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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第六拾九話 ハーゲン救護院の、とある一日

 ウテナは姉のサクヤと、ウテナの双子を連れてマザーソレナの居る聖都のハーゲン救護院にお邪魔している。


「ジャンヌ。この布団はどこの部屋です?」


「あーそれは1-5の子達のよ。―って、サクヤ姫!あちらで寛いで居てください!」


「いえいえ、妹のウテナの御恩返しです。手伝わせてくださいジャンヌ姉様。」


 サクヤに姉様呼ばわりをされたジャンヌは満更でもないらしく「し、仕方ないですね。では、よろしくお願いします。」と、結局手伝ってもらうことにしたらしい。


 子供達はウテナが相手をしている。みんなウテナの双子に興味津々である。


「おふねでみたときよりおっきくなったね。」

「なんかい見てもそっくりさんだよねー。」

「それをいったらウテナおねえちゃんとサクヤおねえちゃんなんか、耳がちがうだけだよ。」


 ウテナの周りを子供達がキャッキャと燥いでいる。そこへマザーがやって来てニコニコと皆に声を掛けた。


「はーい、みなさーん。あんまり赤ちゃんにベタベタしないようにね。ウテナお姉さんも困っていますよ。」


 ウテナはそんなに困った素振りをしていなかったが、赤子への配慮であろう。子供達もマザーに従順であるので、声を掛けられると「はーい!わかりましたー!」と元気にお返事をしていた。


母様(かかさま)、気を遣って頂いてありがとうございます。」


「いいのよ。貴方たち姉妹には、この救護院も大きな恩がありますから、その恩人に報いる事は当然のことです。」


 恐らくウテナ第二正室昇格計画の際の、サクヤによる議会でのハーゲン救護院への公的支援の事であろう。それによって、ここの子供達の衣食住は相当改善されたようだ。


 それ以前からユーヤやマリオンが、自身のポケットマネーで寄付はしていたらしいが、やはり公式に、しかも定期的にもらえる援助は相当に助かっているらしい。


 更にはその一件のおかげで、サクヤに痛い処を突かれた貴族議員達が、我先にと(こぞ)って毎月のように寄付やら催し物の企画やらをしてくれるようになり、以前はボランティア同然だったスタッフ達にも、まともな給金を払えるようになったそうだ。


 またクレィル家からは、子供達の教育の為にと定期的に講師を派遣してもらっていた。それ故に今では子供達の学力が上がり、そこいらの貴族の子供達にも負けないほどに優秀な人材を生み出すようになっていた。


「母様、例の計画なのですが、宰相さんの話しではすんなり議会で可決されたそうです。」


「まあ!本当に?!」

「ええ。今、教師たちの選抜をしているそうですよ。」


 その計画とは、マザーソレナが何の気なしに「救護院の子供達だけでなく、街の子供達にも学業の素晴らしさを教えてあげたいものです。そう、一般の子供達の為の学校を作りたいですわ。」と、ユーヤとマリオンに雑談の中で語った事が始まりとなっている。


 これを聞いた聖女も「素晴らしい!是非その時にはソレナ様に校長になって頂きましょう!」と絶賛していた。


 そして寄付をしている議員達も、マザーソレナが発起人と聞いては、賛成するしか選択肢はなかったわけではある。




「それで、近いうちに陛下も宰相さん達とここに公式に訪問するって言ってました。」


「あらあら。公式も何も、しょっちゅうお見えになってるのに。」


 マザーが笑って答えると、ウテナも笑い出してしまった。どうやらウテナには内緒で訪問しているらしく、ここではシアとセーラも、子供達にとって顔馴染みであったりする。


「ひょっとして、私よりも足繁く通っているんですか?」


「そうよ。御正室様と一緒にね。」


 ウテナがニマニマしている。二人が如何に自分の事を考えてくれているのかと思ったら、顔が緩んで仕方がないと云った様子だ。


「あとね、おカジ様って言ったかしら?あの方もちょくちょく見えるわね。あの方の場合は、陛下や貴女の事が知りたくて来ている感じではあるけれど、毎回お菓子や絵本をたくさん持って来てくれるのよ。子供が好きと云うのもあるのかもしれませんね。」


 ウテナは意外な名前を聞いて、目をパチクリしてしまった。あのおカジの方が!?と。


 尤もウテナとおカジの方とは、マリほどの因縁はない。向こうからすれば主家筋だけに、低頭に接して来るからでもある。


「そう言えば、最近いらっしゃらないわね。何かあったの?」


「おカジの方様は、今つわりが酷くて外出を控えてるとこなんです。」


「まあ!では、イズナちゃんとハヤテちゃんの弟か妹が?」


「はい、そうです。母様。オメデタさんなのです。」


 恐らくイズナとハヤテが歩き出す頃に生まれてくる筈である事をウテナが告げると、マザーは嬉しそうに微笑んでいた。どうやら子供の成長から物事を換算するようになったウテナを、益々母親らしくなって来たと喜んでいるようである。




 子供達がお昼寝の時間になり、双子も同じくらいの赤子達の部屋で眠っている。


「以前より赤ちゃんが増えてますね…。」


 ウテナが寂しそうに告げると、ジャンヌが答えた。


「この間の動乱でね…。ベルツ地方の孤児院はいっぱいだったから、幼い子供達はうちで引き取ったのよ。」


「元帝国の子供達と云う事ですか…。」


「そんな悲しい顔しないで。これでも近頃では、貴方達姉妹が宣伝してくれたおかげで、子供のない貴族様とかが養子を引き受けてくれたり、大きな子はクレィル様が貴女を引き取ってくれたように、侍女や側付きとして雇ってくれる方が増えたのよ。」


「宣伝て、ジャンヌ姉様、私達はいつからここの広報官になったのですか?!そんなものをした憶えはないのですよ?」


 サクヤが憤慨する真似をして見せると、ジャンヌとウテナも笑ってしまった。


「宣伝なら盛大にやってくれたじゃなーい。議会で無双したのは誰だったかしら?」


 ケラケラと笑いながらジャンヌがサクヤを指差すと、サクヤは少し照れているようであった。


「あ、あれは、勢いと云う物です。」


 少し頬を染めているサクヤを見て、ジャンヌはその両手を握って礼をする。


「サクヤ姫。本当にありがとうね。あれで本当に私達は助けられたの。貴女に勇気を分けてもらえたの。だから照れずに誇らしくしてください。」


 そう言ってジャンヌが涙ぐむと、サクヤはギュッと手を握り返して「うむ。わかったのじゃ!ジャンヌよ我は誇らしく生きようぞ!」と、普段使わない言葉づかいをして、ジャンヌを再び笑わせたのだった。





 そして夕刻、そろそろ姉妹がおいとましようかと云う頃、通りに豪華な馬車がやって来た。ウテナが「あら?もう迎えがきたのかしら?」と外を覗くと、そこにはお傍付き達にたくさんの絵本とお菓子を抱えさせた、おカジさんが立っていた。


 思わずカジは「あっ!」と姉妹を指差して固まった。見られたくないものを見られたと云う風に。


「ほほう…おカジ。お前もここの常連である事なら、既に聞いていますよ。ささ、どうぞどうぞ。」


 意地悪くサクヤが招き入れると、おカジさんは顔を真っ赤にしていた。聖女に安産祈願をしてもらった帰りらしい。


 聖都へ来て大教会への道すがら、ここの子供達の顔が頭に浮かんでしまい、これからは暫くなかなか来れなくなるなあと思い、途中で思い付いたように絵本とお菓子を買い漁ったとのことである。


「陛下は一緒ではないのですか?」


「たぶん後から御正室と来ると思いますよ。二人が来る前に済ませようと思っていましたのに…。」


 おカジさんの顔がまだ赤い。どうやらこう云う事をしているのを、人に見られるのが恥ずかしい性質(たち)なのだろう。傍付き達も笑っている。


「では、今晩は皆でここでお食事会としましょう。ジャンヌ、他のスタッフにも声を掛けておくれ。」


 マザーが嬉しそうに奥へと入って行った。サクヤは逃げようとするおカジさんをガッチリ捕えている。ウテナはウテナでおカジさんの傍付き達に、早く馬車を隠すように指示をだしている。どうやらユーヤ達を驚かそうと云う算段のようだ。



「くう~。姫様達がここに居るのを知っていれば、寄らなかったのに~~!」


「もう諦めるのです。貴様は既に確保されているのです。」


「サクヤ姉様!馬車の隠蔽、完了いたしました!」

「うむ。ではウテナよ。プランBを実行に移す。」

「姫様、プランBって何ですか?」

「聞いてはいけません。貴女は捕虜なのですから。」

「ウテナ様、捕虜って…ひい、やっ!」


 おカジさんの悲鳴が通りにまで響く。通りを歩く人々がなんだなんだと覗き込むが「ああ、またあの姉妹か。」と気付くと解散して行った。





 暫くすると豪華な馬車がまた一台、ハーゲン救護院の前で止まった。日は既に沈みかけていたが、気にすることもなく奥方とシア様を伴なって陛下が降り立った。


「ヒッター俺も持つよ。みんなも手伝ってくれ。」


 そう言うと、馬車に牽引されていた荷車の布を外して、沢山の玩具を傍付き達とユーヤが手分けして抱えている。


 時期はもうすぐシア様の誕生日。クリスマスイブの数日手前であった。

描いてる筆者自身が思います。


この物語ってば月日が流れるの早くないか!?

と。


国王主人公で内政描いてると、こうなってしまうものなのか

それとも筆者がせっかちなだけなのかは


聞いてはいけない謎としておきたい。

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