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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第七拾話 ポゼッション型コンピューター

 領主城の復元も終わり人の背ほどの城壁と、そこだけは立派な物をと城門の復元が終わり、ロンは領主城の復興に関しては満足がいったようである。そして、空を見上げるとリンドバウム号とセイト号が巨大な箱を牽引しながら降り立とうとしていた。


 今日はザンバードへの魔導炉発電所とソーラーキットの搬入日である。


 2隻が草原に着地すると、ロンを始めとしたザンバードの内務官達と、期待に胸を震わせる住民達が出迎えた。今回フェルナンドはツクヨミの処に行っていて来れないとの事で、技術士官達が各種説明をしてくれるそうだ。


 高さ30~40メートルほどの巨大な箱を開封すると、中から魔導炉が3基顔を出した。その脇には幾つもの箱が積み重ねられており、どうやらその中身がソーラーキットらしい。


 魔導炉は艦に使われている物よりも遥かに大きい物で、高さ30メートル、幅20メートルくらいであろうか。草原に於いてこれらのパーツの組み立てが行なわれる。


 順調に作業が進む中、ロンは技術士官と実際の設置場所である、岬の大灯台近辺に作られた平地へと向かった。


 既に基礎作業は終わっており、土魔法で基礎はコンクリートのように固められていた。そして各ユニット配置場所を図面と照らし合わせながら打ち合わせる。その後、後日搬入される冷凍冷蔵施設の設置予定地へと足を向けた。


 そこも基礎工事が終了していて、搬入待ちとなっている状況である。


 一応どちらも高波被害に遭わないように、港より30メートルほど高い場所に設置された。何せ港と街の高度差が100メートル以上あるので、これらの場所の選定には苦労はしなかったが、相当崖などを切削する事になり、そちらの作業が難航したのは想像に難くない。


 ある程度打ち合わせが終わった頃、作業員達の乗った荷馬車が街から降りてきた。設置作業の開始である。


 まずはリンドバウム号が1号炉を牽引してゆっくり飛行して来た。海辺である為多少風に煽られているようだが、普段から巡回任務などをこなしている艦であるため、危なげなく炉が予定地に降りて行く。


 まだ手持ちの無線機と云う物がないので、艦とは誘導員が合図と精霊魔法で連絡を取り合っている。艦のコンピューター自体も、精霊ポゼッション型コンピューターである為、相性が良いようだ。


 この精霊ポゼッション型コンピューターと云うのは、精霊を憑依させた意思を持つコンピューターの事である。精霊の性格にもよるが、コンピューターに宿った精霊が的確な判断の元で手助けをしてくれるAIに似たシステムと云える。


 因みにリンドバウム号のコンピューターに宿っているのは風の精霊で、多少気まぐれなところがある。今も誘導員の指示に対してやる気をなくしたようで、物凄く曖昧な操艦指示を操舵手に出している。しかしそこは乗員も慣れていて、精霊の曖昧な指示にもきちんと対応していた。


 セイトに憑依しているのは土の精霊。マジンゲルには火の精霊。ガリアンには水の精霊が宿っている。トライデルはリンドバウムと同じく風の精霊であるが、こちらはリンドバウムよりはお淑やかであるらしい。


 そして最新艦のコンゴウには水の精霊が宿っているが、テンゴウに似て与えられた仕事に対して絶対の誇りがあり、その指示は他の艦のコンピューターよりも的確である。




「ゼフィロス…我儘言ってないで、誘導員の指示に従いなよ。」


 艦のコンピューター操作係のクルーが、なんとか作業をこなしてはいるものの、ゼフィロス…コンピューターを諭している。妙な光景ではあるが、相手も意思を持つモノだけに言葉でのコミュニケーションも結構大事であったりする。


『えー、あいつ何か偉そうなんだもん。やる気になんないよぉ。』


 ゼフィロスと名付けられているコンピューターが、操作係の脇のスピーカーを通して答えている。


「あんたねぇ、そんなんじゃアネモイに嫌われるわよ。」


 アネモイはトライデル号のコンピューターの名である。リンドバウムが男の子っぽい精霊であるのにに対して、あちらは女の子であるらしい。


『ちぇー、やるよ。真面目にやりますよー。』


「よろしい。あんたはやればできる子なんだから。頑張って。」


『らじゃー。』


 操作係はコンピューターの教育係のようなものでもある。その為、どの艦もコンピューターの性格に合った相方として、操作係は選ばれているようである。




「1号炉の設置は完了したみたいですね。次は『ガイア』の出番ですか。彼女は割と従順なので、怒らせなければ順調に行くでしょう。」


 ガイアはセイトのコンピューターの名前である。技術官の弁を見る限り、こちらは女の子のようだ。ただ怒らせると歯止めが効かないらしい。


「誘導員!先程のような態度は控えろ。次の艦の精霊はレディーだそうだ。嫌われないように丁寧に丁重にご案内しろー!」


 ロンが笑いながら遠くから誘導員に声をかけると、誘導員は頭を掻きながら「へーい!心得ましたー。」と答えた。


 この声掛けが功を奏したのか、以後はどちらの精霊も我儘を言うことなく、無事に作業は終了した。気付けばとうに昼は過ぎ、おやつタイムであった。




 作業員と技術員全ての人に、食事と杯が配られた。まずは今後の作業の引き続きの無事を祈って乾杯をする。リンドバウム艦隊提督ヨーンも参加した。今回はユーヤの代理のようなものであり、現場の2隻の監督をしていたのだ。


 誘導員をしていた男が、ヨーンに頭を下げている。ヨーンは笑いながら応じているようだ。


「本当にすいやせん。ついつい荒っぽい言葉になっちまうもんで、精霊様を怒らせちまったようで…。」


「気にしなくていい。あれはゼフィロスの我儘なんだから。現場と云うものは工事でも戦闘でもそんなものです。」


「ありがとうございます。そう言って頂けてホッとしてます。」


 そうしてお互いに酒を注ぎ合い、酌み交わしていた。ロンは熱心に技術官と、今後の打ち合わせをしている。


「次の納入が1週間後なので、それまでに電線管の埋め立てを終えて頂ければ、その日のうちにテストが出来るかと思います。ただその為には、地図で云えばこの辺りをもう少し切削して頂くようになるかと思います。」


「なるほど、現場の監督員に伝えておきましょう。それで、電線も通しておいた方がいいのですよね?」


「電管の中に水が入ったりしないのであれば、その方が当日の作業は減りますね。ただ海辺なので焦らない方が良いかと思います。」

「なるほどなるほど。」


 メモを取り出し自ら記帳している。側近達も同様で、このザンバードの復興に捧げる情熱が見て取れる。技術員もここならそう苦労しなさそうだと、安堵しているかのようであった。





 2隻の飛空艦が魔導力エンジンの音をさせながら浮上して行くのをロンは眺めながら、次の週には納入される冷凍冷蔵施設の事を考えていた。そして、これら飛空艦が停泊出来るようにする為の港湾施設を開発中の海辺を、少し行った高台から眺める。


「まだまだやる事が多いなあ!頑張るぞおー!」


 高台から大きな声で叫んだ。それを見ていた領民がクスクスと笑っている。照れ笑いをロンはしながら、夕暮れの中に消えていく2隻に手を振った。それに気付いたかのようにリンドバウム号が警笛を鳴らしていた。


「ゼフィロスだな。粋な事をしてくれるなあ。」


 何の確証もないが、ロンはそう思い呟いていた。






「今、警笛を鳴らしたのは誰だ?」

「ヨーン閣下。ゼフィロスが勝手にやったみたいです。すいません。」

「本当にイタズラっ子だな。誰に似たんだか…。」

「たぶん、陛下かと…。」


「…そうだな。」






 その頃ツクヨミ閣下の処には、何度も何度も「セーラセーラ」と煩いので、セーラとネイを伴なって、フェルナンドが休暇で訪れていた。今回はグレンも来ている。


 ツクヨミが手を尽くす中、フェルナンドは「普通にお願いします。普通に。」と躱し続けた。サクヤはその様子を見て、ずっと笑いを堪え続けて…いなかった。笑い転げていた。それに対してテンゴウは呆れて見ているようであった。


「サクヤ様、ツクヨミ閣下は必死なんです。理解してあげましょう。」

「ですから、その必死さが可笑しくて仕方がないのです。ぷぷぷ。」


 そんな会話をしている二人に釣られてか、傍付き達も笑いを堪えているようだ。


 ネイは愛想笑いが精一杯のようで、小声で夫に「ねえ、こんな対応してて大丈夫なんですか?」と頻りに聞いていた。


「娘を守るためなら、天皇だろうが皇帝だろうが知ったこっちゃない。」と、フェルナンド氏はやや好戦的な構えのようだ。


 そしてこのツクヨミの目論見に、いい加減苛立っている人物がもう一人居た。ツクヨミの正妻、ウズメ様だ。


「あなた、もういい加減にしてください!いくら以前よりも自由な身になったとは謂え、人様に迷惑をかけるものではありませんよ!!」


 会食場にウズメ様のヒステリックな声が響いた。ツクヨミ閣下は小さくなって「すいません。すいません。もうしません。」と膝を付いて謝っている。


 セーラは可哀想に見えたのだろう。タタタっと素早く走って、ウズメとツクヨミの間に立ち大きく手を広げてウズメを制止した。


「ウズメ様、そんなにおこらないであげてください。パパ…おとうさまとツクヨミ閣下がなかなおりをしていただければすむことだとおもうのです。どうかおしずまりください。」


 そんなセーラに、ウズメは優しい表情をして頭を撫でる。


「本当に良く出来た子ね。ツクヨミが手元に置きたがるのが判るわ。」


 そしてウズメはツクヨミを見つめながら告げた。


「あなた。もしもこのセーラをこれ以上困らせるような真似をしたら、この私が許しませんよ。いいですね?これからは普通の家族付き合いを心掛けてくださいね!」


「は、はい!ありがとう、セーラ。これからはアイリスの爺と思って接しておくれ。」


「はい。ツクヨミおじいさま。」


 こうして長く続いたツクヨミの「セーラ婚約計画」は幕を閉じた。フェルナンドはそっと胸を撫で下ろすのだった。



 しかし油断は出来ない。


 彼はセーラの『ツクヨミおじいさま』と云う言葉に、過剰に喜んでいた。その事から察して頂きたい。第二、第三の計画が、恐らくまだあるであろうと謂う事を。

とりあえず、セーラの婚約ネタは終了です。


たぶん。


しかしツクヨミ閣下は、あのウテナとサクヤの祖父です。

必ず目的を達成しそうな気がします。


※12時より70話到達記念として、外伝的なお話をUPします。

良ければそちらもお読みください。

今回もマリオン・ログです。

前回とは違って一人称に近いお話しになります。

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