すると云うのはいかがでしょう?」


 ヒッターの言葉にロイドとユーヤが口を揃えるかのように応える。


「「それだ!」」


 きっとユーヤの頭の上には、エクステンションマークが閃いていたことであろう。


「よーし。そうと決まれば聖女に相談して草案を作るかな。ただ俺の金でと云ったら議会がなんか言いそうだし…。」


 今度はロイドが何か閃いたように手を打った。


「陛下。企画を立ち上げて通った後に、寄付と云う形にすればいいのではないでしょうか?」


「なるほど。それなら誰も文句は言わないだろうな。二人共ありがとう。よし!気合入ったぞ!」


 意味もなく指をパキパキ鳴らすユーヤを、シアは不思議そうに眺めていた。父様は何をしてるのだろうと。


 そしてこの数カ月後に催される『ラウズ大陸霊大祭』と名付けられるこの催しは、毎年夏の恒例行事となっていくのだった。

この話は、全然書き進まず

のたうち回りながらなんとか仕上げました。

その割に出来は悪いです。(爆)


※連日投稿は本日までとなります。

17時からの外伝の投稿のあとは

次回は明後日からの2日置きに戻ります。

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