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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第六拾六話 見学会

 電動馬車に一行が乗り込むと、車体がふーっと浮き上がり静かに、しかし高速で動き出した。そして幾つかの駅を通り、目的の冷凍冷蔵施設前に到着する。


「ところでのう、ここに来るまでに見えておった、あの港の中央に浮いていた黒い物体は何なのじゃ?」


 ツクヨミが投げ掛けた質問に、フェルナンドが丁寧に答える。


「あれはソーラーパネルと言いまして、マナを使わずとも太陽の光によって電気を発生させる装置です。ただ、魔導力炉に比べると出力が落ちます。しかし、太陽の光さえあれば発電出来るので、非常時には大変役に立つかと思います。」


 ツクヨミ閣下は、あれにも興味がお有りのようである。それを察したフェルナンドが、パンフレットを一人一人に配って行く。合わせて魔導力発電所のパンフレットもである。


「よく見比べてご考慮ください。どちらにもメリットデメリットが御座います。例えば復興中の元帝国領で言えば、一から新規開発中のガリアンでは魔導力炉が良いかも知れませんし、リゾートであるアクエリオスにはソーラーパネルが良いかも知れません。」


 一領主として参加しているロンが手を上げた。


「では、その両方を満たす案件に於いてはどうなのですか?」


「そうですね…。工業区域に魔導力炉を置き、リゾート地区ではソーラーパネルでの発電と云うのが理想ですかね。」


「なるほど。建設大臣ありがとうございます。」


 フェルナンドの懇切丁寧な説明は、各領主だけでなく、フェルナンドに敵愾心を持っていた古参貴族達の心をも動かした。貴族達からフェルナンドに、トライデルに帰ったら是非うちのサロンに来てくれないかと申し出が殺到していた。


「まあまあ皆さん、今はこの施設の見学会です。そのお話しはセイト号の中ででも致しましょう。」


「わしも興味があるのう。婿殿、帰りはセイト号に乗り換えても良いかの?」「王よ、我も良いか?」


 元二強国国家元首はどちらも帰りはセイト号をご希望のようだ。


 尤もツクヨミ閣下は、セーラの見合い話に関しても腹にあるのだろう。またフェルナンドが発狂しないように、帰りはセーラとネイもセイト号に乗り換えにしなくてはと、ユーヤはヒッターにこれらの事を伝えて伝言に走ってもらった。


 艦長修行中のロンが羨ましそうな顔をしている。


「ロン、君の処は復興中だから、復興大臣ではなくなったが何かと所用で大臣がチョコチョコ来てくれるんだ。その時に色々聞けばいい。だからそんな顔すんなよ。」


 ユーヤがロンの背中を軽く叩くと、ロンは笑って応えていた。


 各地域の豪商達も目を引くモノだらけのダイザ―の街に、目を奪われていて、やはり貴族達とフェルナンドの話しに参加したい者が殺到した。


 仕方がないので、帰りはガリアン号でフェルナンドの技術講演会を開催する事として、希望者はそちらに乗ってもらう事に最終決定をした。これは復興中のベルツの人々を優先する措置として行なった。

 他の艦からは各艦抽選20名ずつとした。そうしなければガリアン号が定員オーバーで沈んでしまう懸念が生まれるほど、希望者が多かったためである。


「では、皆さんこちらでコートを貸与しますので、それを着用してから中をご見学ください。こちらの説明には係員を付けますので、質問などはそちらにお願いします。」


 ユーヤとフェルナンドは、皆が冷凍庫に入って行くのを見送りながら溜息をついていた。


「好評なのも考え物だな。技術革新と云うのは、こうも人を踊らせるものなんだな。」


「ええ、私もこんなに大変な盛況になるとは、夢にも思っていませんでした。」


 そこへヒッターが三人分のコーヒーをお盆に持って現れた。そして窓際にあるテーブルを指し示すと、揃ってテーブルへと向かった。


「ヒッターも座ってくれ。何度も指示変更をさせてしまった。疲れただろ?」


「いえいえ。このダイザ―は通信施設も充実していますので、係員に頼んで通信機を貸して頂きました。」


 そう言いながらヒッターも相席した。そこからは三人で海を見ながら、見学者達が戻って来るまで歓談した。


 港の中心ではソーラーパネルが時折反射し、その周辺を漁船がゆっくりと進む姿が窺えた。各駅周辺にも様々な施設が見える。この都市は夢の未来都市の一つのモデルである。


 自然を利用した施設と、核融合にも近い魔導炉施設が建ち、しかし、なるべく海中の自然環境を壊さないように努力した結果が生んだ都市だ。


 尤も、海中に関してはユーヤが転移の際に完全に壊したようなものなので、それほど考慮する必要性はなかったのだが。


 ふーとユーヤは溜息を吐くと、物思いに耽るような表情で呟いた。


「まさかあのクレーターが、こんな街になるなんて、あの時は誰も思ってなかったよなぁ。」


「ええ、提案した私も陛下から齎される新技術を次々と投入していきながら、予想以上の物に仕上がっていって、内心引いてます。」


 ユーヤとヒッターが思わず笑った。


「引いてるって、おいおい。お前さんの要請でこっちも新技術をブチ込んでいったんだぞ?」

「そうですぞ。連絡に走る私の身にもなって頂きたい。」


「ああ、すいません。悪い意味ではないのです。お二人には御足労かけました。」


 そう三人が笑っていると、ゾロゾロと見学者達が戻って来た。誰も彼もが初めて見た人工の氷の世界を堪能したらしく、目が輝いていた。そんな中、ユーヤの舅殿が妙齢にも関わらず走って三人の元へやって来るのが見える。


「婿殿!これはやはり是非チョーシにお願いしたい!!実に素晴らしい!!!」


 この姿を見ながらユーヤは思った。『ウテナとサクヤは、本当にこの人によく似てしまったのだな。』と。しかし、ウテナは一緒に育ってはいない事を思い出す。『ああ、そうか。これがツクヨミの血ってことか。』と一人納得した。


 まだ顔を合わせていない他のツクヨミ衆を想像して、ユーヤの背筋がゾワゾワと波打つのが窺える。とんでもない一族と親戚になってしまったと、今更後悔しているようである。


 その後も、都市内の各施設の見学が行なわれ昼時となる。造営されたビーチの真ん前にあるレストランにて会食を行う事となった。これにはショッピングに出かけていた奥様方も参加する事となる。


「陛下、見てくださいまし。このネックレス、全て天然真珠なんですよ。」


 そう言ってユーヤの目の前で、おカジはクルリと和服姿で回って見せる。おカジさんの首に、真白くそれでいて眩い輝きを放つ真珠の玉が幾つも光っていた。黒い髪色にとてもマッチしている。ユーヤはそれを見てポーっとしていた。


「国のお金であんた何を買ってるのよ。もうちょっと実用的な物を買いなさいよね。」


 マリさんが怒ってます。恐らく真珠うんぬんよりもユーヤの態度に怒っていると思われます。


「あらあら正室様。美しい物で身を飾り、その気品を下々の者に魅せる事も我々奥方衆の務めと思いますが?」「な、くく、ぐううう。」「それによって、民達の購買意欲も増しましょう。そして経済は回るのでしてよ?」「く、くううう!ユーヤ!貴方も何か言ってやってよ!」


『あ、マリが負けた。おカジ凄いな。』


「まあまあ、二人共こんな場所で喧嘩はやめよう。マリも機嫌を直してくれよ。公衆の面前でデレデレした俺が悪い。すまなかった。」


 そんなユーヤに半ベソになっていたマリオネートが抱きつく。勝ち誇っていたっぽいおカジさんの顔色が変わる。


『しまった!これは正室様の作戦勝ちでは!?』


 時既に遅かった。彼女の目の前では正室の頭をヨシヨシする陛下と、こちらをチラ見してアカンベーをする正室の姿があったのだった。


『完敗だわ…。まさかこの私が…。』


 おカジさんはヨロヨロと倒れ伏し、和服の袖を噛んでマリオネート妃と睨み合うのであった。その姿を見ていた周りの者達には、赤毛の狼と白蛇の睨み合いに見えたと云う。


「旦那様、私はサクヤ姉様とエテリナに選んでもらったのですが、どうですか?」


 ウテナは頭にイミテーションのティアラを被り、服は薄紫色のゴシック調でヒラヒラしていた。そして白い靴下に薄紫色のハイヒールを着用している。

 そして、少し頬を染めてクルリと回転して見せた。


 思わずユーヤがちょっと頬を赤らめて「100点。」と口にすると、マリとおカジが全力でウテナの方を振り向く。この二人は完全に伏兵を忘れていたのだ。


 ウテナは嬉しそうにゴシックドレスをヒラヒラさせてニッコリと笑った。二人と違って純粋に。


 それを見た二人はガックリと項垂れた。


「伏兵の攻撃によって当方壊滅状態に有り。」「こちらも甚大なダメージを被りました。撤退を進言します。」「うむ。ここは後退し敵の出方を窺う事としましょう。」


 何故か息の合った掛け合いで、二人は案内をされていた席へと撤退を決意するのであった。




「ふっふっふ。我々の勝利のようですね。エクステリナ参謀。」


「はっ!今宵の勝利の『嬌声』はウテナ閣下があげるものと思われますサクヤ総帥。」


 サクヤの傍らに傅くエテリナが居た。この二人の策のようだ。





 と言うか、いつからそんなに仲良くなったんだ?

オチをつけるなら

この二人の組み合わせが意外で楽しいかも

と思ってしまいまして

こうなりました。


サクヤ&メルティでも良かったのですが

その組み合わせだと

とんでもない格好をさせそうなので自粛しました。(笑)

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