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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第六拾八話 金剛丸

 テンゴウは上機嫌であった。希望したリンドバウム級ではなかったが、先日飛空艦がトライデルより送られてきたのだ。


 何でもツクヨミ総督の希望によって、ダイワ級を基に製造した艦で、命名はアイリス方面軍に任せるとの事であった。


「テンゴウ様が指揮するのであれば、やはり『テンゴウ』がいいのでは?」「いや、それでは紛らわしい事になるぞ。」「では何とするか?」


「我からいいだろうか?」


 その噂のテンゴウ殿である。昨晩一睡もしないで考えていた事は秘密である。


「この度の新造飛空艦の名を、金剛…『コンゴウ』丸としたい!!」


「おお!素晴らしい。」「実に強そうな名前じゃ!」




 こうしてトライデルより送られた飛空艦『コンゴウ』は、トライデルの技術士官添乗の下に習熟訓練を行っていた。


「左舷!何をしておるか!それでは実戦の際に沈むぞ!後部対空砲!ちゃんと狙っているのか!?シュミレーションでこのザマはなんだ!実戦では敵はもっと複雑な動きをしてくるかもしれんのだ、テキスト読みからやり直せ!!」


 これらは、実際にコンゴウを飛ばしてからシュミレーション画面に切り替えて行われた。ナガサキ海上上空で、テンゴウの怒号が響き渡る。




「白熱してましたね。物凄い気合で、私ビビっちゃいましたよ。」


 そう言う技術士官にテンゴウは軽く頭を下げた。


「申し訳ない。新造艦故に気合が入り過ぎ申した。」


 そう言いながらテンゴウは汗を拭う。しかし、その口元には笑みがあった。よほど気に入ったのであろう。


 コンゴウは、リンドバウム級と違い割とシャープなフォルムのダイワ級から作られたため、魔導力エンジンが1つ少ない4基となっている。その代わり対空砲などの実弾兵器を増やしている。魔導砲は両舷に1門ずつ、甲板に2門、下部に1門となっている。


 その為見た目もリンドバウム級よりとてもスマートに見える。恐らく馬力で負けるが、速力では勝てるのではないだろうかと思われる。


「技術士官殿、この船は確かにいい船です。リンドバウム級ほど武装が過剰でもなく、エンジンもこれに見合った出力。実に申し分ない!トライデルに戻った際には、是非王に感謝していたとお伝え頂きたい。」


「それほど喜んで頂けるとは嬉しい限りです。王も喜ぶことでしょう。」


 二人が食堂で談笑していると、ブリッジから呼び出しがかかった。


『巡回中のトライデル号より入電、アイリス南岸ナハ沖に大型海獣の群れ有り。調査の必要有り。許可求む。』


 急いでブリッジに戻り、艦長席にテンゴウは着座すると指示を与えた。


「トライデル号に伝文送れ。現在我が方は習熟訓練中につき何時でも向かえる故、その調査はこちらが引き受けると。」


「了解。」


 しかし、ミハイルの方も少しでも艦の練度を上げたいので手伝わせてほしいとの要請が入る。テンゴウはこれを許可し、二隻での調査をする事となった。


「閣下、間もなく合流地点です。」「よし。航行速度を落とせ。味方艦にぶつけるようなヘマをするんじゃないぞ!」「了解。」


 そこには空中で待機するトライデル号の姿があった。互いの魔導力炉の音が空中に響き渡っている。


『こちらレギオン総司令ミハイル。貴艦の厚意に感謝する。』

「うむ。ミハイル殿、こちらはテンゴウだ。して、その海獣はどこに?」

『ここから3キロ南になります。イッカクとホーンホエール数匹ががナハ方面を目指しています。』


 イッカクも大きいがホーンホエールは最大で40メートルを越える個体も確認されている。それが数匹である。


 ホーンホエールはその名の通り角のような器官を頭部に持つクジラの姿をした海魔獣で、ちょくちょく船舶などを襲って人々を困らせている。魔が付いているだけに、この巨大海獣にも魔力反応は確認出来、角のような器官から水魔法や雷術系魔法の使用が過去に記録されている。


 数分で現場に辿り着いた二隻は少しずつ高度を落とし、その様子を見守った。大きなホーンホエール二頭に挟まれる形で、小振りのホーンホエールがいた。イッカクはただ単にこの3頭に追い立てられただけのようで、既に姿はない。


「親子のようだな?」

『みたいですね。イッカクが何か悪さをして、子供を守る為にそれを追い駆けていたのでしょうか?』


「そんなところのようだな。…進路はどうなっている?」


 不意にテンゴウに尋ねられた観測官は急いで調べている。どうやら一緒になってボーっとクジラを見ていたようだ。恐らく彼には帰投後にお説教が待っていることであろう。


「え、ええと、ナハからは外れました。獣王区の方に向かっていますが、あちらには海に面した街はないので脅威はないかと思われます。」




 そう、獣王区には海に面した街が存在していない。これは太古の昔より、獣王区近海が海魔獣達の産卵と育成場所となっているからである。そのため他の地域の海に比べて、獣王区の海は危険すぎるのだ。


 鮫でさえもそれに対抗するかのように大きく、ホオジロザメの大きさもメガロドン並みの大きさである。


 故に獣王区では川辺や、池、湖の近くで生活しているのが普通で、アクエリオスのようなリゾートは、夢のまた夢と言われている。




「ご苦労。帰投の際には司令部まで来い。」

「は、はい…。」


「と、謂う事だがミハイル殿、如何致す。」


『そうですね。我々はこのまま獣王区まで観測を続けて、脅威がなければ巡回ルートに戻ります。』


「わかった、我らも獣王区近海まで付き合おう。その後こちらは出島に帰還する。」


『了解しました。では、暫くは共に訓練込で観測といきましょう。』


「妙案だ。…では航行に支障ない者はシュミレーション画面に切り替えよ。これよりトライデル号とのシュミレーションによる模擬戦を始める。」




 こうして観測を続けつつトライデルとコンゴウは10戦ほど行なったようだ。


 結果はやはり、飛空艦に乗り換えて日の浅いアイリス方面軍が、傭兵部隊とも云えるレギオン軍に負けたようだ。


 仕方のない事であると理解はしていたが、テンゴウは傭兵軍に負けた正規軍と云う響きがどうにも癪に障ったようで、帰投後にシュミレーション参加者全員が出島内を走らされたようだった。


 因みに、負けた責任は自分にもあると、テンゴウも参加していたようだ。ただ、身体能力の高い剣聖様に追いつける者など居るわけもなく、クルーは地獄を見たようである。


 そんな新設の飛空艦隊の様子を眺めていたツクヨミが、飛空隊に差し入れを持たせて夕刻の飛空艦ドックに訪れた。


「どうだ、テンゴウ。クルー達は?」


 テンゴウはすかさず敬礼の姿勢をとりツクヨミに答える。


「まだまだ鍛え甲斐はありますが、優秀な人材を揃えて頂き感謝しております。」


 ツクヨミはうんうんと頷きながら、テンゴウの横に立ち、一緒にコンゴウを眺めた。そして妙な提案をする。


「のう、テンゴウ。こやつにはまだ船名が書かれていないのだな。ならばお主、デザインを考えてもらえんか?古代文字のカンジでの。」


 テンゴウの顔が緩む。


「私で宜しいのですか?」


「ああ。お前だから頼んでおる。」


 その巨大な船体を眺めながら、テンゴウは嬉しそうに顔を綻ばせる。ツクヨミも微笑を浮かべているようだ。


「良い艦だ。」

「ええ、良い艦です。討って出れる時が楽しみです。」


 コンゴウの船体が夕日に輝いている。二人はそれをいつまでも眩しげに眺め続けた。日が落ちて暗くなるまで。




 3日程経った頃、リンドバウム号がフェルナンドを乗せてやって来た。例の冷凍冷蔵施設と、魔導力発電所やソーラー発電所の設置場所の検討をするためであった。


「よくぞ来てくれたフェルナンド殿。楽しみにしておったぞ。」


「ありがとうございます。詳しい資料を作成して来ましたので、後で読んでください。」


「うむ。こちらもチョーシの資料を用意させた。検討してくれ。」


 そうして、馬車に案内されたフェルナンドの荷物を、小さなエルフの男の子が運んでくれている。それを見たフェルナンドは「おいおい。またか…。」と呟いた。


「あ、あのう…ツクヨミ様…あまり聞きたくはない…ゴホン!いえ。聞いてよいものかわかりませんが、そちらの男の子は…。」


 ツクヨミがニヤリとする。その表情を見てフェルナンドは確信した。


「これはアマテラス氏族の者でな―」


 そう、ツクヨミの画策する『セーラお見合い大作戦』の一環なのだ。フェルナンドは頭を抱えている。気に入られた事は光栄なのだが、こうもしつこいとは思っていなかったらしい。既にこれで紹介されたのは10人目となる。


「閣下。私は仕事で来ているのです。そう言った事はプライベートの際にお願いします。」


「固いのう。…頼む、またセーラを連れて遊びに来てくれんか?お主の家族はVIPとして、一族総出で出迎えるぞ。」


「やめてください。パレードでもおっぱじめられたら、たまったもんじゃないです。」


 既に経験済みである。


 ユーヤに「舅がうるさいから、いっぺんセーラ同伴でナガサキまで行ってくれないか。」と言われて来てみれば、桟橋では鼓笛隊が出迎え、オープンタイプの豪華な馬車に乗せられ、ナガサキの街をパレードのように練り歩き、砦ではセーラと歳の近い一族の男の子数人が待ち構えていた。


 それ故にナガサキへの出張は、フェルナンドからすれば気が重くて仕方がないのだ。


「頼みます。普通にご案内ください。普通に。」


 桟橋には、リンドバウム号とコンゴウが並ぶように接舷されていた。2隻を眩しそうにフェルナンドは見上げながら、普通の(・・・)馬車に乗車し、溜息を吐いていた。


『早くこの案件…終わってくれないかな。』


 馬車の外を眺めながらフェルナンドは、そう心で呟くのだった。

何故かこの話し

何度も描き直していたりします。


頭の中のイメージと上手く合致しなかったみたいです。

取り敢えず、なんとか人に見せれるようにはしたつもりです。



※12;00から

LINDBAUM's Encyclopedia の艦船名鑑を投稿します。

コンゴウが登場した事によって、ほぼ出揃ったので

このようにいたしました。


辞典ファンはお見逃しなく!(いるのか?)


そして17時からは

3000PV記念

マリオン・ログとして過去編…大昔の話を投稿いたします。

よろしくです。

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