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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第七拾壱話 管理者権限

 獣王閣下に誘われて、ユーヤはエレーナとロイエル主従、それにカスバドを連れて皇国のダンジョンの調査に赴いた。


 このダンジョンは全9層から成るようだが、戦神のダンジョンよりも1層1層の広さはない。寧ろ戦神のダンジョンを制覇したユーヤ達から謂わせれば、初心者から中級者向けのダンジョンと云った感じがする。


 以前ロイエルが倒したミノタウロスも、冒険者ギルドでの情報によると、どうやら最下層と謂われる9層のフロアボスのようだ。


 そうしてギルドからもらったパンフレットを読みながらダンジョン入口まで来ると、ヒッターとサクヤ、それに無理矢理連れて来られたメルティまで居た。


「坊ちゃん、遅いですぞ。もう一時間は待っておりました。」

「そうですよ兄君、案内係をこんなに待たせるなんてこの契約はなかった事にいたしますよ。」


「いやあ、すまんすまん。ギルドでの聞き込みが長くなってしまってついつい…って、違うわコラ!お前らを呼んだ覚えなんぞないぞ!?」


 メルティが申し訳なさそうに手をあげる。


「陛下すみません。サクヤ様においしいパフェのお店が皇国にもあると誘われて、来てみればダンジョン入口でした。」


 ガックリ肩を落としている。


「そうか、騙されて連れて来られたのか。メルティ、すまんな。」


 ユーヤがメルティの肩を叩いている。


「で、だ。ヒッター。お前はなんなんだ。」


「坊ちゃんが危険なダンジョンの調査に自ら行かれると聞きまして、この側付きたる私が護衛せねばと―」


「はい、もういいや。要は皇国のダンジョンに挑戦したかったと、そういう事だろ。次はサクヤ姫様どうぞ。」


「はい。私は兄君が危険を顧みず―」


「はい嘘。面白そうだったから来たと。まったく。どいつもこいつも脳筋だな、おい!」


 サクヤは大したセリフも云えずに切られてブー垂れている。ヒッターは「いやー、さすが坊ちゃん。お見通しですか。」と言って笑っていた。


「メルティ、すまんが置いて行くのも悪いので付き合ってくれ。サクヤ姫はあとでメルティにしっかりパフェを奢ること!」


 様子を静観していたカスバドがゲラゲラ笑っている。「本当に陛下と一緒だと飽きないのう。」などと言いながらお腹を抱えていた。クーガーは呆れた顔をしながらも、どこか嬉しそうだった。


 今回の調査対象は6層の渓谷エリアと呼ばれる、半分以上がオープンフロアになっているエリアである。近頃このエリアでの落盤事故が絶えないそうで、その調査依頼を獣騎士学校の生徒達とギルド見学に行った際に見つけたクーガーは、すぐにその依頼書を掲示板から剥がして「我が受ける。」と申請したらしい。


「生徒達の前で依頼受諾申請書の書き方を見せる絶好のチャンスと思って、まあ受けたわけであるのだ。」


 こう、ユーヤに依頼を受けた経緯を話していた時の獣王閣下の顔は、少し赤かったらしい。


「まあ、俺も冬休みをとっていたから良かったが…奥方衆には首根っこ掴まれる勢いで怒られたんだからな。今度何か奥方衆に土産でも持って来てくれよ。獣王閣下。」


 ユーヤが頬を掻きながら獣王閣下に愚痴っている。要はそう言いながらも、ユーヤも皇国のダンジョンに興味があったと謂う事だ。





 エレーナとロイエルを先頭にして、一行はダンジョンを奥へ奥へと進んで行った。6層から帰ってきたパーティーといくつか遭遇した際に様子を聞いてみると、渓谷エリアの崩落は更に進んで、今はそれ以下のエリアに進めなくなっているとの事だった。


「これは既に調査どころではないようですな陛下。」


「ああ。ひょっとしたら何百年もの間ダンジョンマスターの不在が続いた為に、ダンジョン自体が崩壊し始めているのかもな。」


 どのような理由があるにしても、これは一度実際に見て見なくてはなるまいと、一行はそれまでよりも歩行速度を上げていた。





「雷神衝!!」


 ロイエルの槍が4層ボスに雷撃を纏った一撃を入れると、エレーナがその手に持つ大剣を振るう。


「竜鱗撃!」


「トドメは任せよ!虎王雷斬覇!!」


 宣言通りにクーガーの一撃がトドメとなったようで、階層ボスは消滅していった。




「何とも宝箱の中身がしょっぱいですねー。」


「ああ、サクヤ姫の言うとおりだな。4層階層ボスでポーションとは…やっぱりシステム障害か何かが起きていそうだな。」


 本来なら、24時間でポップし直すはずのボスも普通に1時間くらいで復活している。明らかにダンジョンがおかしくなっているようであった。


「ライガの話しでは七大幹部が無理矢理9層ボスを2層の安全地帯に召喚したと聞いておる。それが原因なのではないか?」


「でしょうね。こうなると、6層を目指すよりも、ダンジョンコアを探した方がいいかも知れない。ちょっと戦神のダンジョンのコアとコンタクトしてみます。ズルになるけど、そちらから俺は攻めるので皆は引き続き調査を頼むよ。」


 そう言うとユーヤの姿がフッと消滅した。どうやら戦神のダンジョンのコアルームへ飛んだらしい。


「では、わしもこのダンジョンの未踏破らしき場所の検索をするかの。メルティ嬢ちゃん、しばらくわしの意識が無くなるので、身体を頼んだぞい。」


「え、ちょっと大魔導師様!?」


 言うが早いか、カスバドは意識を失くして倒れ伏しそうになり、メルティは焦りながらもその体を支えた。8歳児の姿である為、メルティでも担げるようである。仕方なく彼女はサクヤに手伝ってもらって少年カスバドを背負う。


「これで大魔導師様からも甘い物を奢ってもらわなきゃなんないじゃない。」


 今回の彼女は見事にハズレを引いてしまっているようだ。ヒッターが軽く彼女の肩を叩く。


「諜報隊副官殿。これも試練ですよ。」


 うんうんと頷くような彼の姿を、メルティは心の中で罵った。


『このジジイ、他人事だと思ってコノヤロー!あんたからもいつか何か奢ってもらうからね!!』



 こうして、残りのメンバーは6層を目指して更に奥へと向かって行った。荷物持ち状態のメルティの眉間に皺が寄っていたが、皆はそれを見て見ぬフリをしてズンズン進んだ。大魔導師が意識を失くしているため、回復役はロイエルが担った。


 その分サクヤが牽制役として張り切ってくれたおかげで、5層ボスも特に何事もなく倒して宝箱を開けてみると、そこには…。


「木剣が一本…。」


 エレーナが指で刃先をつまんで、皆に木剣をご披露している。


「これは酷い…。金にもならんぞ。」


「そうですな。せいぜい練兵所にストックの一本として持ち帰るくらいの事しかできませんなあ。」


 サクヤが珍しく何か物思いに耽っている。それにロイエルが気付いて「どうされました?サクヤ姫。」と声をかけた。


「いえ、このままではこのダンジョンを冒険する者が減ってしまうなと思いまして…。そうなると我がアイリス地方は財源を一つ失う事になります。」


 アイリス地方は、ベルツ地方に比べれば案外動乱の際の傷は浅かった。しかし工業や農業にダメージを受けた事は確かで、地方経営はそこそこ逼迫していた。


 もしそんな最中にダンジョンの恩恵を失えばどうなるのだろうか?冒険者達が装備品や衣料品を買うためや、彼らが繁華街や歓楽街に落としていく金は、年間で相当な金額になる。それを失うと云う事は、アイリス地方の経済状況をより最悪な方向へと導きかねないのだ。


「兎に角、今は6層の渓谷エリアへ急ぎましょう。そして、陛下と大魔導師様の帰りを待つ事とするしかありません。」


 ロイエルの言葉に皆が頷くと、誰とも謂わず歩き出すのであった。





「どうだ。ハッキングできそうか?」


 ユーヤは戦神のダンジョンのコアルームで、コアマザーと皇国のダンジョンの解析をしていた。


『はい。かなり古いシステムなので、突破にさして時間は掛からないかと思います。』


「どれくらいで出来そうだ?」


『あと60秒お待ちください。』


「上出来だ。では、皇国のダンジョンのコアに潜り込めたら、一時的な権限の書き換えを頼む。」


『了解しました。』






 その頃カスバドは、1~4層までの未踏破域の解析を終えて、5層の解析を進めていた。


『うーむ。この何の出入り口もない部屋が怪しいのう…。ただここへ入ろうにも壁が厚そうじゃ。しかも壁が準オリハルコンとも云える物質で出来ておるのう…。』


 暫くの間カスバドは思案する。彼の目の前には5層の全体マップが映し出されているようである。そして件の部屋を点滅表示している。


 ここは彼の精神世界にある部屋で、魔力を使って様々な解析をする為の場所であった。


『むう。これは幾ら悩んでも仕方なさそうじゃ。陛下に任せるよりあるまい。データを陛下の許へ転送するかの。』


 転送を終えると彼は、念の為に6層以降の解析に移ったようで、また新たなマップを表示させていった。






『マスター、カスバド氏よりデータが送られて参りました。このデータによって、更に皇国のダンジョンのコアの深部に入れそうです。』


「さすがいい仕事をしてくれるなあ。カスバドには以後戦神のダンジョンの準管理者権限を与えておくかな。下手な褒美より喜ぶだろう。」


『了解です。カスバド氏にお知らせしておきます。』


「助かる。で、書き換えの方はどうだ?」


『すいません…。一時書き換えを実行したところ、向こうのコアと私の言語に差異があった為か、完全書き換えとなってしまったようです。こちらと紐付けされてしまいました。』


 ユーヤは投げ出していた足を引っ込めて、思わず椅子から転げそうになっていた。


「おいおい、二つもコアの管理なんて出来る自信がないぞ。参ったな…。」


 少しの間だけ思案を巡らせたが、面倒くさくなったらしい。ユーヤは立ち上がると戦神のダンジョンのコアマザーに、クーガー達のいる場所への転移を告げて、帰還する事とした。両方の権限を得たからこそ可能なズルである。





「そういうわけでな、ちょっちここのコアマザーのとこに行って来る。」


 ユーヤの話しに皆はポカーンとしていたようだが、サクヤだけは目を輝かせていた。


「兄君が管理者になっていただけるのなら安心です!恐らくお爺様も喜びます。このダンジョンも戦神のダンジョンのように冒険者で溢れ返ることでしょう!」


 そこへようやくカスバドが目を覚ましたようで、メルティの背中から「おはよう。」と声がした。そしてメルティの背中から降りると、ユーヤに一礼をした。


「この度は戦神のダンジョンの準管理者にして頂き有難うございます。」


「ああ、暫く俺はこっちに掛かりきりになりそうだから、あっちの運営は頼んだよ。」


「お任せ下され。」


 こうして不本意ながらも、ユーヤは二つのダンジョンの管理者となってしまったのであった。しかしこれによって、アイリス地方の復興は今までよりも格段に進め易くなった事は確かであった。

ちょっちメンバーの個性を活かせなかった事が悔やまれております。


2話構成にしようかとも思っていたのですが

このままだと、予定より遥かに4章が膨らんでしまいそうなのでやめました。

(結局膨らんじゃったけど。)

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