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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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マリオン・ログ リンドバウム内乱

3000PV達成記念として、最初期に書いた物を

今の設定に基づいて焼き直しました。

 我々の世界で云うならば、中世ヨーロッパ中頃の街並みが広がるとある都市。


 剣と魔法が支配し、魔族や魔獣、精霊達の存在する世界での話しである。



 楽師らしき女性が、町の中心部に位置する噴水前で茣蓙を敷いた上に座り詩を奏でていた。手に携えている物は琴ではなくギターである。


 歌っているのはバラードであろうか。

 年の頃は18~19といったところである。

 赤い髪と赤い瞳が夕日に照らされ、尚更に紅く見えた。立ち止まる人は疎らだったが女は歌い続けていた。


「おや、美しい歌声と思えば貴女でしたか。立ち上げたばかりのギルドを放っておいて大丈夫なのですか?マリオン・クレィル殿。」


 マリオンと呼ばれた楽師は、声をかけてきた長身だが細いラインのハーフエルフの男性と目を合わせると、ちょっと困ったような顔をしながら、少し自分の耳を撫でた後に言葉を返した。


「セレスさぁん…だからいつも言ってるじゃないですかぁ。フルネームは止めてって」


 セレスと呼ばれた男性はクスっと微笑みながら「つっこむとこはそこではないと思いますよ」と黒い髪を搔揚げながら小声で返していた。


「私のことはマリオン!マリオンと呼んでくださいよーー」


「わかりましたわかりました、マリさん。それより団長がお呼びですよ。」


 人目の多い噴水広場で駄々っ子のように叫ぶマリオンに、セレスは困ったような顔をしながら手を差し出した。


 マリオンはその手をとると「よっこいしょ」と起き上がり、お尻の辺りをパシパシと叩いて埃を落としていた。セレスはそんな彼女を一瞥した後「やれやれ」と微笑みながら呟いた。





「マリっぺ。お前またどっかで騒ぎを起こしてきたろ?」


 ここは「漆黒の刃」レギオン本部執務室。「漆黒の刃」は、マリオンが立ち上げたギルド「風の詩」が所属するレギオンである。マリオンは執務室に入って早々に、団長にこめかみをグリグリされていた。


「師匠~~やーめーてーー、ごめんなさい~~~もうしません~~~~」


「まあまあ、サガさん。グリグリの前に経緯を」


 セレスは苦笑いをしながら止めに入った。


 漆黒のサガ、彼は漆黒の刃を率いる団長であり、マリオンの戦闘の師匠でもある。マリオン自身は楽師だが、サガは剣士である。蒼い髪が印象的で、漆黒のサガ以外にも蒼髪のサガとも異名されている。剣の腕は剣聖級と噂されている。


「マリっぺ。お前なぁ…今、隣国とトラぶってるのは知ってるだろ?この間のギルドマスター級会議でも議題に挙がってたろ?ああん?」


「あはぁ?そうでしたっけ?あれ~?」


「貴様!会議中に寝てやがったな!」と言いながらサガはマリオンの頬を左右に引っ張っていた。


「らってらってぇ~寝落ちは師匠ゆずりれすよ~~」


「なにをこのぉ!!」


「サガさんサガさん、もう止めてください。マリさんの口が裂けちゃいますよ」


 セレスはまた苦笑しながら止めに入っていた。このレギオンでのセレスの役割は往々にして抑えとツッコミなのだ。


 元々聖王国とリンドバウムは一つの国であった。しかし、遡る事数千年も前の世界大戦の後に二つに分かれた。リンドバウムは立憲君主制を引き継ぎ、聖王国は準共和制へと移行した。


 そして基本的に軍は王直営の軍があるにはあったが、それは言わば近衛隊のようなもので、その下に冒険者達から成るいくつかのレギオンを配していた。これらはその後1200年余り途絶える事となるが、この時代に於いてはそうであった。


「漆黒の刃」はそのうちの三大レギオンの一つとして知れ渡っている。


「国境付近は現在緊迫した状況にある。いつ何が起こるかわからんのだ。故に貴様のギルドに偵察に行かせた筈だ。」


 落着きを取戻したサガは、眉を吊り上げながら語った。


「はい。承知しております。」


「な の に だ。何でお前は聖王国の国境守備隊共と喧嘩なんぞして、そのまま首都に帰って来ているのだ。百叩きのところをお尻ペンペンに負けておいてやるから言え!」


「えー?‥‥もうちょっと負かりませんかぁ?」


 瞳をウルウルさせてみたが、師匠であるサガには通じない。「ちぇ」と舌打ちした後、マリオンはおどけた顔を止めてサガを真っ直ぐ見据えた。


「この度の騒乱に於ける元凶を突き止めました。しかし、その元凶と云うのが…第三皇子アクセル様です。そしてアクセル様が聖王国に変装して入国するのを目撃し、その跡を追おうとして聖王国の門番と諍いとなりました。」


「な、に!?アクセル様だと!!」


「バカな!」


 サガとセレスの表情がみるみる青くなっていった。至急に王に知らせねばならない案件ではあるが、公にするわけにもいかない内容であった。


「マリっぺ。証拠は押さえてあるのか?」


 サガは静かに瞑目しながら、マリオンに問う。


「はい。こちらにある書類は、野党や反乱分子の隠れ家から見つけて来た物です。」


 そこには、詳細な作戦行動とその際の先導者、そしてアクセルのサインが書かれていたのだった。


「…マリっぺ。これは他言無用だ。今から俺はアレクソラス陛下の元へ行って来る。セレスとラストールと共に、お前は戦闘の準備に入れ。これは漆黒の団長としての命令故に、古参のレギオン員にも文句は言わせん。」


 つまりは、その三人の指揮の元に作戦行動を執れと云う事である。


「作戦内容はアレクソラス陛下に相談して、恐らく軍議によって決まる。その際に他のレギオンよりも遅れをとるんじゃないぞ。」


「「「御意!!」」」




 ユーヤが現れる以前、1200年前のリンドバウムの内乱はこうしてサガやマリオン達によって防がれる。


 この時マリオンが気付くことなく内乱が勃発していたなら、恐らくクノン家もなかったかもしれない。


 そんな遠い昔のお話しであった。

ユーヤに対してはどっちかと云うとツンなマリオンですが

サガにはデレに近かったようです。

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