第六拾五話 電気の街
アキバではありません。ダイザ―です。
※本日より8/5まで連日投稿となります。
よろしくお願いします。
現在はカイザーブレードのロンが治めるザンバードの視察にユーヤ達は降り立った。軍艦用の港の整備がされていない為、艀作業での乗降と云う事で最低員数のみの上陸となった。
陸地への降下も出来るのだが、今は処女航海で事故の危険は避けたかった事と、5隻もの飛空艦が降り立つ場所の問題もあった。
どうやら侵略者と云う風には見られておらず、陸に上がると住民達の歓迎を受けた。これも動乱中に住民の救助などを優先させたおかげであろう。
ザンバードの岬を上がり街に着くと、トントンカンカンと忙しく飛び回る職人達の姿が見える。順調に復興は進んでいるようである。ただ、やはりカリギュラスへの風当たりは悪い。カリギュラスの姿を見ると、住民達はこぞって軽蔑の視線を投げた。
「仕方のない事です。何年も掛けて謝って行くしかありません。復興大臣と謂う仕事は、私にとって巡礼の旅のようなものだと理解しています。」
そう言うカリギュラスの表情は、何処か寂しげであった。
「ロン、街壁の修繕は行っているみたいだが、城壁の修繕はまだこれからなのか?」
痛々しく感じて、話題を変えるべくユーヤがロンに問いかけた。それに対してロンは首を横に振った。
「いえ。城壁は直しません。魔王さえ倒せば統一されたラウズ大陸には平和が訪れる筈ですので、敢えて直さない事にしました。街門などは通行料を頂かなくてはならないので直してはいます。」
一同はなるほど、と納得した。しかしユーヤはこの言葉にプレッシャーを感じていた。なにしろ今代で魔王を…いや、魔神を倒せと言われているようなものだったからだ。
「ま、まあ、一応柵くらいは付けるようにな。領主城は誰でもホイホイ入っていいものじゃないしな。」
「はい。その辺は心得ています。屋敷の外壁程度の物は作るつもりです。」
「あ、そうそうロン殿。将来的に飛空場を設置したいのであれば、岬からの道を改良する事も忘れないでください。今の急勾配の道では観光客が嫌がる可能性もありますので。」
フェルナンドの意見をロンは一生懸命メモしている。他にもあれはどうか?これは?と聞いてはペンを走らせているようだった。
そうして街を一望できる丘まで来ると、そこには慰霊碑が設置されていた。
「この街全体を見れる場所なら、浮かばれない者達もここでこれからの復興発展して行く街を見れて良いかな?と思いまして設置しました。」
「素晴らしい。よく考えたなロン。我から礼を言う。」
「私からも言わせてください。ロンありがとう。」
元の主二人に礼を言われ、ロンは誇らしげであった。国名は新生リンドバウム連合国に変わっても、彼等帝国の魂は、こうして受け継がれていくのであろう。
「ところでどう思うフェルナンド。確かに海産物も豊富だが、この地は山菜や鉱物も豊富なようだ。飛空艦だけでなく、魔導列車の駅を作るのも良くないか?」
ユーヤの問いにフェルナンドは頷く。
「ええ、私もそれは思っていました。ゲッタ方面と、ガリアン方面の両側から引きたいなと。」
「え!?魔導列車まで通して頂けるのですか!」
「ふふふ、ロンよ。頑張り甲斐があるな。我も応援するぞ。」
ベルドとロンが握手を交わすと、皆が拍手をして祝福した。道程は険しいかもしれないが、ザンバードは近い将来、もっと大きな街になるかもしれない。それは、ロンの頑張り次第ではあるが。
視察を終えた一行は、復興中の領主城に一泊後に飛空艦に戻る事となった。領主城は復興中と謂う事もあり、また街も復興中の為酒宴などは開かず、街の有力者達との軽い食事会で済ませた。
フェルナンドは何人か気になった者が居たらしく、トライデルへの勧誘をしていた。その中でも新興の年若い商人が話に乗ってくれたようで、後日トライデル近郊のフェルナンドの領地に引っ越して来る事を約束させていた。その際の経費は勿論フェルナンドが持つようだ。
フェルナンドは良い拾い物をしたと喜んでいた。働き如何によっては、建設局に入れる事をユーヤから許可をもらい、その旨を青年にも伝えたようで、彼も闘志を漲らせているようだった。
昨晩の食事会のおかげであろうか、港に降りたユーヤ達を見送る者の中には、カリギュラスに手を振る者も何人か現れた。それを見て、カリギュラスは泣いていた。
「こうした地道な活動が、成果として現れるのだ。王から学ぶ事は多いぞ。」
そう言うと、ベルドはカリギュラスの頭を撫でるようにしていた。カリギュラスはそれに「はい!はい!」と、呻くように答えていた。
彼の贖罪は、意外に早く終わるのかもしれない。
フィイイィイイと云う魔導エンジンの音が波の音を掻き消しながら、艦隊は空中へと舞い上がった。最後に目指す場所であるダイザ―の街の方角へ向けて。
「提督、航路の選択をお願いします。」
「わかった。このまま海岸線を通り陸伝いに南下し、ダイザ―を目指せ。」
「了解しました。」
『各艦に通達、これより全艦海岸線を陸伝いに南下し、ダイザ―を目指す。編隊の乱れ無きように注意せよ。』
『セイト号了解。』『マジンゲル了解。』『ガリアン了解です。』『トライデル号了解いたしました。』
五隻の飛空艦の雄姿に、ザンバードから歓声があがる。これらは住民達を鼓舞し、活気を取り戻すためのデモンストレーションの一環でもある。その為、艦隊は一旦ザンバード上空を旋回してから予定空路に入る。
街の子供達が大きく手を振っている。それに応えるようにリンドバウム号が警笛を鳴らした。子供達が「おお!!!」と叫んだ。これらのサービスに喜んでくれたようである。
艦隊は、海岸線沿いに飛んだ為にダイザ―への到着時間は3時間ほどとなった。何か不測の事態が起きた時に着水出来るルートを選んだのだ。
この時に地獄を見た男が居た。
誰あろうカイザーブレード筆頭、ゼフィールド・ベガルタである。
彼は結局カスバドの注意を守れなかったようで、美味しいからとついつい口に酔い止めを放り込み、気付けば一日に7つも飲んでしまったようだ。
―酔いは止まっている。しかしなんだこの腹痛は!
と、のたうち回っていた。
「ほーら、欲張るからそうなるんだよ。」
ロンの言葉が今の彼には猛烈に痛い。
「まったく…情けない。」
ベルドの言葉がゼフィールドの心臓に突き刺さる。
「カスバド、どうすれば良い?」
ベルドが無線でリンドバウム号のカスバドと通信する。
『途中でゼフ一人の為に艦を止めるわけにもいかんので、乗船しておる魔導師にでも診てもらうしかなかろう。自業自得じゃし。』
「との事だ。医務室に行って来い。」
「ほら、肩を貸してやるから頑張れよー。」
情けない姿のゼフィールドに、艦内ですれ違う誰もがクスクスと笑っている。ゼフは猛省した。約束事に破っていいものなどないのだ。欲にかられた俺を許してください神様!と。
しかし現在のこの世界の最高神は、あの戦神様である。そう簡単に許してくれるわけもない。逆にこのシチュエーションを笑って見ている事であろう。
がんばれゼフ!負けるなゼフ!トイレは近いぞ!!
三時間の地獄を耐え抜いた?ゼフは、ダイザ―の発着場に到着した時には骨と皮だけのように頬がこけていた。それを見てカスバドがゲラゲラ笑う。
「ひっひぃ。お前はお約束をある意味守る男じゃのう。笑かしてくれるわい。ふはははは。」
「こんな状態なら、ダイザ―の病院にしばらく入院してもらうようだな。安心しろ、新設の病院だけに看護師達も皆若い。地獄を見たあとの天国と思って入院してくれ。」
「へ、陛下。す、す、すす、すみません。」
発着場の到着ロビーに担架が運び込まれ、ゼフィールドが乗せられて行った。病院は発着場に隣接して建てられている為、そのままの状態で救急施設に運ばれて行く事となる。
「あれがなければ、本当は艦長をやってもらおうと思ってたんですよねぇ。」
「すまんな。王よ。」
現在ガリアン号の艦長は、以前のカラシン号の艦長が引き受けてくれている。これほどの最新艦の指揮を任せられる者が、元帝国内に他にいなかったからでもある。しかしこの艦長もそれなりに妙齢の為、次の候補を絞らなければならなかった。
そこで以前にユーヤは、シュミレーション施設内で艦長自身に相談をしてみたのだが、やはりゼフィールドは乗り物酔いが酷く不向きと言われた。また彼の教え子の中にこれらに順応できる者が思いつかないが、ロンならば向いているかもしれないとも言われた。
確かに有りかもしれないとユーヤは思った。それほど武器類を振り回す事が出来ない艦内に、もしも魔族に侵入されてブリッジが襲われた時に、艦長が武闘家であったなら即座に対応可能ではないかと。
それ故に現在、ガリアンのブリッジの警護に、艦長公認でロンを専任で付けさせている。間近で見て艦隊指揮を覚えてもらう為にだ。オーガ大陸に乗り込めるようになった時まで艦長の任期が保てば問題はないのだが、現状いつになるかわからない。そのため後任を選ばなくてはならないのであった。
「それにしてもこの飛空場は凄いですな。飛空艦が直に降りれるし、ロビーなども綺麗で美しい。」
ヒッターが感心している。フェルナンドは褒められて嬉しそうである。
「現状このダイザ―の港は、ラウズ大陸最大の港であり飛空場でもあるのです。設備も大型魔導力炉による発電設備を整えましたし、灯りもご覧のとおり全て電気を使っています。」
フェルナンドの説明に「おお!」と各地方の来賓達が声をあげる。
「そしてあちらをご覧ください。」
フェルナンドがロビーの大きな窓に向かって手を差し出す。
「あの対岸に見える大きな建物、あれはわが国でもここが初めての設置場所となりました冷凍冷蔵施設です!」
「冷凍冷蔵施設?」「なんだねそれは?」
フェルナンドの説明を聞く者達が、ザワザワとしながらもフェルナンドの回答を待っている。
「あの施設は、最低でマイナス40度の温度を保つ事が出来るようになっていまして、捕れたての魚を冷やして固める事によって、長期保存を可能とした設備です。」
聴衆が沸きに沸いた。
「ぬう!婿殿!是非これをチョーシか、サセボに設置していただきたい!」
ツクヨミ閣下が恐ろしく前のめりになっている。負けじとベルドもユーヤに掴みかからん勢いで懇願して来た。
「いや、これこそ復興中のザンバードに必要な物だ!勇者王よ、ザンバードにも設置してくれ!!」
予想以上の反響に、ユーヤは驚き戸惑う。そこへフェルナンドが助け舟を出してくれた。
「皆様、お気持ちはわかりますが、まずはあちらの施設の見学に参りましょう。本日はその為に皆様をお連れしたのであります。」
そう言うとフェルナンドは、皆をリニアモーターカー…電動馬車のホームへと案内するのであった。
この周遊旅行、本当は2~3話くらいで終わるつもりでした。
でも書き出したら面白くなってしまって
もう話が膨らむ膨らむ。
気付けばここまでで6話かかってますね。
おかげで色々途中に説明が挟めました。
☆連日投稿を前に、また幾つものブックマークありがとうございます。
この喜びを、更なる力にしたいと思います。
因みに昨日、『序章』と銘打ってあった最初の話しを
『プロローグ』に修正しました。
章立てしてるのにこれはややこしい!と思ったもので。
皆様も気付いた点などありましたら、ご意見をお寄せくださると助かります。
なにしろ処女作とも言える作品な為
試行錯誤と云うよりは、色々実験をしているような状況です。
お待ちしております。
それと、3000PV突破しました。
有難うございます。
これからも精進して参ります。




