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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第4章 ―復興編―
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第六拾弐話 釣り大会

 ナガサキ砦で二泊した一行は、次に旧帝国領アクエリオスを目指した。飛行ルートとしては皇国領の東側を海沿いに進み、オホーツク湖周辺を周回した後にそこから真っ直ぐ北上する事になっている。


 ナガサキ砦からはツクヨミとサクヤ、それにソーウンなどの四奉行の長達が乗り込んだ。テンゴウも乗りたそうであったが、オーガ大陸を睨んでいなければならない為に残った。その為出航前にテンゴウの為に時間を作って内部見学会を行った。


 これにはアマテラス氏族の長であるミカガミも参加し、見た事のない機器を前に、目を白黒させていた。


 見学会終了の際に、テンゴウに「ぜひ、我が防人衆にも一隻お願い致す!」と、ユーヤはせがまれていた。ユーヤもそのつもりで居たらしく快く引き受けた。六番艦の艦名は、勿論『ナガサキ』になる予定である。


 フライトを楽しむ一行は、オホーツク湖の上空に差し掛かるとゆっくりと周回したあと、ツクヨミの提案で湖に着水し、その湖面を眺めながら甲板で食事会をする事となった。


 広大なうえに深さもあった為、五隻は難無く着水すると、一応安全の為に湖の中央辺りで錨を降ろした。 


「この辺りは手つかずの自然が多くて、実に空気もおいしいですなぁ。」


 連日裏方作業で忙しかったヒッターも参加している。給仕達が忙しそうにテーブルを運ぶ中、皆は甲板の手摺から乗り出すようにその風景を眺めていた。


 マリオンとウテナは乳母とセーラ達に子供を預けて風景を楽しんでいた筈なのだが、何故か諜報隊三人はハッチャケてしまっていた。


 ウテナ姉妹達はその手摺に乗って下を眺めたり上を見たりしている。興奮している様子で、止めに入らなければならないはずの副官殿…メルティまで参加してしまっている。

 これを見つけたマリオンとエテリナが頭を抱えながら止めに入っていた。


「いい大人が子供達の前で何をやっているのですか!!?」

「来年の諜報隊の予算を減らす事になるけど、どうする?諜報隊大隊長と副隊長!!」


 至極真っ当な大人の意見のエテリナと、創設者として脅しにかかったマリオンが居た。


「ウテナ隊員!ここは一先ず投降するのが最善かと思われます。」

「そうですね、サクヤ隊員。メルティ、白旗の用意を!」

「はっ!(ゴソゴソ)ハンカチでこういうのって大丈夫だっけ?」


「「いいから降りなさい!!」」


 この後三人は営倉と云う物を初体験して、更にはしゃいでいた。ニンジャマスターとそれに次ぐ能力者が揃っている為、意味がなかったのだ。

 勿論エテリナもマリオンもその辺はわかっていて、こちらもお遊びの一環であった。食事会が始まる頃には三人とも脱走して、しっかり席に座っていた。


 そんなウテナを見てマザーソレナとジャンヌは微笑んでいた。


「まったくもう。子供が産まれて、第二正室になってもあの子は変わらないんだから。」


「そんな事はありませんよジャンヌ。イズナとハヤテが産まれてからは、ずっと親らしい顔をしていたではないですか。今はバカンス中なのです。生き別れのお姉様と、ああして幼い頃に出来なかったお遊びを、今こういう場であるからやっているのでしょう。」


「それにしても度が過ぎていませんでしたか?母様。」

「正直におなりなさい。妹を取られたみたいで悔しいのでしょう?貴女も参加してくれば良いのですよ。」


「え。母様、さすがにあれは…。」


 そこで二人は吹き出した。先程の姉妹のバカ騒ぎを思い出してしまったのだろう。


 ジャンヌは『やっぱり血には勝てないなー。』などと思いながら、食事に手を伸ばすのだった。


 救護院の子供達も勿論一緒に乗船している。今は乳母達に抱かれた王族姉弟を中心に、輪になってお話しをしているようだ。


「セーラおねえさんは、シアさまのおねえさんなの?」

「いいえ、わたしはシア様の『おそばづき』といって、おせわをしたり、わるいひとからシア様をまもったりするおしごとをしているのですよ。」

「うわーかっこいい!わたしもおおきくなったらセーラ様のようになるー!」

「わたしもわたしもー!。」


 セーラの周りは、まるでユリ会のような輪が出来ていた。それを見ていたシアが焼きもちを妬いたらしく、ヒョコヒョコとセーラの隣りに来て、その袖を引っ張っていた。


「はい姫様。姫様のことをわすれていたりしませんよ。では、わたしのひざのうえにどうぞ。」


 すると素直にシアはセーラの膝の上に座って、輪の中に参加したのだった。


 エテリナは、その風景を懐かしく眺めていた。膝上に座る紅い髪の姫様をあやす茶色い髪の女の子。あんな時があったな…と。少し涙ぐみ「あら嫌だ、歳かしら。」と、一人呟いた。


 そして、セーラを見ながらエテリナは考えた。


「セーラの教育係をやらせてもらいたいなぁ。今度陛下と姫様に相談してみようかしら。」


 その言葉は口から洩れていた。聞きつけたマリオンが「いいわよ。ネイが良いって言えば。」とエテリナに答えると、エテリナは「あ、あれれ?聞こえちゃいました?」とらしくない反応を見せた。


「はい。私も構いませんよ。エクステリナ様。マリオネート様を見てこられた貴女様の御指導なら、あの子も大変勉強になるかと思います。」


 ネイにも聞かれてしまっていたようだ。エテリナが顔を真っ赤にしている。シューと云う音が、頭の上から聞こえそうだ。


「で、では、来週辺りからシア様がお昼寝の時にでも伺います!」


 妙に気合の入った言葉に聞こえるが、彼女の回路はショート寸前であった。

 しかし、これによってエテリナとセーラの間に師弟関係が生まれる事となる。そしてセーラは将来こう呼ばれるかもしれない。『エテリナセカンド』もしくは、『Eセカンド』と。


 その頃、二番艦『セイト』にヴァルキュリアと王宮騎士団の仕事として乗船していたエレーナとロイエルは、ベルヌ宰相や、フェルナンド達と食事をしていた。


 この二番艦『セイト』は、他の艦と違い船首に巨大なドリルを装備している。謂わば強襲突撃艦と云ったところであろうか?


 この艦は聖都に駐留するわけではなく、一番艦『リンドバウム』と共にトライデルに普段は駐留して、交代でラウズ大陸の巡回業務を行う事となっている。ただ、レギオンから五番艦『トライデル』も巡回任務に参加したいとの申請がある為、恐らく三交代となりそうである。


「あのー…お嬢様。実は私…釣りがしたいのですが…大丈夫ですかね?」


 停泊している今しかそんな事は出来ない。ロイエルは意を決して主に聞いてみた。


「いいんじゃないの?どうせ私達の出番なんて、魔族が現れでもしなければないんだし。」


「やったー!では、艦長に許可をもらってきます!」


 ロイエルはゲッタの街を領有してからは、休日に近くの池で釣りをする楽しみを覚えた。それに釣竿の繊細な扱いもどこか槍の扱いと似ていて、ロイエルにはスっと入るものがあったようだ。


 船首ドリルの上で釣り糸を垂らすロイエルを見て、フェルナンドとベルヌ宰相も食事をやめて、同じく艦長に許可をもらい、艦内でのコードネーム『G装備』…釣り具を借りて、右舷側と左舷側に分かれて彼等も糸を垂らした。そして気が付けば、我も我もと皆で釣り大会が催されていた。


 これを見ていた隣りの艦などにも釣り糸を垂らす者が続出した。そして全艦から糸が垂れると云う不思議な光景が展開される。


 乗船していた商会ギルドがいつの間にか餌や仕掛けを売る商売を始め、冒険者ギルドは一番大物を釣り上げた者に賞金を出す!と宣言した。全艦は乗降用タラップを各艦に接続して、皆が往来を始めた。


 こういう時に王が白けるわけにもいかず、ユーヤはヒッターと二人でポイントを求めてウロウロしていた。しかし、結局目ぼしい処はすでに押さえられていたので、危険で近寄る者の少ないロイエルが座るドリルの上にやって来ていた。


「どうだ、ロイエル。釣れてるか?」

「あ、陛下。今のところ小物ばかりですが、型は悪くないですよ。」

「ほほう。これは確かに良い型ですな。大物が居そうな気配がします。」


 ユーヤが『リンドバウム』号の方を見ると、救護院の子供達も参加しているのが見えた。子供達の為に横のハッチを開けて簡易手摺をパイプで組んだようだ。ジャンヌと諜報隊3人組も、お守り役として子供用の場所で参加している。マリオンやマザー達はその奥で歓談しながらそれらを眺めている。


「坊ちゃん。引いてますぞ。」

「ん?あ、しまった!」


 ユーヤは餌だけ持っていかれたようだ。『セイト』号右舷側から歓声が聞こえる。どうやらフェルナンドが大物を釣り上げたようだ。称賛の声が聞こえる。


「こちらもウカウカしてられませんな。」「そうだな。」


 スピーカーを通して、フェルナンドの記録が告げられる。


『建設大臣フェルナンド卿、グレートバス、54センチ!現在最高記録です!』


「ぬう!50センチクラスですか、これは手強い。」

「この高さでよく上がったな?糸が保たないぞ。」

「上げる時に糸に魔力を通すのですよ。陛下ならたぶんメータークラスでも上げられると思いますよ。」


 ロイエルがそう言いながら実践して見せてくれた。かかっていた獲物は小さかったが、ユーヤには良い参考になったようだ。


「そうするとマリっぺあたりにやらせれば、相当な大物が上げられそうな気がするな。」


「おー確かに、魔力糸の操作はマリオネート様の得意技ですからな。」


 そんな事を駄弁っていると、ロイエルの竿が勢いよく撓った。グググとロイエルが引っ張られている。リールを巻くが少しずつしか動かないようだ。ユーヤとヒッターが自分達の竿を置いて、ロイエルを支えた。


「ロイエル、俺の魔力を貸すぞ。」「では、私も。」


 竿に三人の魔力を乗せると、それまでが嘘のように軽くなった。グイっと引っ張ると、水面に大きな魚影が現れ、そして跳ね上がった。


「ちょっと待て。あれデカすぎないか?」「ええ。三人の魔力を乗せてなかったら、今のでこちらが叩き落とされていましたっいよっ!」「ロイエル殿、気張ってください。」


 気付けば皆が注目していた。あれはメータークラスだぞ、と騒いでいる。


「ロイエル、次跳ねた時に俺が最大魔力をかける。それで奴を昏倒させるから、一気に上げろ。いいな。」

「了解です!」


 そう言うと、再びロイエルは渾身の力を込めて竿を引いた。バシャっと跳ね上がるグレートバス。


「今だ!!!」


 ユーヤが糸に通す魔力を上げると、感電したかのようにグレートバスがブルブルと震えた。ロイエルを中心に三人は力を込めた。


「「「おおりゃぁあああ!!」」」


 グレートバスが宙を舞い、甲板の上に放り出された。三人は巨大ドリルの上で尻もちをつく。


「ロイエルの獲物だ!誰か計測してやってくれー!」


 ユーヤの声に、冒険者ギルド職員が急行するのが見えた。


「「「おおおおお!?」」」


 歓声が聞こえる。そしてギルド職員は興奮したようにマイクを握って叫んだ。


『槍聖ロイエル・ディマージュ殿、グレートバス124センチ!!!』


 ロイエルが飛びっきりの笑顔でサムズアップをしている。ユーヤとヒッターも、同じようにサムズアップで返す。


 ロイエルに対する称賛の声が其処彼処から聞こえる。


 なんとか甲板に上がった三人は、そのまま大の字で寝転んだ。思いの外魔力を消費したらしい。冒険者ギルド職員の女の子が、気を利かせてマナドリンクを持って来てくれた。


 三人は礼を言うと、それを一気に飲み干した。


「気持ちいいなあ。」

「ええ、ただ自分の獲物でなかった事が悔やまれますな。」

「お二人共すいません。ありがとうございます。」


 三人は結果発表まで『セイト』号の甲板で寝転んでいた。青い青い空を眺めながら。

んー。

なんか外伝のような締め方をしてしまいました。

まあ、寄り道なので外伝みたいなものなんですけれどね。


※またストックが貯まってきました。

7/25から8/5まで、夏休み企画として連日投稿をしたいと思っております。

それまでに、もっとストックが増やせるようにがんばります!


因みにLINDBAUM's Encyclopediaの

スキル名鑑が7/18の17:00、武装名鑑が7/19の12:00に投下予定です。


またNO,3は

本編に合わせて4章終了予定日の8/27に投稿します。

今回は5章のネタバレ要素はほぼない筈ですので

ご安心ください。。

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